25話 カントレア
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
4月1日の本日、ヘスティア商会クレイグ・コンラートの娘であるソフィア・コンラートは入学式のため一人王立魔法学園へと向かった。
ロランはソフィアと共に、2ヶ月ほど前の2月1日に実施された王立魔法学園の入学試験に合格し合格通知を受け取っていた。
しかし、その1ヶ月後ロランのもとに王立魔法学園の合格を取消す通知と共にカントパスに関する資料が入った封筒が届けれられていた。
ロランはというと部屋でカントレア試験に関連する書籍を開き、一人勉強を行っていた。
カントレアとは王国における大学入学資格試験であり、試験科目は地形知識を試す『地理学』、純文学を使用し読解力を試す『文学』、関数・微分・積分等の数学知識を試す『数学』、法律知識を試す『法学』、経済知識を試す『経済学』、政治知識を試す『政治学』といった元の世界でも存在する科目であった。
加えて、この世界特有の魔法全般の基礎知識を試す『魔法学』、実際に使用する魔法の向上知識を試す『実践魔法学』といった科目も存在した。
午後をすぎるとソフィアが王立魔法学園から帰ってきてロランに自分がSAクラスになったことやて新入生代表として王女である『シャロン・フォン・フォルテア』が挨拶を行ったことを話し続けた。
ロランはソフィアの話に笑顔で対応するも、心の中は切ない気持ちで満ちていた。
『…ソフィア、僕もできれば王立魔法学園に入学したかったんだよ…』
『…一人でカントレア試験の勉強をするのは結構孤独なんだよ…』
ロランはソフィアが話し終えると気分転換のため、ソフィアを連れ街に散歩に出た。
暫くすると、赤毛とブラウンの髪の2人組がロラン達に向かって歩いてきた。
その赤毛の少年はロランに対し緊張した面持ちで話しかけるのだった。
「…ロラン・スタイナー様ですか…」
「そうですけど…」
ロランが返事をすると赤毛の少年はさらに話を続けた。
「…はぁ良かった。いつもお世話になっております。シモンズ洋服店の『ベン・シモンズ』です…」
「…両親からロラン様に出会うことがあれば最上の挨拶をするように言われております…」
「…以後、お見知りおきを…」
と両親に忠告されたから挨拶をしたと素直に話すベンを気にいったロランは服の注文を増やすことにした。
「…あぁ、ロイドさんのところの…」
「…では、ロイドさんに近々50着ほど従業員の服を注文しますとお伝えください…」
「…それとベン、年も近そうだし僕のことはロランと呼んで下さい…」
ベンは戸惑いながらも距離を縮めるには名前で呼び合うのが一番と考え返事をする。
「…で、ではロラン、毎度ありがとうございます…じゃなかった。伝えておきます…」
すると、今度は髪がブラウンのディビットがロランに挨拶をしてきた。
「…お初にお目に掛かりますケレス商会系列で【ベステ・レゼプト】というレストラン経営者の息子の『ディビット・スミス』と申します…宜しくお願いします…」
ロランは商会連合でケレス商会の会頭であるモリッツ・ライトナーを見知っていたので挨拶を返した。
「…ケレス商会…モリッツ・ライトナー会頭の系列ということですよね…」
「…はい、そうです…」
「…ディビットこちらこそ宜しくお願いします…デビットもロランと呼んで下さい…」
とロランがフランクに話したのでブラウンも緊張が解けた返事をした。
「…そうですか、ロ…ロラン君、ありがとうございます…」
ロランはソフィアが自分を紹介するよう見つめていたのでベンとディビットにソフィアを紹介した。
ベンとディビットはソフィアに挨拶するとその場を立ち会った。
2人が立ち去った後、ソフィアはロランに耳打ちをした。
「…ロラン様は、顔が広いのですね…」
その頃、王宮ではレスター国王が、宰相である『エステベス・フォン・ワグナー・ツー・リベック』、外務相である『ラッセル・フォン・リックストン・ツー・キャンベル』、内務相である『アーサー・フォン・トーニエ=スティワート』を招集し秘密裏の会談を行っていた。
「…陛下、本日はどのような用件でございましょうか…」とワグナーが口火をきるとレスターは自分の思いを伝えた。
「…昨年、信じられない数の特許を取得したロランという少年の王立魔法学園入学は阻止したであろうな…」
「…この少年は脅威だ…王国に対し叛意があるかどうか確認できるまで警戒するように…」
レスターの言葉に外相であるリックストンが続く。
「…このロランという少年を中心に【商会連合】という経済団体を形成され、外交分野においても多大な影響力を持ち始めたため、私も気にかかっていたところでございます…」
内相であるトーニエ=スティワートは角度の違った話を続けた。
「…けれど、これだけの才能に知識を与えないのは王国の損失でもあります…」
「…取り込むことが出来れば、王国はさらに発展するはずです…」
「…ここは慎重にロランという少年の人となりを把握すべきかと存じます…」
レスターは内相であるトーニエ=スティワートの発言にも一理あると考えロランを長期的に調査することにした。
「…うむ。では、長期的にこのロランという少年の人となりの調査を内相に任せよう。宜しく頼む…」
「御意のままに…」
国王であるレスターが自分のことを調査・監視するよう重要閣僚に指示を出した事など露も知らないロランなのであった。
2018/09/10 王宮に修正し整合性をとっています…