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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第1部 第3章 諜報部隊 LVSIS(ルブシズ) 実行部隊 RedMist(レッドミスト) 創設・始動 編
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43話 スタイナー邸のある一日 ~草原の獣人と女性盗賊~

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

 「…昨日は良く眠れましたか。ジェルド…」


 「…ロラン様、おはようございます。8年ぶりにぐっすり眠ることができました…」


 「…それは良かったです…」


 ロランはジェルドと共にダイニングに向かう。


 ダイニングには、既に『バルトス、マルコ、クロス、フェネク、アルジュ』と『アリーチェ・クロエを筆頭(ひっとう)にオム・マーラ、リプシフター、エクロプス、ルディス』が細長いクラシックなテーブルを挟み、等間隔に座り2人を待っていた。


 「…皆、おはよう…」


 「「「「「…おはようござます。ロラン様、ジェルド…」」」」」


 朝食の準備はピロメラが1人で行っていた。


 ロランとジェルドが席に着くとピロメラは、皆に白い食器に入った"メープルシロップがたっぷりかかった厚切りのフレンチトースト"と"ふわとろのオムレツ"、赤色の可愛らしいコップに入った"飴色(あめいろ)のオニオンスープ"を配膳していく。


 『…このメニューはだいぶピロメラの好みが反映されている…』


 『…昨日の奴隷オークションと"クリスタルの腕輪(ブレスレット)"の購入で資産の9割を使ってしまった。これからは大きな出費は控えないとな…』


 ロランは食事の前に余計なことを考えたと反省し、ピロメラを席に着かせると皆と食事をする。


 リビングの壁はパープルホワイトを基調(きちょう)とし、テーブルの左横はガーデンへと繋がる大きな扉となっており、扉の上部が透明なガラスのため()()()()()()()()、日の光がリビング全体を明るく照らす。


 『アリーチェ・クロエ』以外の諜報部隊LVSIS(ルブシズ)のメンバーは、昨日とはまるで別人の爽やか(さわやか)で優しいロランの雰囲気と自分達への厚遇(こうぐう)に戸惑っているようであった。


 ロランは、再度、実行部隊RedMist(レッドミスト)のアインスであるジェルドと諜報部隊LVSISのアインスであるアリーチェに対し用件を伝えた。


 要件の内容は、午前中に理髪師が訪れ皆の髪をカットする事と洋服店の者が執事服・メイド服や日常の服を作成するために採寸しに来るという事であった。


 その後、ロランはアルジュに午後の訓練を指導するよう指示をすると執務室(しつむしつ)へと向かうのであった。


 ロランは、執務室に入るとドラフターを使用し『温水洗浄便座』付きトイレの作図を行い始めた。


 基本機能で使用する魔石は3石とした。


 温水射出(おんすいしゃしゅつ)のON/OFF操作は【押しボタンを押し込むとONとなり押しボタンの下に取り付けた金属片がメインの魔石に接触したら魔力供給を行う】と付与魔法によりメインの魔石に刻印(こくいん)


 メインの魔石から発生する魔力はイカ型魔物の神経を加工し製作した魔力導線によりピニオンの軸を支える軸受けに伝わる仕組みとした『メイン魔石による魔力供給操作部』。


 メインの魔石から魔力が供給された場合に『水を一定温度まで加熱し射出部まで温水をポンプアップする』と付与魔法で刻印した『ポンプ部』。


 メインの魔石から発生する魔力が軸受けに供給された場合、ピニオンの軸を時計回りに一定速度で回転させる事でピニオン自体を時計回りに回転させ、メインの魔石から魔力の供給が停止した場合、サブの魔石から発生する魔力を反対側の軸受けに供給。


 供給された魔力でピニオンの軸を反時計回りに一定速度で回転させピニオン自体を反時計回りに回転させると付与魔法で刻印した『温水射出部搬出ピニオン機構部』。


 温水射出部の後部はラック構造とし温水射出部まで中心部を空洞に加工することで温水を供給すチューブを設置できるようにした『温水射出部』。


 サブの魔石には『押しボタン』をOFFに操作した場合、押しボタンの下に取り付けた金属片に対して直角に取り付けた金属片がサブの魔石に接触した場合にサブの魔石から魔力を供給。


 3つ目の魔石からサブの魔石に魔力が供給された場合にサブの魔石から魔力供給を停止すると付与魔法で刻印した『サブの魔石部』。


 このサブの魔石から発生した魔力は魔力導線によりピニオンの軸を支える軸受けに伝えられ、軸が一定速度で反時計回りに回転する事によりピニオン自体を反時計回りに回転。


 『温水射出部』後部のラックを格納部の方向へ移動させる事で『温水射出部』を格納する仕組みとした『温水射出部格納ピニオン機構部』。


 3つの目の魔石はラック構造の先端が格納部の底面に接触したら魔力を発生させサブの魔石に対して魔力供給。


 5秒経過後に3つ目の魔石からの魔力供給を停止すると付与魔法で刻印した『温水射出部格納センサ部』。


といった構成で温水射出部のON/OFFを制御する仕組みとしたトイレを設計していく。


 また、ロランはONの状態で垂直に設置した金属片にロックがかかることでON状態を継続させOFFにする場合はさらに押し込むことでロックが外れスプリングの力により【押しボタン】をOFFの位置まで持ち上げるといった細かな工夫も怠らない。


 『便座の温め機能については【ON/ OFFの押しボタン】だけ設置して後はオプションにしよう……魔石は追加で一つ使用する必要があるからね……』


と考えていた。


 ちなみに便座温め機構もシンプルに【押しボタン】下の金属片が4つ目の魔石に接触したら魔力を発生すると刻印。


 発生した魔力は魔力導線により便座の中で5周ほど巻き付けていた金属線の先端と接合させ付与魔法で金属線に魔力導線から魔力が供給されたら一定温度の熱を放出すると刻印する事で便座の温めを制御する仕組みとしている。


 また、OFFにする場合は先ほどと同様に【押しボタン】さらに押し込むことでロックが外れスプリングの力により【押しボタン】をOFFの位置まで持ち上げる機構とする事にした。


 ロランは『押しボタンがね…デザイン的に残念だな…特許取得してから改善していこう…』と考えながら作図をしていると思いがけず執務室のドアがノックされた。


 ロランは執務室への入室を許可すると精悍(せいかん)なジェルドが入ってきた。


 その姿は、執事服ではないものホワイトのシャツにワインレッドのベスト、ブラックパンツに磨き上げられた革靴、(ひげ)は整え、オールバックにカットした髪をやや斜めにセットした髪型であり、実に凛々しい紳士の姿であった。


 「…とても精悍ですジェルド。ところで何か用事ですか…」


 「…ロラン様、『アリーチェ・クロエ』殿がLVSISの副リーダーとRedMistの三席候補を予知したとの事で『予知の間』まで、お越しいただきたいとの事であります…」


 「…ありがとうジェルド。ちょうど、図面も仕上がった事だし、予知を聞きに行こう。ジェルドも同席するように、新しいメンバーの人となりを知っておいてもらいたいからね…」


 「…畏まり(かしこまり)ました。ロラン様…」


 ロランとジェルドは、アリーチェが精神を集中し予知を行い易い状態に調整している『予知の間』へと向かった。


 ロランとジェルドは『予知の間』に入室すると『アリーチェ』と向き合えるよう、丸いアンティークのテーブルをはさんで、反対側の席に腰かけた。


 「…ロラン様、お呼びだてをしてしまい誠に申し訳ございません…」


 「…構わないよう。アリーチェ、予知を聞かせて…」


 「…一週間後、王都と『モルダールの街』を結ぶ草原を通る道で、狼の獣人達による山賊行為が発生致します…」


 「…その狼の獣人で一族の長であるツュマこそLVSISのツヴァイに相応しい(ふさわしい)かと…ずっと先の未来でロラン様の危機を防ぐ者です…」


 「…アリーチェ。僕が危機に陥る未来は教えてもらえないのかな…」


 「…未来は、とても不確定なものです。不用意な発言を行いますと本来の未来とは異なる別の未来へと道を変えてしまうもの。どうかご容赦を…」


 「…すまなかったアリーチェ。別に困らせるつもりはないよ…」


 ロランはRedMistの三席候補に対する予知を話すようアリーチェに促した。

 

 「…アリーチェ。RedMistの三席候補について話して…」


 「…はい。その者は王都の『ダイス・フォン・ロット・ツー・ダムロイ』伯爵邸に忍び込み、絵画を窃盗しようとして失敗し地下牢に閉じ込められている盗賊の『ミネルバ・サンチェス』でございます…」


 「…今は本来の能力が覚醒(かくせい)していませんが、数年後多大な(ただいな)貢献(こうけん)を致します…」


 「…アリーチェには、その未来が見えているんだね…」


 「…御意でございます…」


 「…ありがとう。アリーチェ…」


 アリーチェの予知を聞き終わったロランはジェルドと共に『予知の間』を後にした。


 「…ジェルド。明日にでも『ミネルバ』をロット邸から奪いに行こう。それに皆の実力を知るにはいい実践になるからね…」


 「…お言葉ですがロラン様、伯爵邸に盗みに入った者をスタイナー家のメイドにするのはいかがでしょうか。RedMistのメンバーとしては良いとしても…」


 「…心配はいらないよ、ジェルド。伯爵邸にある絵画や骨董品は窃盗品(せっとうひん)という噂があるし、ミネルバが当家のメイドとして働いていても文句は言えないよ…」

 

 「…この国の貴族という生き物は自分より低い階級の人間や弱い立場の者を人として見ていないからね。大変不愉快(ふゆかい)な事だが…」


 「…失礼いたしました…」


 「…ジェルドのそういう細かな気遣い(きづかい)は大変ありがたいよ。ジェルド、このミネルバという女性は相当(そうとう)じゃじゃ馬そうだけど大丈夫そう…」


 「…スタイナー家の色に染め上げます…」


 ミネルバを奪い取ることを決定したロランとジェルドは庭園のテラスに行き、アルジュとアルジュにしごかれていた"リプシフター、エクロプス、ルディス"を呼び寄せ、リビングへと移動するとミネルバを奪い取るための作戦を練るのであった。

2018/08/28 誤字・脱字・リビングの色の整合性修正を行っています。

2018/08/30 王都の名称が誤っておりましたので修正しております。

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