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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第2部 第3章 謎めく古代遺跡 編
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100話  カオスコントロール (2)

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

 今回のメッサッリア共和国訪問はフォルテア王国の特使としての公式訪問であるためロランは"繋門(ケイモン)や地下に開通している魔道列車"を使用せず高速馬車を使用することにした。


 高速馬車は元の世界の幌馬車(ほろばしゃ)のように縦方向に長い馬車であり走行中の振動を吸収するためショックアブソーバーを搭載することで高速走行を可能としている。


 外見は小型トレーラーを魔法馬がけん引する姿に近いものがあるがロランは勿論(もちろん)、性能だけではなく快適さと豪華さも追及していた。


 兎角、人々は豪華さと権威、第一印象に多大な影響を受けるからである。


 ロランは王都『カント』からクリスフォードが邸に来るまでの間『モシリ、トイ、レラ、イメル』に対し高速馬車の準備を行うよう指示を出す。


 「ロラン様……魔道迫撃砲やバイパーT31拳銃は床下に格納しております……」


 ロランは『恐怖は与えるが戦闘を行うために訪問するのではないのだが……』と思いつつモシリの好意に感謝を述べる。


 「モシリありがとう……戦闘がある場合はバレンティナに使用させるよ……」


 モシリはロランの役に立てたと感動しロランに満面の笑顔を向ける。


 このモシリ、トイ、レラ、イメルはツュマが族長であるアペキシテ(火の牙)の若き猛者(もさ)としてツュマが引き連れてきた者達である。


 現在はモシリとトイが執事を行いレラとイメルはメイドを行いながら邸の保安も取り仕切っていた。


 するとそこに、王都から正装し駆けつけたクリスフォードが現れた。


 「……公爵…私も一応カント魔法大学の教授をしている……もう少し時間に余裕を持って召集してほしいのだが……」


 クリスフォードは馬車で来たにも関わらず芝居がかった口調で不満を述べた。


 ロランはクリスフォードに心を許していた為、クリスフォードの大根芝居が()()()()()()苦笑する。


 ロランとクリスフォードが冗談交じりで会話をしているとバルトス、マルコ、クロス、バレンティナが集まり整列する。


 ロランは皆が集合した事を確認すると一言、今回のメッサッリア訪問の目的を述べた。


 「今回の目的はアルベルトの冤罪(えんざい)をはらす事にある……」


 「なお、この騒動の黒幕には生きる事が辛くなるほどの"絶対的な恐怖"を与える……」


 ロランのこの言葉にバルトス、マルコ、クロス、バレンティナは満面の笑顔となりクリスフォードは右手を額に当て考えん込むのだった。


 「では皆……いざメッサッリアへ……」


 ロラン一行を乗せた高速馬車の御者はSilentSpecter(サイレントスペクター)のファビアンが務めた。


 また、高速場馬車の前後左右にはRedMace(レッドメイス)の副隊長で獅子の獣人であるパイロンが指揮をとり隊員を乗せた軽量魔道装甲車が各方向2台ずつ護衛についた。


 「公爵、これほどの護衛でメッサッリアに赴けば戦闘を仕掛けているように思われないか……」


 馬車の静かさに耐えかねたクリスフォードがロランに話かけてきた。


 「クリスフォードもそう思うかい……実は僕もそう思うのだがジェルドが心配してね……」


 「公爵に心配は必要あるまい……まぁ良い権威付けにはなるだろうがね……」


 メッサッリアにはアレックスの父であり派閥の貴族である『ジョルジュ・フォン・マクスウェル・ツー・アガード』伯爵が治める『アガード』領を通過し入国する事にした。

 

 「ところで公爵……今回なぜ私がメッサッリアに同行する事になったのだ……」


 クリスフォードは共に馬車に乗るバルトス、マルコ、クロス、バレンティナを見て自分が場違いな場所にいると感じたうえでの問であった。


 「アルベルトが大統領を暗殺すると予知した予知能力(プレコグニション)部隊に対し外部から人為的な操作が行われた節がある……その説明をクリスフォードにお願いしたい……」


 ロランの発言でおおよその検討をつけたクリスフォードは話題を人為的操作に切り替えた。


 「"カオスコントロール"の事かな……論文に記載したがあくまで仮説であり現実には不可能に近い……」


 「ではクリスフォード……仮に現象を数値変換し脳内で変更を加えた後、再びイメージに変換したうえでプレコグ達に伝達し続ければ未来予知の変更は可能かな……」


 クリスフォードはしばし考えたうえでロランの質問に答えた。


 「公爵…それが出来れば可能だ……未来を予知をする際プレコグ達は潜在意識の中で"現在の事象を数値化"し混沌の中に浮かぶ無限ともいえる未来の中から……」


 「……現在の数値と比較し最も相関性が高い未来を()()()()()()として予知すると考えられるからね……」


 「しかしそれには膨大な魔力が必要だ……公爵や至高の門番の方々あるいは勇者の魔力であれば可能であろうが他国にそのような膨大な魔力を持つ者が存在するであろうか……」


 するとクロスが言葉少なめに話に加わってきた。


 「……魔石と魔力の高い魔物の脳や心臓を連結した"魔力増幅器"を使用するか……もしくは途方もない額の貨幣から魔力を吸収すれば可能であろう……」


 クロスの説に一同が納得する。


 「公爵……どちらの方式にせよ……今回の黒幕には相当なスポンサーが付いている事になりますな……」


 「察しがいいねクリスフォード……その通りだよ……商会連合かパルム公国あたりかな……」


 クリスフォードはロランが既に黒幕と黒幕に資金援助を行っているスポンサーに目星をつけていた事に驚愕し息を飲んだ。


 するとロランは御者をしているファビアンに突然話しかけた。


 「ファビアン……直近のペテン師の動向を教えてくれ……」


 「畏まりました……マンパシエ卿は東クリシュナ帝国の皇帝ルドラ・クリシュナとMRSIS長官であるゲーリー・ブライトマンに接触したとの報告を受けております……」


 ロランは目を瞑り(つむり)しばし天を仰ぐとファビアンに感謝の言葉を述べた。


 『そういえば公爵はマンパシエ卿の事も"友"と思っていたからな……精神的にこたえなければ良いのだが……』


 クリスフォードはロランの心中を察しそれ以降話を行う事はなかった。


 『アガード』領には2日を要する為、ロラン一行は開けた場所で野営をする事にした。


 テントの設営と見張りはRedMace(レッドメイス)の副隊長である獅子の獣人パイロンが指揮し隊員達が実施した。


 パイロンとファビアンが作る料理は予想以上に美味しく移動で疲労した身体に新たな活力を与えた。


 食事を終え見張りを除き各自テントに入り眠りについたがロランはなかなか眠れずテントを出て地面に横たわり満天の星空を眺めていた。


 するとクリスフォードもテントから出てきてロランの横隣りまで歩いてくると地面に横たわり天を眺めた。


 「公爵どうしましたか……マンパシエ卿の事でお悩みですかな……」


 「アルベルトとマンパシエは目指す道は異なれど友だと思っていたからね……」


 クリスフォードは思う。


 『公爵は心を許した者に対しあまりに無防備すぎる……今回の事で心を痛めなければよいのだが……』


 クリスフォードは今度はロランに対し自分の想いを願い出た。


 「公爵……公爵の怒りは理解できる…ただ何の罪も無いメッサッリアの国民に被害を与える攻撃は避けて頂きたい……」


 「分かっているよクリスフォード……罪の無いキメラ達を封印した【黒曜の丸屋根】以来……2度と罪なき者に害を与えないと心に決めているからね……」


 「ただ、自分達を救った英雄であるアルベルトに対し、真実を確認しようともせず手のひらを返すように罵倒し蔑んだ(さげすんだ)者達に対し対価として"恐怖を植え付ける"……」


 ロランとクリスフォードはこの後会話をすることなくただじっと星空を眺めていた。


 ロランは思う。


 『エスペランサの街から王都カントに来るまでよく野宿をしたものだ……』


 『この美しい星空を眺めながらメッサッリア国民に対し恐怖を植え付けようと考える自分はだいぶ変わってしまったな……星空は変わずこんなにも輝き美しいというのに……』


 2日後の昼、ロラン一行はメッサッリア共和国の国境検問所に到着した。


 ロランはメッサッリアにおいてもクリシュナ帝国の占領からホワイトヴィル湖南岸領域を開放した事で英雄と崇められていた為、国境検問所の責任者はロラン一行をVIP待遇で通行させた。


 メッサッリアの国内は転生者が多いこともあり整然とした街並みであった。


 道路の大部分は細かなブロックに加工した石を組み合わせた石畳で構成されていたが"軍用専用レーン"と表記された道路には他国には無いアスファルト舗装を見る事ができた。


 魔道装甲車を多量に保有することから交通手段は魔石を使用した自動車と予想していたのだが実際は予想に反して馬車であった。


 ただ、既にロランが特許を取得したショックアブソーバを大量導入し他国とは比較にならないほど多量の交通量を信号機により管理するなどインフラ周りや政治体制など明らかに他国より数十年進んでいると実感させた。


 しかしロランは先進的な街並みには一切興味を示さず一直線にフォルテア王国の大使館へと向かった。


 大使館にはアルベルトの恋人である『チェルシー・ミラー』国務大臣と『マシュー・オルコット』統合軍司令を待たせていたからである。


 『アルベルト……もう少し待っていてくれ……必ず君を釈放させる……』


 ロランは焦る想いを無理やり押さえつけるのであった……

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