31話 竜覇者への道(2) ~戦闘 編~
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
ロランは、『リルヴァ』から先に降り、ソフィアが降りやすいように手を差し伸べる。
「ロラン様はお優しいのですね。」
「女性をリードするのは男のたしなみだよ…」と全く緊張感のない会話をしながら、鍛冶工房のドアまで移動し、ドラゴンをモチーフにしたドアノッカーを力一杯叩く。
「親方、一番弟子のロランです!開けてください!」
「開いとるぞ」
とワーグの声が聞こえてきたのでロランはソフィアを連れて鍛冶工房に入り作業台で寛いでいると、奥の部屋から武装したワーグが出てきた。
「親方、そんな武装してどうしたの…」
「ロランがドラゴンを倒しに行くという話を聞いてな、わしも一緒に倒しに行こうと思って…」とワーグが真剣な瞳で返答する。
ロランは『クレイグさんが親方に知らせたのかな』と思いながら、
「今回のドラゴンとの戦闘は一人で行わなければ意味がないんだ。戦い方は正々堂々とは程遠くなると思うけど、『1対1』ここだけは真摯でありたいんだ。それがドラゴンの命を奪うことに対する最低限の礼儀だと思うから…」
とロランは真剣な瞳でワーグに訴える。
「全く…100%勝てる口ぶりじゃな、これじゃ武装した『わし』はまるで道化だわい」
「そこで、親方に相談が…」
とロランはドラゴンとの戦闘で使用する『ミスリル製の大身槍と大盾』について、必要本数、長さ、強度、形状について相談し始める。
ワーグは、ロランを話を聞き終わると『ドラゴンに突き刺す大身槍の本数は30本ではなく50本に増やし、突き刺した大身槍が容易に引き抜かれないよう刃先の形状は釣り針のような返しを付けた形状にしてみては』という燻し銀の提案を行ってくれた。
『さすがは親方』と思いながら、2人は無言で『大身槍と大盾』の製作に取り掛かる。
『…無言でも心が通じ合う男の方達が羨ましい…』とソフィアは優しい瞳で作業を見守っていた。
出発日の前日、ロランは王都冒険者ギルド長であるウルリカ・バイン・ダンマークに『『竜覇者』になるためドラゴンを倒しに行く事』を伝えるため、冒険者ギルドに赴く。
馴染みの受付であるサブリナ・カッソーに
「サブリナさん、ギルド長のウルリカさんに合わせてください…」
というとサブリナは
「『竜覇者』の件ですね。少しお待ち下さい」と変に『よそよそしい態度』をされる。
C級ライセンスのロランが『竜覇者』を目指すなど、通常ありえない話だからである。
しばらくするとロランは奥の部屋に導かれ、初めてウルリカと面会する。
「やあ、君が命知らずのロラン君か。今日は『竜覇者』になるためドラゴンを倒しに行くので使い魔による監視をお願いしますと依頼しに来たのだろう。違うかな…」
「…その通りです。」
「いいでしょう。このネックレスを付けていてください。明日の昼から私の使い魔である白鷲がロラン君を監視し始めますから…」
「『ウルリカ』ギルド長、ロラン君はまだC級ライセンスなんですよ。絶対に認めないように昨日、約束しましたよね…」
「サブリナ君、ロラン君は命をかける覚悟をしているんだよ。私が止められる理由が無いでしょう。それにロラン君は、君が思うほど弱い存在でないよ。むしろ怖い存在なんだが…」
「………」
「サブリナ君、経験を積んで一瞬で相手の実力を見抜く眼を養わないとね…」
と発言し、ロランにネックレスを渡す。
ロランは、『『ウルリカ』ギルド長は一癖も二癖もあるエルフだな…』と思いながら、ヘスティア商会への帰路につく。
出発日となり、ロランは再び『リルヴァ』を召喚する。
「召喚 『リルヴァ』!」とロランは叫ぶと顕現した『リルヴァ』に飛び乗り『エルドーラ山脈』に向かう。
『リルヴア』の走力は凄まじく草原や穀倉地帯、サンディーナ川の水面を駆け抜け、夕暮れには『エルドーラ山脈』に早馬で半日の距離に位置するエポーナ川に到着していた。
『一度召喚し名を付けた召喚対象を再び召喚する場合は詠唱が短くて便利だな。それに『リルヴァ』は、まるで疾風だ!明日は『リルヴァ』のスピードなら1時間で『エルドーラ山脈』に到着しドラゴンとの戦闘になりそうだ』と思いながら、野宿の準備をする。
魔法鞄から、ある程度の大きさの石を複数取り出し、円になるように配置する。さらに適度な大きさにカットしておいた薪を取り出し、火属性魔法で火をつける。
火を絶やさないように気を付けながら、ピザとフライドチキン、牛乳を取り出し軽めの夕食を済ませ、取り出しておいた寝袋に入って空を見上げる。
『王都に来てから1年3ヶ月経過したけど、その間、空を観ていなかったな。本当に美しい。こんなに美しい星空を忘れていたなんて…』と思いながら眠りについた。
早朝、ロランは水で体を清めさらに軽量化した装備を纏い『リルヴァ』に飛び乗る。
ロランの予想通り1時間後に『エルドーラ山脈』に到着し『リルヴァ』に待機を指示しエルデ・ドラゴンの眷属が集まるポイントまで登っていく。
しばらくして、眷属のドラゴンが5体ほど集結するポイント後方の岩場に到着した。
『ここは風下だしドラゴンの『探知』の範囲外だから大丈夫だな。ドライスィヒ級は3体か。この3体の中で群れから離れているドラゴンの逆鱗に『火炎槍』で攻撃し、激怒したドラゴンを目的の場所まで誘導し戦闘だ』と考えながら、ロランはターゲットを決める。
ロランは駆け抜けることができる坂道に移動し、ターゲットのドラゴンに向け『火炎槍』を打ち込む。
「グォゴギィー!!」
『よし、予定通り。ついて来い』とロランが思っていると、その叫びに反応した群れのリーダーのタウゼント級に近い大きさのドラゴンがロラン目掛けて飛んでくる。
『これは想定外だ…』と思いながら、ロランは『強靭身体』を行い、戦闘を行う場所として選んだポイント目掛けて走り出す。
上空のドラゴンは、全力で走るロラン目掛けてブレス攻撃を繰り返し行うが、ロランは『理力眼』と『探知』を駆使し紙一重でかわしていく。
しかし、ロランは『予想以上に跳ね返ってくる岩の衝撃とブレスの想定外の熱量により』徐々に体力が消耗していく。
やっと、ロランは第一の攻撃ポイントである『天井が高いトンネル状の岩場』を視覚に捉え、そのトンネル状の岩場の中に走り込んで行く。
ドラゴンが、ロランを見失なわないようトンネル状の岩場に入った瞬間。
「千地面槍!」とロランが叫ぶと天状の岩場に、無数の『先が鋭い円錐状の岩』が現れた。
ロランは続けて『毒性化!』『千水円斬!』と叫び円錐状の岩の先端を毒化すると共に、岩の根本を切断していく。その瞬間、無数の岩の毒槍がドラゴン目掛けて落下する。
『こんな攻撃でドラゴンに致命傷は与えられないことは想定済み、この攻撃の目的は翼に無数の穴を空け、飛ぶために必要な揚力を無くし飛べなくすることだから』と心の中で攻撃の内容を確認する。
だが、このトンネル状の岩場を抜け、翼に無数の穴が開いたドラゴンはそれでも飛び続け、ロランに対しブレス攻撃を繰り返す。
『…翼に無数の穴が開いているのに飛び続けるなんて、物理法則を無視しているぞ…重力魔法でも使用しているのか…』
と思いながらロランは全力で走り続けていると、次第に身体中に毒が巡ったドラゴンが落下した。
落下するもドラゴンは直ぐに起き上がり、にロラン目掛けて走り出すのだった。
次回は・・・『第32話 竜覇者への道(3) ~戦闘 編~』です。
ロランとドラゴンとの死闘、命を削り合う戦いの行方は・・・