16話 ヴァイスローデン ~白き薔薇~
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
本日、ロランは朝から冒険者ギルドに行き、負傷した冒険者の治療を行っていた。
さらに、ロランは他のヒーラーが持っていない【理力眼】を使用し、栄養バランスの偏りを指摘したり慢性的な持病に対する対処方法も指導も行うのだった。
ロランハ治癒魔法による治療だけでなく食事の改善方法や慢性的な持病の対応まで行ったので瞬く間に人気となり、ロランが治癒を行う日は治療を求める冒険者達の長蛇の列ができるほどであった。
ロランが治療を行っているとビステインが満面の笑みで近づいてきて休憩を進めてきた。
「…ロラン殿、お疲れになったでしょう…」
「…向こうに紅茶とお菓子を用意しておりますので少し休憩してください…」
ロランもちょうど休憩を取ろうとしていたタイミングであったため、感謝の言葉を述べるとビステインは低姿勢で御礼をしてきた。
「…滅相もございません…3週間で10名以上の冒険者を治癒いただき、さらに食事の指導や慢性の持病に対する対処方法まで行っていただき冒険者達からの評判は非常に良く、そのうえ無料ですのでギルドとしては大変助かっております…」
ロランは休憩をとると再び冒険者達の治療を始めた。
ロランを遠巻きで見ている3人の美女はロランをパーティーに入れる算段をしていた。
「…あの子を私達ヴァイスローデンのパーティーに迎え入れようと思うのだけどどうかしら…」
「…ええ、治癒魔法が使えるし、おこちゃまで何より可愛いからね…」
「…もう、ジェシカったら…でも可愛い弟のようでいい感じです…」
クラウディアはジェシカとリーンがロランをパーティに参加させることに乗り気なことを確認すると交渉を行いにロランに歩いていく。
ロランは嫌な予感がし治療を早めに切り上げ、ギルドを出て行った。
ロランの予想外の行動に驚くも、3人の美女はロランの後を追ってギルドを出て行く。
入口からギルドのロビーに向かって吹く風が3人の美女の甘く魅惑的な香りを運んだため、ロビーの男達は3人に釘付けとなった。
サブリナを含め多くの女性職員は、ヴァイスローデンに夢中になっている男どもを冷めた目で見据え『…全く女性を見る目が無い男どもが…』と心の中で呟くのだった。
ロランは尾行されている事は【理力眼】で分かっていたが殺気や敵意の類は感じなかったため、行きつけの宿屋で昼食をとることにした。
ロランが昼食をとっているとテーブルに3人の美女が座ってきた。
適度にウェーブのかかったブロンドの髪が胸まであり、野性的でかつ知的さも秘めたブルーの瞳のクラウディアがいきなりロランに対して、直球過ぎるほど直球の誘いを行った。
「…私はクラウディア・エルン。単刀直入に言うわね…」
「…君に私達ヴァイスローデンのパーティに加わってもらいたいの…」
「…条件があれば何でも言ってね…」
『…確か【ヴァイスローデン】と言えば全員がB級ライセンスで、冒険者達の憧れの的だったな。男性冒険者からの嫉妬を招くから遠回しに断ろう…』と決めたロランはやんわりと断りの言葉を述べるのだった。
「…僕はD級ライセンスですが足手まといにならないですか…」
すると、ブロンドだが少し赤が混じりウェーブがかかった髪の、筋肉質でスタイルの良いクラウディアとは別タイプの美女であるジェシカが勧誘してきた。
「…私達は治癒魔法を使える者を欲しているの…」
「…私は"ジェシカ・カナリス"パーティでは盾の役割をしているわ…宜しくね…」
それでもロランは遠まわしに断ろうとなかなかパーティーに参加できない事情を話し出す。
「…僕はへスティア商会で商品開発を行っているのでパーティーに参加できるのは週に3日だけです…」
「…それに来年の4月には王立魔法学園に入学する予定なので約1年しか行動を共にできません…」
ロランの話をスルーして、ストレートで腰まであるブロンドの髪と、透き通るような白い肌、エメラルドのようなグリーンの瞳に長い耳、エルフであり尚且つ絶世の美女であるリーンが強引にロランのパーティ参加を決定した。
「…私達は君が参加できる時に参加してくれればいいので決まりでいいですね…」
「…私は"リーン・バイン・アウアー"パーティでは後衛を務め、弓と魔法を使用して2人を遠隔からサポートしています…」
強引にロランがパーティーに参加することが決まるとクラウディアは大量の料理とお酒を注文していく。
「…では、ロラン君が私達【ヴァイスローデン】の一員になったことを祝って皆で食事をしましょう…」
ロランと美女3人は食事をしながら互いの自己紹介を行い、得意技や魔法などについて話し合いお互いの距離を縮めていく。
「「「…では、明日9時に『ヒルデ迷宮』で待っているからね…」」」
と3人はご機嫌で宿屋を出ていく。
少し経ってからロランも自分の食事代を支払に会計に向かったところ、予期せず3人の食事代も請求された。
『…はぁ、僕は異世界にきてまでメッシーにされてしまうのだろうか…』
『…これからはきちんと割り勘にしてもらおう…』
と思いながらロランは10リルガ硬貨5枚(日本円で5万円)を支払った。
『…あんなに美人なのに皆大食いすぎるよ…』と憂鬱になるロランなのであった。
・2019/02/28・・・貨幣の名称を変更