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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第1部 第2章 フォルテア王国 王都カント 編
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38話 王立武闘競技会(1)

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

 王立武闘競技会は朝10時から開始となるが、ロランは朝6時にはヘスティア商会を出て召喚した『リルヴァ』に跨り(またがり)ると、王立武闘競技会が行われる闘技場へと向かった。


 緊張して朝早く起きたのではなく『デオン・フォン・バンデーレ子爵』に対する怒りが抑えられず、怒りに満ちた顔をクレイグ氏やソフィアに見せたくなかったからであった。


 闘技場に着いたロランは、案内役に連れられ参加者ごとに用意された個室内で、競技会出場者と分かるよう用意された薄い金の板に情報を刻印した首掛けの身分証明証を渡され後、試合まで待機するよう指示される。


 部屋にはシンプルなテーブルと椅子、休憩用のベッドが設置してあった。


 ロランは冒険者稼業をする時に頻繁(ひんぱん)に着用している『キャメル色のTシャツ』、Tシャツの上に『ブラウンで(もも)の半分が隠れる長さのロングベストジレ』を羽織り(はおり)、濃い『ブラウンのロングパンツ』に着替えた。


 その後、ベッドに腰掛け、魔法鞄からフルフェイスヘルメットのようにシールドをフリップアップ、フリップダウンでき、形状を古代ローマ軍風に似せて製作したガレア(西洋甲冑の兜)を被り(かぶり)、ガントレット、グリーブ付きパウレイン(膝当て(ひざあて))、ソールレット(鉄靴)を装着し待機する。


 競技会までは3時間以上あったので、庭園開発に特化した妖精族であるノームのポルトンと鉱山開発に特化した妖精族であるノッカーのランドを召喚し、雑談を始める。


 「…ホルホルホル…ロラン坊ちゃん何用ですかな…」

 

 「…とロラン様、どこかに良い鉱山でも見つかりましたかな…」


 「…いや、特に用はないんだけど『ポル爺』と『ラン爺』と話がしたくて…」


 「…ホルホル…しょうがない子ですなぁ…」「…はぁ、では鉱山の話でも致しましょう…」


 ロランは、ポルトンこと『ポル爺』と、ランドこと『ラン爺』と会話をし時間を潰す。


 3時間30分後、案内役が部屋に近づいてくることを『理力眼(りりょくがん)』と『探知(ディテクト)』で感知したロランは、ポルトンとランドに今度ゆっくり話をしようと告げ召喚を解く。


 案内役がドアを開け出場の時間である事を告げる(つげる)


 ロランは案内役とともに闘技場入口に移動し場内からのコールを待つ間に集中し意識を研ぎ澄ます。


 5分後、闘技場から「…ロラン・フォン・スタイナー卿 入場…」と聞こえてきたため、闘技場に進んでいく。


 進行役は、ロランが特許を取得した小型拡声器を使用していたので、闘技場の全ての観客に声が聞こえるようになっていた。


 「「キャー、キャー、愛しのロラン様!!こっち向いて…キャーキャー…」」


と黄色い大歓声が沸き起こる。


 進行役は急がないと自分の声がロランへの黄色い大歓声で聞こえなくなると感じ、早口でコールした。


 「…第一試合、ダークエルフと人とのハーフで傭兵(ようへい)の『ロベルト・バイン・アンガスタ』対100年ぶりに登場した『竜覇者』、我らが英雄『ロラン・フォン・スタイナー卿』…」


 ロランとロベルトの両名は闘技場中心の互いまでの距離が10mに設定された開始線まで、別々の方角から向かっていく。


 2人が開始線についたことを確認すると進行役は試合開始のコールを発し、試合が開始された。


 「…合法的にお坊ちゃんを切り刻める(きりきざめる)なんて…ウッヒ、ウヒヒ…」


 ロベルトはダークエルフの強力な魔力により精神を病んでいる。

 

 精神を病んだ言動と両手に剣を持ち、姿勢を低くしサソリのように2本の剣を突き出す変則的な構えであったが、2刀流の剣士として裏社会では知られた存在であった。


 ロランは『理力眼』を使用しロベルトをスキャンした後『…ダークエルフの強すぎる魔力に精神が追いつかなかったのか。身体的能力と魔力は優れているのに惜しい人だ…』と感じていた。


 「…切り刻んで…で…で…」とロベルトが言った瞬間。


 ロランは自分に『強靭身体(コールジュール)』をかけ、10mの距離を一気に縮めると右手の掌底(しょうてい)で2本の剣をへし折った。


 その後、ロベルトの両肩を両手で掴む(つかむ)と身体を後方にのけ反らし「…デェイヤー…」との掛け声とともにヘッドバッドを喰らわしロベルトの意識を刈り取るのだった。


 権威(けんい)ある王立武闘競技会の歴史の中で、ヘッドバッドにより勝利した者などいなかった為、進行役はしばし唖然(あぜん)とし、勝利者コールを忘れていた。


 しばらくして進行役が「…勝者!竜覇者『ロラン・フォン・スタイナー卿』!!…」と勝利者コールを行うと静まり返っていた観客達が一斉にエールを送るのだった。


 マダムやファンからの黄色に声援を打ち消すように、闘技場にいるロランの声が特許済の集音拡声器により闘技場内に広まっていく。


 「…あいたたた、すごく硬いなと思ったら、僕とワーグ親方が考案した(よろい)を購入して装着してくれていたんだね。鎧選びのセンスはいいですよ。ご購入ありがとうございます…」


 ロランは自分とワーグが製作した鎧の宣伝を闘技場から行うのだった。


 敗者であるロベルト・バイン・アンガスタは、担架(たんか)で運ばれながら薄れゆく意識の中で命を捧げるに値する君主にで出会えたと満面の笑みを浮かべ気絶する。


 「…おれは…やっと…巡り会えた…我が命、血の一滴に至るまで捧げるに相応しい(ふさわしい)最凶で最強の主君に…」


 闘技場内の男性観客達は、ロランの予想だにしないヘッドバッド攻撃と鎧の宣伝文句の饒舌さに大爆笑していた。


 そんな中、クラウディアやリーン、エアロビ門下生のマダムとレディ達は、ロランが華麗かつ優雅に勝利することを想像していたので、苦笑い(にがわらい)するしかなかった。


 ジェシカだけは『…ロラン君、さすがだよ。ヘッドバッドなんて誰も思いつかないよ…』と腹を抱えて笑っていた。


 闘技場に設置された要人用の各VIP観覧室では、レスター国王への表敬訪問(ひょうけいほうもん)という建前(たてまえ)で各国のVIPがスパークリングワインや黒ビール、メロンソーダを飲みながら、ロランの戦いぶりを観戦していたのだった。


 ≪…トロイト連邦共和国 最高評議会議長であるアガルド・ジャコメッティ…≫

 

 ≪…東夏殷帝国 第九代光武帝の末弟である赤狼王…≫


 ≪…クリシュナ帝国 ルドラ・クリシュナ皇帝の第三皇女であるダーシャ・クリシュナ…≫


 ≪…メッサッリア共和国 アルベルト・スペンサー国防相…≫


 この者達は今後、運命に導かれるように長きに渡りロランと関わることになる。



次回は・・・『第39話 王立武闘競技会(2)』です。

王立武闘競技会 大詰めとなります。ロランのデオンに対する怒りが爆発しますが・・・


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