33話 帰還と変化
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
ロランは目覚めると『…野宿は身体を強張らせる…』と思いながら、魔法袋から黒パンと牛乳を取り出し簡素な朝食を摂った。
朝食を済ませるとロランは、倒したドラゴンのもとに行き、一本一本丁寧に50本の大身槍を抜いていく。
全て大身槍を抜いた後、ロランは水属性魔法を使用し『血と泥で汚れたドラゴンの体』を清めるのだった。
ロランは一人でもドラゴンを埋葬地まで運ぶことができたのだが、地面に引きずこれ以上ドラゴンの体を傷つけてしまうことはドラゴンの誇りまで傷つけてしまうと考え、シエルヴォルトを使用し数体のドラゴンを呼び寄せると埋葬地まで運ばせた。
ロラン自身も呼び寄せた一体のドラゴンの背に乗り埋葬地へと向かった。
埋葬地に着くとロランは最大限の敬意を払って厳かにドラゴンを埋葬し、王都への帰路についた。
死闘の疲れと六原色の液体の影響で、激しい眠気と痛みに襲われたが、何とかリルヴァに乗り続け、2日後に王都に帰還することができた。
王都に到着したロランはその足で冒険者ギルドに向かう。
ロランが冒険者ギルドに入ると史上7人目の『竜覇者』でかつ『S級ランカー』の登場によりフロアは歓喜で満ち溢れた。
サブリナがロランのもとに駆け寄ってきて話し出す。
「…ロランさん、ドラゴン制覇おめでとうございます。直ぐにギルド長室にお連れしますね…」
「…ありがとうサブリナさん、助かります…」
ギルド長室に入ると、いつもと異なり正装したウルリカが席に座っていた。
「…ロラン殿、この度のドラゴン制覇、誠に見事な戦いでした。とても感動しましたよ…」
「…ウルリカさん、ありがとうございます…」
「…ロラン殿はお疲れのようだから、早速、渡すべきものを渡しておきましょう…」
そう言うとウルリカは徐ろにテーブルに『プラチナ製のライセンス証』を置き、話を続けた。
「…こちらが『竜覇者を兼ねたS級ライセンス証』です。『竜覇者』となった者は『勇者』と同様に無条件で『S級ライセンス証』を付与するという規則があるのでね…」
「…本日よりロラン殿はS級ランカーとなります。『S級ライセンス証』に恥じぬよう、これからも精進してください…」
「…謹んで頂戴致します。『S級ライセンス保持者』として恥じぬ行動を致します…」
ロランはウルリカに謝意を述べると受け取ったS級ライセンス証を魔法鞄に格納する。
「…それとロラン殿。10日後、王宮で『竜覇者とS級ライセンス』保持者となった祝いの祝賀会が行われますので正装して出席してください…」
「…了解しました。それとお願いが…」
「…8月中旬に開催される王立武闘競技会へのエントリーを代理で行っていただきたいのです…」
「…承ったよ。サブリナに指示してエントリーをしておこう…」
「…ありがとうございます…」
疲れがピークに達したロランは言葉少なに謝意を述べると冒険者ギルトを後にした。
ヘスティア商会に着いたロランは、クレイグに1週間は誰も部屋に入れないよう頼み込むと魔法鞄より大量の食料と飲み物を取り出し摂取できるだけ摂取した後、シャワーを浴びると2階の部屋にあがっていった。
部屋に入るとロランは"バルトス、マルコ、クロス、フェネク"を召喚した。
「…急に呼び出して済まない。これから1週間眠り続ける。その間、異臭が漂うかもしれないが誰もこの部屋に入れないように。それとその間、僕は完全に無防備になるから護衛と工場管理を頼んだよ…」
「「「「…ロラン様、畏まりました…」」」」
「…皆を急に呼び出してしまったけど工場の従業員達に消えたところを見られていないよね…」
「…心配は御無用です。我らは記憶の操作ができますので…」
バルトスが皆を代表して答える。
「…ならいいけど。では"バルトス、マルコ、クロス、フェネク"頼んだよ…」
ロランの指示が終了すると"マルコ、クロス、フェネク"は各工場に向かい飛行し、バルトスは部屋を出るとドアの前で仁王立ちし護衛を始めた。
六天竜の血を飲み干したロランは強烈な痛みに襲われながらも極度の眠気のため眠り続け、その間細胞レベルで強化と再構築が行われるのだった。
8日目の朝、ロランは目覚めた。
部屋の中は、排出物と大量の汗の臭いが充満していた。
『…想像以上に汚してしまった…』
ロランは使用していない小型の魔法鞄の口を広げると水属性魔法と風属性魔法、光属性魔法を使用し自身を清めると汚物や汚れた家具を魔法鞄に押し込め、部屋を綺麗にした。
ロランは朝食を摂りに部屋を出ると右横にバルトスが仁王立ちしていた。
「…バルトス護衛ありがとう…」
「…ロラン様。少しましになりましたな…」
ロランの身長は165cmと伸び、瞳は赤茶色に変化し、何より体内の魔力量が桁違いに増加していたからである。
「…バルトスがお世辞を言うとはね…」
「…お世辞ではありません。それとロラン様が寝ておられる間に王宮から祝賀会の『招待状』を受け賜わっております。朝食後に祝賀会用の正装をご用意をされてはいかがでしょう…」
「…バルトスありがとう。十分休んだら工場に戻ってくれ…」
ロランは1階に降りると朝食が用意されているテーブル席に座った。
ロランを見たクレイグとソフィアは息を飲んだ。
姿の変化もそうであるが、雰囲気が落ち着き、時より威厳のある雰囲気を醸し出していたからである。
「…クレイグさん、ソフィアどうしたんですか…」
「…僕はお腹が空きすぎているのでお先に食べますよ…」
そう言うとロランはテーブル上の食事を品良く大量に食していった。
「…いや、ロラン君はより男前になったね。食べっぷりも含めて見惚れていたよ…」
クレイグは多少皮肉を込めるがソフィアはというと顔を赤らめモジモジしていた。
ロランは、そんなクレイグとソフィアをよそに久しぶりの食事に舌鼓をうつのだった。
次回は・・・『第34話 王宮での謁見』です。
ロラン、豪華な王宮でレスター国王と謁見します。そして・・・