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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第1部 第2章 フォルテア王国 王都カント 編
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24話 王都でのスローライフ(3)~『紙製造・エアロビ』編~

 王都「カント』はエスペランサの街と異なり上下水道が完備されていた。トイレも水洗トイレであり、遥かに使用しやすい。


 しかし、『温水洗浄便座』は無く、トイレットペーパーの代替品として『葉っぱ』を使用する問題も残っていた。


 ロランは、『温水洗浄便座』が存在しない時代から、この世界に転生あるいは転移した異世界人が、王都の上下水道とトイレを整備したのだろうと推測する。


 それと、この世界でも『紙』は全く無いわけではなく、あるにはあるが古布を裁断して作成しているため凸凹しており、何より高価であるため、あまり普及していなかった。


 ロランは、第一に『トイレットペーパーを作りたい』と考え、親方の鍛冶工房に行き、『紙の原料となる木材チップ』を作るため粉砕機の開発を相談しに行く。


 粉砕機には持続した動力が必要となることから、水車の回転を活用することにし、セレネー川近郊にチップ工場と紙を生産するための工場を建設していく。


 『24時間魔法を掛け続けることができる人はいないからね』とやや残念に感じる。


 ワーグは、ロランに好奇心から何で木材チップを生産するのか質問する。


 「この木材チップを何に使用するんじゃ…」


するとロランは


 「『紙』を作るためですよ。主にお尻を拭く紙ですけど…」


 『これが本当に紙になるのかの…』とワーグの疑問は解消されない。


 ロランは、そんなワーグをよそに、出来たチップを『海藻や草木の灰に水を掛けて作成した灰汁』の中に入れ、3時間ほど煮込んでいく。


 『リグニンを分解するもっといい方法を見つけないと』とロランは心の中で呟く。


 『本当は、さらに漂白剤を使用し白くしたいけど、作成方法が分からないから、この後はセレネー川で洗い込み、不純物は手で取るしかないか。』とロランは考え、


 3時間ほど煮込んだ木材チップを、セレネー川で揉み洗いした後、天日で乾燥させる。


 乾燥させた木材チップを、既にこの世界でも開発されていた水車ハンマーを使用し、繊維になるまで叩きほぐしていく。


 叩きほぐした繊維とオクラから摂ったネリを混ぜて紙料を作り、あとはこの世界でも既にある流し漉きですいて紙の厚さを調整し、脱水した後、乾燥させることで、パルプを原料とした『紙』を製造した。


 「付与魔法があれば簡易な『抄紙機(しょうしき)』を作成できて大量に紙を作れるのに」とロランは悔やむ。


 その後、木材のパルプで作成した『紙』と『粉砕機』を特許申請し、特許を取得する。


 なお、『粉砕機』は親方に相談しているので、連名で特許申請をしている。そういったところは、ロランは頑なである。


 すぐさま、ロランは商会連合に連絡し、現在古布を原料に紙を作成している腕利きの『流し漉き(ながしすき)』職人を可能な限り集めてもらい、セレネー川近傍に建設した工場でパルプを原料とする『紙』の生産を開始する。


 『流し漉き』なので生産効率は悪いが、既存の紙より凹凸が無く、インクに(にかわ)を混ぜることにより文字も書きやすくしたことで何とか赤字にだけはならない状態にした。


 その代り、『膠を混ぜたインク』は文字の書きやすさから、大ヒット商品となった。


 ロランは『膠を混ぜたインク』に関しても抜け目なく特許を取得していたが、「何が大ヒット商品になるか分からないなと」と困惑もしていた。


 取り敢えず、『抄紙機』『ドライヤー』『扇風機』『温水洗浄便座』は付与魔法が使用できなければ実現に大変な困難を強いられるため、開発を保留することにした。


 ロランは試しにトイレで、最低限紙が破れない強度を保てる可能な限り薄い紙に作成したトイレ専用の紙で手で揉みほぐし使用し『ほっ』とした気分を久々に味わっていた。


 これからは、冒険者業と既存開発した製品の品質向上だけに集中して、息に抜きに何か体を動かして健康維持を促進する体操は無いかと考え『エアロビ』を普及させようと考えた。


 『エアロビ』を行うために、『ヘアバンド』と『Tシャツ』、『短パン』を開発し念の為、これらも特許申請し特許を取得しておく。


 音楽は、商会連合を通じて活動的な音楽を演奏できる演奏家を紹介してもらい、生演奏してもらうことにした。


 『あとは…場所と、1人では流石にはずかしい親方とその弟子達にも参加してもらおう!』と考える。


 その時、鍛冶工房で作業していた、ワーグとそのバイツを筆頭とする弟子達に一瞬悪寒が走る。


 1時間後、ロランが鍛冶工房にやってきて、ワーグとその弟子であるバイツと数人の弟子を無理やり、既に使用予約していたヘスティア商会の会議室に連れていき、『エアロビ』を教え始める。


 ロランはノリノリで


 「はい、もっと、もっと…ワンツー・ワンツー…」と声を掛け、終了後は


 「皆、最高だ!これで皆はヴィクトリーになれたんだ!さぁ、仲間となったお互いを称え合おう!」


と完全に陶酔しきっている。


 あまりに会議室が騒がしいので、クレイグとソフィアは会議室をのぞきに行く。ロランとワーグ達の光景を見て、何も言わずそっと1階へと戻る。


 「お父様、ロラン様はどうなされてしまったのでしょうか…」

 

 「ソフィア、ロラン君も色々疲れているようだから、そっとしておこう」


とクレイグはソフィアを諭した。


 ロランは、商会連合を通じて、商品を購入するお客様に対して『エアロビ』を紹介するよう要請する。


 続けざまにロランは、生徒達が集まるに場所を確保するため、中古ダンスホールの賃貸契約を行う。


 中古ダンスホールのオーナーには「ダンスホールを未使用のままにしておくよりも、安くても使用させていた方が定期的な収入が得られますし、お客様の流れができるからメリットですよ」と言葉巧みに安い賃料でダンスホールを借りる。

 

 1ヶ月後、王都の奥様方やレディ達100名が週に2度、ダンスホールに集まり『エアロビ』を行う光景が当たり前となっていた。


 フィニッシュ時に、両手を八の字のようにサッと広げ、その動作と同時に天井を見上げる、通称『ヴィクトリーポーズ』を全員が行う。


 ロランは、『ヴィクトリーポーズを行う生徒達』に向かって


 「君達は最高だ!これで皆はヴィクトリーになれたんだ!さぁ、仲間となったお互いを称え合おう!」


と声を掛ける。


 ワーグやクレイグそれにソフィアは、ノリノリのロランを見つめながら


 「「「ロランはどこへ向かっていくのだろうと」」」


と思い、どこか切ない眼差しをするのだった。

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