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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第1部 第3章 諜報部隊 LVSIS(ルブシズ) 実行部隊 RedMist(レッドミスト) 創設・始動 編
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41話 諜報部隊 LVSIS(ルブシズ) 実行部隊 RedMist(レッドミスト) 創設(1)

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力(スキル)における名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

『…盲目と思われる18歳くらいの女性が椅子に座り、両手を額の前で組み一心に何かを祈っている…』

 

 ロランの想いに気付いたのか女性は振り向き語りかけてきた。


 「…私は待っています。ここで貴方(あなた)様を…私は貴方様の未来を…」


 『…僕の未来とは。君はいったい誰なんだ…』


 ロランが尋ねようとすると、女性は闇に溶け込むように遠ざかっていく。


 「…待ってくれ。僕の未来とは。待ってくれ…」


 何故か必死に女性を追いかけ呼び止めている最中に、ロランは目覚めた。


 『…普通の夢なら直ぐに内容を忘れてしまうのに、不思議なくらい鮮明に覚えている…』


 ロランは、具体的な夢の事を振り返りながら、尋常(じんじょう)でない汗をかいている事に気づいた。


 シャワーを浴び着替えると、ロランは皆とダイニングで朝食を摂り、アルジュが御者を務める馬車に乗り王宮へと向かった。


 ロランは宰相府の重厚な扉を開けると執務室の自分の机に座り、今朝の夢の事は考えないようにし黙々(もくもく)と政務に取りかかる。


 政務に取り掛かると直ぐにロランは複数の問題点に気付いた。


 『…貴族達からの陳情書も他の書類も定型のフォーマットが無くて効率的でない…』

 

 『…それに教会が人口と家族構成の情報を取り纏めている制度は危険だ。これでは教会に王都における市民の戸籍情報を握られてしまう…』


 この世界では、教会が礼拝にくる市民達より家族構成を聞き出し長い月日をかけて記録蓄積していくことで、王都における人口や家族構成といった情報を管理していた。


 ロランは、宰相府が教会にお伺いをたてて得た情報を基に人頭税を計算し徴収している事が教会の権威を増大させる要因と考え、新たに戸籍を管理する専門の省を設け、その省の事務官がより正確に戸籍を調査管理する制度にすべきとワグナーに提案するのだった。


 ワグナーはロランの提案に納得するも戸籍制度の変更に関しては国王であるレスターの許可が必要となることを告げ、戸籍制度の管理体制変更は一時保留となる。


 その後、ロランは後から出勤してきた秘書官であるマーガレットやエミリアと話し合いながら、都市計画図に『老人施設や孤児院、保育園』といった福祉区画を拡充した大幅な修正を行っていく。


 宰相部における政務は都市計画にとどまらず、税率の大綱(たいこう)や法律草案の作成、政務官や事務官等の人事まで広範囲に及んだ。


 ロランは与えられた業務を丁寧(ていねい)に迅速に行うと共に決済済み資料や貴族からの陳情書などの気になった箇所の目印として新たに開発した付箋をワグナーやマーガレットとエミリアに大量にプレゼンとしたため、気が利き信頼できる仲間として認められることとなる。


 昼になるとワグナーは皆を連れ食堂に行き親睦を図った。

 

 どの世界でも上司と部下のコミュニケーションは重要だからである。


 「…ロラン、新居への引越しは済んだのか…」


 「…ワグナー宰相、引越しは昨日でほぼ完了しています…」


 ロランの新居に興味を持ったエミリアは何故か積極的に自分を招待するよう話しかける。


 「…スタイナー卿、新居に御引越なされたのですか。同僚の私をお招きいただけませんか…」


 「…お客様用のデザイン家具や食器の追加購入と"外庭のライトや庭園テラスの設置"が終わったら喜んでご招待しますよ…」


 エミリアが積極的になったのには理由があった。


 ロランの身体から石鹸の香りと共に女性を魅惑させ気持ちを高ぶらせる"テンプテーション香"が混じっていたからである。


  午後もロランの身体からテンプテーション香が漂い、秘書官のマーガレット秘書官とエミリアの政務に支障が出たため、ワグナーはロランに早めに帰るように指示し女性を惑わす香りを何とかするよう注意するのだった。


 『…テンプテーション香は何とかしないといけないな…』


 『…でないといつか王宮の宮女や女性事務官達と過ちをしてしまうかもしれない…』


 テンプテーション香の対策はひとまず後で片付けることにしたロランはヘスティア商会に到着するとクレイグ氏とソフィアに大変心配させてしまった事を平謝りし新居に引越す事を告げた。


 ソフィアは悲しみのあまり泣きだし2階へと駆け上がってしまう。

 

 『…本当にごめんね。ソフィア…』


 その後、ロランは、クレイグに王都に老人施設や孤児院に託児所を各100施設ずつ建設し運営していく事を告げる。


 さらに、消防署や郵便所の増築、大型馬車による循環運営について、どの商会が何を請負い(うけおい)たいか話し会いたいと商会連合会議を開催と各商会への招集(しょうしゅう)を依頼するのだった。


 そして、ロランは自分を正当化する。


 『…元の世界だったら官民癒着(ゆちゃく)だの。談合だのと言われ批判される事だけど、この世界では独占禁止法もなければ、官民の癒着(ゆちゃく)を取り締まる法もない…』


 『…それに、技術や十分な資金が無い業者が工事を落札すれば、結果として欠陥施設となりその施設に住む市民は不幸になる。だったら、技術や資金が潤沢(じゅんたく)な商会が万全な建物を建築しそこで暮らしてもらった方が幸せに決まっている…』


 ヘスティア商会をあとにしたロランは、バロア商会 ニコラス・ブルナー会頭とコンタクトをとるため、裏路地(うらろじ)にある危険な雰囲気が溢れだす酒場に入っていく。


 そこで馴染み(なじみ)となったバロア商会の私設諜報員(ちょうほういん)の1人と接触しテレパスで""…奴隷オークションに出席したいので日時と場所を教えて欲しいと…""と依頼した。


 諜報員から、開催場所と日時が知らされたロランはチップを渡し、酒を一杯奢るのであった。


 『…スマホやメールが無く一般的な通信手段は手紙や鳥を使った伝書しかないこの世界で、テレパス使用者を確保し迅速に情報の相互伝達を行う手段を考えつく者がいるとは…』


 『…召喚対象者とテレパスで交信することは考えついたが、こういった利用方法は考えつかなかった。実に有益だ…』


 明らかに場違いな場所で、場違いな行動を行うロランを怪訝に思う者はいない。


 この世界における裏の社会は力こそ全てだからである。


 平然と場違いな場にいながら、ロランは兼ねてより考えていた部隊の創設を決断するのだった。

次回は・・・『第42話 諜報部隊 LVSIS(ルブシズ) 実行部隊 RedMist(レッドミスト) 創設(2)』

ロラン、諜報部隊 LVSIS(ルブシズ)と実行部隊 RedMist(レッドミスト)のメンバーを集めて部隊を創設していきます。


2018/08/27…誤字・脱字・読みづらい表現を訂正


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