42話 諜報部隊 LVSIS(ルブシズ) 実行部隊 RedMist(レッドミスト) 創設(2)
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
奴隷オークションが開始される時刻が迫ってきたため、ロランはリルヴァを召喚し跨るとニコラスが指定した場所に向かった。
「…ロラン殿、この仮面をつけてください。本日のオークションは特殊な能力を持った者達の売買となっております。そのため、様々な国家機関や組織の者が参加しております…」
「…その者達にロラン殿の正体を悟られないための仮面です。なお、購入金を増やす場合は声は出さず、この札上げてください…」
ニコラスはロランに一通りの忠告を行うと御者に指示を出しオークション会場へと向かった。
オークション会場に到着するとロランはニコラスに連れられ2階に用意されたVIP室の一室に入り、オークションが開始されるまで感情を抑制し待機した。
暫くすると進行役がオークションを開始した。
「…本日、第一の品はとても希少な未来を予知する『プレコグニション』能力の持ち主『アリーチェ・クロエ』です…」
ロランは、アリーチェ・クロエこそ夢に現れた女性であると確信したため、他の誰かに落札されないよう、いきなり10エルリング硬貨500枚(日本円で50億円)と記入し札を上げた。
すると、100mほど離れた向かいのVIP室で、両手に美女をはべらせながら酒と果物を頬張る醜く太った男が、ロランの3倍である10エルリング硬貨1500枚(日本円で150億円)と書いた札を挙げた。
ロランは負けじと10エルリング硬貨2,000枚(日本円で200億円)と書いた札を挙げると、醜く太った男もロランを上回る金額を記載した札を上げるといったやり取りが複数回続き、最終的にロランが10エルリング硬貨3,500枚(日本円で350億円)の札を挙げ、ようやくハンマープライスとなった。
ロランは、この醜く太った男はオークションサイドが落札価格を引き上げるために用意したさくらに違いないと考え、仮にそうでなくても対抗して価格を引き上げる邪魔な存在であったため、シエルヴォルトを使用し、体と言葉の自由を奪うのだった。
進行役はVIP室に生じたルール違反など気にすることなく淡々とオークションを続けていく。
「…続いての品は、肺とエラで呼吸するため、陸はもちろんの事、水中でも生き続ける事ができる、エラ人間『Gill Human』の『リプシフター』です…』
ロランは『…水中戦では必要な人材だ…』と考え、10エルリング硬貨500枚(日本円で50億円)と書いた札を挙げ落札に成功した。
「…続いての品は、はるか彼方まで見通せる千里眼『クレアボヤンス』能力の持ち主『オム・マーラ』です…」
ロランは、『…この進行役は奴隷を品と蔑むな…』と思いつつ、安全な地点から情報収集できる要となるオムを手に入れるため、10エルリング硬貨500枚(日本円で50億円)と書いた札を挙げる。
クレアボヤンス能力者は諜報員として活用できるため多くの者達と競いあったが、最終的にはロランが10エルリング硬貨1,500枚(日本円で150億円)の札を挙げることでハンマープライスとなった。
ロランは、その後も土の中で生き続ける事ができる地下人間(undergrounder)の『エクロプス』を10エルリング硬貨500枚(日本円で50億円)で落札。
続いて、周囲と完全に同化する能力を持つカメレオンHumanの『ルディス』」を10エルリング硬貨700枚(日本円で70億円)で落札し。
15年前に王国に進行し市民と兵士達を恐怖のどん底に陥れたプロストライン帝国の元将軍『ジェルド・ヴィン・マクベス』」を格安の10エルリング硬貨10枚(日本円で1億円)で落札するのだった。
ジェルド・ヴィン・マクベスは、プロストライン帝国の英雄と謳われた人物であったが、逃亡防止のためか左手は肘上で、右足は膝上で切断され、髪は伸び放題でほとんどの歯がへし折られていた。
オークションはまだ続いていたが、得るべき人材を得たロランはオークション運営者に支払いを行うと会場を後にした。
ロランは、共に会場を後にしたニコラスに礼を述べると、"バルトス、マルコ、クロス、フェネク、アルジュ、リルヴァ"を召喚すると、魔法鞄から細長い馬車を取り出し皆に落札した者達を搭乗させるよう指示を出すのだった。
ニコラスは、『…あのような者達を召喚するロラン殿が一番の化物だ…』と思いながら、帰路につく一行を見送った。
馬車の中では、ロランが落札した者達に光属性魔法や治癒魔法の『ハイオーダー・ヒール』をかけ治療を行うと魔法鞄から取り出した食事を提供し話合いができる状態にした。
ロランの治癒魔法により、ジェルドは歯が元通りとなり体中の化膿した皮膚や古傷も完治したが、左手と右足は欠損したままの状態であった。
「…ジェルドさん。以後ジェルドと呼ぶよ。申し訳ないけど欠損した腕と足を元通りにできる魔法を現時点で行使することができない。代わりに、この義手と義足を提供します…」
ロランは魔法鞄から義手と義足を取り出すとジェルドに装着する。
「…力は通常の人と同じぐらい出せますので動かす訓練をしてください…」
ジェルドは義手や義足が動くものかと疑問に思うも試しに左手を動かしてみると思った通りに義手が動くのだった。
「…義手が意思通りに動きます。これは何の魔法なのでしょうか…」
「…一部魔法を使用しているけど、基本は機械仕掛け。人間は脳から手や足などを動かそうと命令を出した時、筋肉に電位が発生する…」
「…その義手と義足は筋肉に関わる皮膚表面の電位を読み取り、人工骨格に接合した魔物の筋繊維を加工した人工筋肉と腱を取り付け、電位によって伸縮する長さを変えるよう魔法を付与することで、脳の指示通りの動きを可能とさせている…」
義手と義足の機構について話し終わるとロランはジェルドと皆に役目と忠告をした。
「…ジェルドにはスタイナー家の執事を行っていただくと共に、実行部隊『…RedMistのアインスとして皆を率いてもらう…」
「…これは皆に当てはまる事項ですが、僕の要請は拒否はできない。裏切ることも許さない。拒否した者、裏切った者は、皆の前にいる"バルトス、マルコ、クロス、フェネク"と御者をしている"アルジュ"に指示しヴァルハラに送る…」
一瞬にして馬車の中に緊張が走る。
「…私は自分を救ってくれた御方に命を捧げようと思っているので問題ないですが、せめて貴方様が何者か教えていただいても宜しいでしょうか…」
「…ジェルド、失礼致しました。僕の名は『ロラン・フォン・スタイナー』。フォルテア王国の伯爵で竜覇者であり、世界を安定させたいと思っている者です…」
目の前にいる少年の口から想像だにしていないことを告げられアリーチェを除く落札者達は状況を把握できずにいた。
「…アリーチェでいいかな。アリーチェには諜報部隊LVSISのリーダーであるアインスを担っていただく…」
アリーチェは既にこの状況を予知していたため、小さく頷いて受け入れた。
諜報部隊名は『Loran Von Steiner Intelligence Service<ロラン・フォン・スタイナー情報部>』の頭文字である。
さらに、ロランは話を続ける。
「…バルトス、マルコ、クロス、フェネク、アルジュ。いいかい、アリーチェは僕の客人でもあるのでくれぐれも対応を間違わないように…」
「「「「「…御意のままに…」」」」」
ロランはさらに話を続けた。
「…次席であるツヴァイには、副リーダーで諜報部隊の指揮を担ってもらう予定だが今は空席とします…」
「…三席であるドライには『オム・マーラ』を、四席であるフィーアは空席とし、五席であるフュンフには『リプシフター』を、六席であるゼクスには『エクロプス』を、七席であるジーベンには『ルディス』に担ってもらう…」
「…それと皆には個々が持つ魔法や特殊能力を最大限いかしてもらうため、魔法や特殊能力に頼らない武器の使用方法を身に着けてもらう。アルジュ頼んだよ…」
「…畏まりました。ダーリン…」
アルジュが軽い口調で返事を返してきたため、これからの事が心配になったロランは左手を額に当てると溜息をつくのだった。
ジェルドとアリーチェを除く落札された者達は、これから先何をさせられるか不安になっているとロランはその不安を払拭しようとしさらに不安を煽る発言をしてしまう。
「…緊張することはないよ。君達の能力は特別だ。それに皆には僕が誇るバルトス、マルコ、クロス、フェネク、アルジュがついている。この者達より恐ろしい存在はそうはいないからね…」
ロランは大所帯となったため料理人が必要だということをジェルドに尋ねると『ペスカトーレ・ダイム』という男の存在を教えられた。
『…傭兵で凄腕の料理人とは正に求めていた人材だ…』
『…今後、RedMistのメンバーをスカウトする時に一緒に探すとしよう…』
ロランは多くの家族ができた喜びと諜報部隊 LVSIS と実行部隊 RedMistの原型を創設できたことに満足するのだった。
2018/08/28 誤字・脱字及びロランが自分の名を名乗っていないのにジェルドがロランの名を口に出している文章を修正
2019/3/1・・・貨幣の名称変更