28話 謎の老婆とクリスタルの腕輪
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
ロランはワーグが共同で特許を取得した商品を独占的に販売できる権利を与えた商会連合の中で、裏社会に精通しクリスタルのブレスレットの情報を持っていそうなバロア商会ニコラス・ブルナー対するコンタクトを試みていた。
ロランは、普通の事でも聞くようにロランは特に構えることなくブルナーに質問をする。
「…ブルナー会頭は"クリスタルの腕輪"の売買に詳しそうなのでお聞きしたいのですが…」
「…おや、ロラン殿…どうして私が"クリスタルの腕輪"の売買に詳しそうと思われたのですか…」
ブルナーは話をはぐらかしにかかるが、ロランは歯に衣着せぬ言葉で話を続ける。
「…ブルナー会頭は、そちらの方面に詳しそうな雰囲気が漂っておりましたので…」
ブルナーはロランに呼応するように話し始めた。
「…ロラン殿は冒険者も行っている方ですので単刀直入に申しますと、オークションでは"クリスタルの腕輪"は取り扱われません…」
「…あくまで噂ですが"クリスタルの腕輪"は遺跡より盗掘されると聞きます…」
「…そして遺跡の保管された"クリスタルの腕輪"は全て採りつくされ、新たな遺跡も発見されておらず、今や"クリスタルの腕輪"の入手は不可能なのです…」
ブルナーの話を聞いたロランは愕然とする。
魔法を行使するためには、これまで通り理力眼で魔法を発動する者を見て地道に取得していく方法しか無いと判明したからであった。
月日は流れ10ヶ月後が経過した時、ロランはエアロビ教室の帰り道、妙な占い師と思われる老婆に
引き留められた。
「…そこの坊や、ここで坊やの望む物がある場所を占ってあげましょう…」
いつものロランであれば、不審に思い老婆に占ってもらう選択はしないのだが、この時は何故か老婆の元に近づき占ってもらうのだった。
老婆はロランの瞳を覗くようにみるとロランが欲しい物を的中させる。
「…坊やの欲しい物は"クリスタルの腕輪"だね…」
ロランは自分が欲している物を的中され動揺しながら入手方法を質問する。
「…どうして分かったのですか…」
「…それより"クリスタルの腕輪"はどうすれば入手することが出来ますか…」
老婆はにやりと笑い、ロランに入手方法を教え魔法袋からあるものを取り出した。
「…坊や焦らなくても大丈夫…"クリスタルの腕輪"はここにあるから…」
「…ただし、全て購入するなら10エルリング硬貨が5,250枚必要だよ…」
ロランは何の迷いなく魔法袋から10エルリング硬貨5,250枚(日本円で525億円)が入った袋を取り出し老婆の机の上に置いた。
老婆は硬貨の数を確認するとロランに全ての"クリスタルの腕輪"を渡すのだった。
「風・水・火・土」といった4属性の魔法行使を可能とする"四元クリスタルの腕輪"と、光属性魔法や"高位の治癒魔法と解毒魔法"の行使を可能とする"聖天クリスタルの腕輪"。
呪詛の解除といった闇属性魔法や召喚魔法の行使を可能とする"黒天クリスタルの腕輪"と物質の混成・分解に関する魔法行使を可能とする"錬成クリスタルの腕輪"であった。
よく見ると、クリスタルの腕輪の幅は15㎝で厚さは1cmであり、クリスタルの内部は情報が記録されていると思われる回路が埋め込まれていた。
ロランは、もう待てないとばかりにクリスタルの腕輪をはめると、体温に反応するように"文字"が浮かび上がってきた。
腕輪に浮かび上がった文字は驚くべきことに"日本語"である。
そして、クリスタルの腕輪にはこのように唱えよと記されていたのだ。
≪…我は世界の不条理に抗う者なり理の輪廻から我が身を解放せよ…≫
ロランはすぐさま「…我は世界の不条理に抗う者なり理の輪廻から我を解放せよ…」と詠唱を唱える。
すると腕輪から"濃縮された魔力"が針のない圧力注射のように皮膚を通じて注入され全身に沁み込み、自身の全てが"再構築"されている感覚を覚えた。
ロランは、理力眼により各クリスタルの腕輪に能力が込められていることを認識できたため、次々と各クリスタルの腕輪より能力を取得していく。
全ての"クリスタルの腕輪"から能力を取得したロランは安堵する。
『…雷魔法最上級魔法であるケラウノスを使用することはできるが使用すれば魔族と誤解される…』
『…これで理力眼に頼らず魔法を行使できるようになった…』
この時、ロランは人並みに魔法が使えるようになった程度にしか考えていなかったが、世界を構成する7起源【風、水、火、土、光、闇、生命】のうち、生命を除く6起源の魔法が使用できる者など200年前に現れたとされる勇者以来だということに全く気付いていない。
一方、ロランは自分がこの世界において特別な存在になった事など微塵も考えておらず、今後のスローライフのことだけを考えていた。
『…新しく得た能力を使用してこれまで保留していた扇風機やドライヤーなどを製造できる…』
『…難題をクリアしたから、アレックスとベンに協力してもらい王国内で『エアロビ大会』を開催するぞ…』
ロランの去り行く姿を見ながら老婆は謎の言葉を呟くのだった。
≪…貴方様はこれより幾多の辛い経験し、心を引き裂かれる思いをする事でしょう…≫
≪…それでも貴方様は乗り越えていかなければならないのです。私の愛しいロラン様なれば…≫
2018/8/30・・・王都の名称を誤っていましたので修正しております。
2019/02/28・・・貨幣の名称を変更