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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第1部 第2章 フォルテア王国 王都カント 編
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34話 王宮での謁見

 祝賀会の当日、ロランはシンプルに『白のシャツとタイ、黒の燕尾服(えんびふく)』の服装とし、クレイグ氏が用意してくれた馬車に乗り、王宮へと向かう。


 王宮正門で衛士による入場検査を受けた後、中央庭園を馬車で進んでいき、純金製の格子扉の前で馬車から降り、中央棟の正面入口扉まで歩いていく。


 ロランが正面入口扉を通過すると案内役の衛士が、謁見の間、通称『太陽の間』の横にある待機部屋に案内し、合図があるまで待機するよう指示をする。


 テーブルの上には、甘い香りのする紅茶といかにも高級そうな果物が用意されていたので、ロランは果物と紅茶をいただきながら合図が出るまで寛いで(くつろいで)いた。


 しばらくすると、王宮の従者が待機部屋に入室しロランを謁見の間の扉前へと誘導していく。


 謁見の間より「ロラン・スタイナー入場!!」という声が聞こえてきたため、ロランは扉を開け、レスター国王が座る玉座の前まで進んでいき、『丸の目印』がついた地点で止まり片膝をつき頭を垂れる(こうべをたれる)


 レスター国王の左席にはステファニーの父である外務大臣のリックストン公爵が、右席にはアリスの父である内務大臣のトーニエ=スティワート公爵と2週間に1回は奥方のサーシャと共にディナーを共にしている宰相のワグナー侯爵が、豪華な椅子に座わりロランを見つめていた。


 謁見の間には、役目のため王都に来ていた貴族が集められていた。貴族達は、およそ100年ぶりにドラゴンを制覇するという大偉業を成し遂げた者が、少年であったため驚きのあまりざわついていた。


 「頭をあげよ。」とレスター国王がロランに声をかける。


 「御意(ぎょい)…」とロランは頭を上げる。


 「お主が、この度ドラゴンを制覇した『ロラン・スタイナー』で相違ないか?」


 「間違いございません…」


 「うむ、この度の偉業により既に冒険者ギルド長のウルリカより『竜覇者を刻印されたS級ライセンス証』が与えられている事と思うが、今日はお主の偉業を祝い、偉業に見合った褒美(ほうび)を与えようと思い、お主を呼び寄せた」


 「……」


 「早速であるが、褒美として何が欲しいか余に聞かせて欲しい…」


 「…では遠慮なく申し上げます。『不敬罪の見直し』を褒美としていただきたく存じます」


レスター国王の顔が一瞬歪むが、直ぐに冷静さを取り戻しロランに話しかける。


 「具体的には、どのように見直して欲しいのだ…」


 「はい、大まかでありますが、王族・貴族の方への襲撃、国家転覆や社会的名誉を著しく低下させることを目的とし、人々に対して大規模な流布を行った者は、これまで通りで問題ないと思います。」


 「ただ、酒場や市場で一般市民が『うっぷんばらし』として発した不敬な言葉や腐った卵を誤って当ててしまう程度の不敬な行動に対しては、貴族の方が不敬と称してその場で罰を下だせる権利を剥奪し、国王陛下より裁判権を与えられた専門の裁判団体を新設いただき、身分に関係なく公平に裁判が行われ最適な罰を科すという内容に変更いただきたい所存です…」


 「では、我が国の国教であるティルナール教の司祭や貴族が持つ裁判権を失くせということだな…」


 「御意にございます。フォルテア王国を統治している御方は、レスター国王ただ御一人でございます。故に国家を安定維持させるために制定された法に則り、罪に対する罰を決定する裁判権は、王政の場合、最高権力者である国王陛下ただ御一人の権限でなくてはなりません。」


 「ですが、王国全体で100万人、王都でさえ30万人もいる全ての人々の裁判を国王陛下が御一人で行う事は現実問題として無理ですので、国王陛下より裁判権を専門の裁判団体に譲渡(じょうと)する形としていただきたいのです。」


 「これにより、貴族による私利私欲や横柄な思考による不敬罪の乱用を防止でき、その結果、市民の王国に対する不満も低減していきます…」


とロランは力説する。強引すぎる論法であったが、裁判権が国王のみに集中できること、市民の不満も軽減することが汲み取れる内容だったため、レスター国王はロランに興味を持ち始める。


 「ではロラン。最後にお主に問う。お主はこの王国に仇なす(あだなす)者か、それとも王国に恩恵を与える者か。いづれであるか?」


 「…国王陛下、当然フォルテア王国に恩恵を与える者にございます…」


レスター国王が考え込んだため、しばし謁見の間に沈黙が走る。唐突にレスター国王は決定した内容を告げる。


 「ロラン・スタイナーに『伯爵』の爵位を授ける!」


謁見の間がざわついたが、レスター国王は『ざわつき』を無視し話を続ける。

 

 「ワグナー宰相よ、宰相の下でスタイナー卿に内政を学ばせ、実行させよ!」


 「仰せのままに…」と宰相であるワグナーが返事を行う。


『謁見の間』にいた貴族達は、大いに不満に思い『ざわつき』だすとワグナー宰相が


 「王国建国時より法によって、『勇者』もしくは『竜覇者』となった者に対し、無条件で『公爵』の爵位を授与する事と定められておる。しかし今回、陛下はスタイナー卿が11歳と大変若いことから領地が無い『伯爵』に降爵させて爵位を授けておる。陛下の下知に異存のある者はおるまいな!」


とワグナー宰相はロランを擁護し謁見を終了させると、ロランのための祝賀会が開催された。


 祝賀会が終了し、ヘスティア商会に戻ったロランはクレイグ氏に


 「領地無しですが『伯爵』に叙爵されました」と驚くべく報告を行う。


クレイグは放心し、対象的にソフィアは大変喜んだ。

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