40話 ダークエルフのアルジュと新居
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
ロランは王立武闘競技会の自分の個室で着替えをし馬車置き場へと向かう。馬車置き場に到着すると御者の姿が無く、さすがに自分で馬車を操作し帰路につく気分では無かったため、ポルトンを召喚する。
「…顕現せよ、ポルトン…」
「…ホルホル…ロラン様、何用ですかな…」
「…御者の方の姿が見えなくて、それでポル爺に馬車の操作を頼めないかなと思って…」
「ホルホル…老体に鞭打って承りましたぞ…」
とポルトンは若干皮肉を込めながら了承する。
ヘスティア商会までの帰路途中、ロランは馬車の中で思いを巡らせる。
『…今後、王国や他国の諜報部隊や暗殺部隊の襲撃を受けるかも知れない。御者には凄腕の者を起用する必要がある…』
ヘスティア商会に到着すると、ロランはシャワーを浴び口を磨くと着替をし、ベッドに横になった瞬間、深い眠りにつくのだった。
翌朝、いつもより早く目覚めたロランは、頭の中で『…賢く強く諜報活動が行える剣士…』を強くイメージし、イメージがおおよそ固まったところで召喚の詠唱を唱えた。
「…我、古の契約に則り汝を求める者なり!顕現せよ…」
すると、ロランの目の前に肌が褐色でスタイルが良く、エメラルドのような緑の瞳に、紫が混じったシルバーの腰まである髪を三編みし纏めている野性的なダークエルフの美女が現れた。
ロランは、主従契約を迷っていると顕現したダークエルフは不満気に話かけてきた。
「…主は、我が女性ゆえに強い剣士ではないとお思いか…」
「…いや、そんな事はないよ…」
ロランは口を濁す。
「…主よ、我は異界のエルフで武神の血を僅かだが受け継いでおる。それに歌により多くの者の精神を支配することが出来るのに契約を迷っているのか…」
ロランは『理力眼』でダークエルフを分析し、能力の高さを確認すると謝罪した。
「…女性と言うだけで色眼鏡で見てしまいました、許してください…」
「…では私と主従契約をしてくれますか…」
「…勿論です。汝の名は『アルジュ』…」
とロランが、ダークエルフに名を付けたことで『主従契約』が完了した。
「…アルジュ、君にはそのうち護衛部隊と諜報部隊の統括を行ってもらうよ…今は取り敢えず御者をお願いします…」
「…畏まりました…ダーリン…」
と答えるとアルジュは大きく胸がはだけた衣装で近づいてきたのでロランは動揺して注意する。
「…ストップ、アルジュ、先ずはもっと清楚な服装に着替えようか…」
「…ダーリン!ノースリーブのドレスとパーティ用ボレロしか無いですけど…」
とアルジュは悪気もなく答えるのだった。
『…不安だ、明日は王宮での業務があるから、今日中に『アルジュ』の服を何着か揃えないと…』
と考えてるとロランはソフィアが2階に上がってくることを『理力眼』と『探知』で感知した。
今、ソフィアがアルジュを見たら大変な勘違いをすると考え、アルジュにドレスとボレロに着替えさせるとお姫様だっこをし、窓から飛び降り、鍛冶工房へと全速力で走り出した。
光7日(日曜日)の朝7時であったが、ロランはかまわず鍛冶工房のドアノッカーを叩き続けワーグを呼ぶ。
「…親方、早くドアを開けてください。早く…」
「…一大事なんです…早く…」
とロランはワーグがドアを開けることを急かす。
「…なんじぁ、ロラン、まだ食事中なんだが、その娘はどうした…」
「…説明は後でソフィアとクレイグさんが来ても何も知らないと言ってくださいね…」
「…あと馬車一台借ります…」
と言い放つとロランはアルジュを連れ、組み上がったばかりの馬車に乗り、洋服店へと向かった。
その後、女性服を取り扱っている洋服店でアルジュの服を数十着購入し憔悴しきったロランが鍛冶工房のは夕方であった。
「…親方、今日ヘスティア商会に戻ると面倒な事になるので、ここに泊まって明日そのまま王宮に行きます…」
とロランは泊まる気満々でワーグに話し出した。
「分かったぞい。『わし』からクレイグ氏にはうまく言っとくから安心せい…」
翌朝、元気ハツラツなアルジュが御者をしロランは馬車に乗り込み王宮へと向かった。
馬車を見送りながら、ワーグは『…これは早いうちにロランの子が見れそうじゃな…』と喜ぶ顔をするのだった。
ロランは、宮殿正門を通って中央中庭を馬車で進むよう指示を出し、第2の純金製扉の前で停止させた。
馬車から降りたロランにアルジュが「…ダーリン…御仕事頑張ってね…」と投げキッス付きの見送りをしてきたため、急いで東翼棟の宰相府へと向かうのだった。
ワグナー宰相は、ロランの様子がいつもと違うことが気になり、2日前の王立武闘競技会の事で何かあったのか確認するため、午前中の業務が終わるとロランを別室に呼び出し事情を聞いた。
「…そうであったか…それはスタイナー卿も大変であったな。実は既にスタイナー卿の邸宅候補の物件を3つまで絞っているのだが、午後はその物件確認をして契約を済ませ、今週中に引っ越してはどうかな…」
「…伯爵であるスタイナー卿が、いつまでもヘスティア商会の2階の部屋を間借りしているのは、好ましくないからな…」
「…宜しくお願いします…」
とロランは特に抵抗もせず了解する。
午後になるとマーガレット秘書官がロランに同行し、3物件を案内していく。
ロランは、その中から、王都の中心部から離れているが『門から邸宅まで石畳が敷かれ、邸宅の少し前に噴水があり、左右シンメトリーの庭園で、屋根が青く、建物の色がホワイトで延床面積も申し分ない、重厚な雰囲気を漂わせる物件を所どころボロボロであったがスタイナー家の邸宅に決定し、その場でマーガレット秘書官が持参していた売買契約書にサインをした。
ロランは、アルジュに馬車でマーガレット秘書官を王宮まで送るよう指示を出すと"バルトス、
、マルコ、クロス、フェネク』を召喚し、一緒に邸を修繕するよう要請する。
さらに、ロランは"ピロメラとボルトン"を召喚をした。
「…ピロメラは人に変身して、今後、メイド長をしてください…」
「…ポル爺は、この庭園を夕方までに綺麗にして欲しい…」
とロランが指示を出すとポルトンは軽い皮肉を言いながら作業に取り掛かるのだった。
「…ホルホル…ロラン坊は人使いが荒いの…」
ロランはというと、上下水道管やバス、キッチン、トイレの水回りの状態を確認し修繕していった。
ロランはクロスに指示して、クロスの配下を人化させ、鍛冶工房から"湯沸かし器と給湯器、配管工具一色"を持ち帰るよう指示を出す。
続いてロランは"バルトス、マルコ"に指示し配下の者にデザイン家具や大量の食料品を購入してくるよう指示を出した。
邸の修繕が完了するとロランはピロメラ、アルジュと共に調理場で簡易な料理を作り、皆で楽しく食事をしながら、この仲間達と一緒にこの世界を生き抜いていこうと考えるのであった。