集会所に集まる
メカコアラはバグハンターが集まる集会所で一人ユーカリの葉を噴かしていた。
時刻は8時集合時間より30分早いがメカコアラはここで朝食を済ませる。
「こんがり焼いたユーカリ虫2つにコーヒーを頼む」
7分後カリカリに焼かれたユーカリ虫にコーヒーがやってくる。
朝食に祈りを捧げた後蜂蜜をかけて食べコーヒーを飲む、いつもの味だ。
食事を楽しんでいた途中、左側から話しかけられる。
「メカコアラさん、隣座ってもよろしいでしょうか」
声のする方を向くと仲間のシイロが立っていた。
白いモフモフの毛に赤い色が少し混じってる、狐と犬の間に生まれたミックスだ。
シイロは回復魔法と弓を使い矢を魔法で作り一緒に戦ってくれる。
私はうなずくとシイロは隣で食事を食べ始めた、時間を確認すると8時20分、
後の二人が近くに居ないか見まわしてみた、入り口の近くには2.6mはある黒い影が見えた。
名はエバーダーク・シャドウ、14年間一緒に過ごした私の親友だ。
シャドウは馬の種族で四足歩行も二足歩行も出来る。
彼は火炎魔法と肉体を強化する魔法で戦い私たちの足となってくれる。
シャドウはこちらに気づいたが外で待っていると言いそのまま出て行ってしまった。
私は食事がすんだので右手の機手を拭いて会計を済ました。
時刻は8時26分少しの間待っているとシイロも食べ終わり近くにやってきた。
レオの奴また遅刻か…そう噂をしていると外から唸り声が聞こえてきた。
二人は外に出るとシャドウとレオが挨拶をしていたらしい。
レオは金色のたてがみを持ち鎧を身に着け重火器を手にしている。
ライオンだから出来る重武装だろう重さは200キロを軽く超えている。
レオは自慢の腕力と牙、大地を操る土魔法を使う。
「これで4人揃ったな、蟲の巣へ行こう」
とメカコアラが言うと、シャドウは馬車を持ってきて私たちは乗り込んだ。
集会所を発ってから既に3時間が過ぎていた…辺りを見回すとアオリゴミ虫がこちらを煽っている。
アオリゴミ虫の中に眼や体が赤く闇を含んだ者が居ないか確認しながら前に進んでいく、
闇を含み赤くなった虫は変態し強く狂暴な姿になり大巨虫になる前に始末をしなければならない。
(後2時間近くか…)
メカコアラはそう思うと右手の機手を手入れし始めた。
右手の義手が変形し中から蒼色の剣が姿を現した、剣の名は〈タイラントソード〉
タイラントビートルの角を加工して作られた、大巨虫の硬い外骨格を切り裂く、
普段は50㎝だが空気中の水分や水を吸収する事で3倍以上の大きさまで伸びる。
右手の義手を元に戻しユーカリの葉に火を灯し全員に話しかけた。
「今回の相手はただの蟲ではない、蜘蛛だ。神書では悪魔は蜘蛛に2本の脚を渡し鋭い牙を与えたと書いてある」
「闇の影響で変態を繰り返しきっと手強い相手となる、油断はするな」
と言うとシイロは頷いてからこう言った。
「大丈夫ですよ、私たちは一人前のバグハンターですから!
それに危なくなったら私が結界を張って逃げればいいんですから!」
胸に手を当て自信満々に語る、シイロのその背中には2週間前に作られた弓を背負っていた。
大巨虫化したシカイコガの羽と糸で作られた白いふわふわしたよくしなる弓だ。
あまり重くなく6㎏で矢の速度は300キロを超える、かなり高い買い物だったらしいが早く使ってみたいようだ。
「逃げる位なら死んだ方がマシだ、俺は覚悟してここに来ている」
そう語るレオは中距離で戦闘をし後ろに居るシャドウとシイロを守るポジションだ。
白銀に光る鎧はハクギンカタゾウムシの外殻を加工した物だ、象10頭が乗っても壊れない防御力を持つ、アサルトライフルやショットガン・土魔法を使用し相手を食い止める盾役だ。
きっと彼が居なければPTとしてのバランスを失うだろう。
シイロは誰も死なせたりしませんよ!と少し顔を赤くして怒っている。
シャドウはフフッと笑っていた、私は皆を必ず守ってみせると心に誓った。
色々な会話をしてるうちに蟲の巣の近くまでたどり着いた、辺りは薄暗く微かに霧がかかっていた。
近くにテントを張りGPSで現在地を確認しておく、皆に回復薬を2個配り火を通したカミキリムシの幼虫を3匹ずつ手渡した。
辺りを見回せば闇を抱えた目が赤い1.3mはある蜘蛛が2匹上からこちらの様子を見ていた。
それに気づいたシイロが矢を放ち足を貫き地面に落ちた、もう1匹は素早く逃げ視界から消えてった。
レオはライフルを構えていたが遅かったようだ。
メカコアラは落ちてきた蜘蛛に義手でトドメを刺し馬車の中に放り込んだ。
「1匹に逃げられたか…俺が早く気づいていれば」
「こちらの情報が向こうに伝わるだろう、二手に分かれて巣に入ろう」
そう言ってメカコアラとシイロ:レオとシャドウ 二手に分かれて巣に歩き出した。
巣の中は広く死骸が無く虫同士で争った形跡などは無いようだ。
周りを見回すとバナナムシ、クヌギミツアリ、タンパクキャタピラ等が確認できる。
どれも美味しい食材なので一つ一つ丁寧に捕まえる事にした。
バナナムシは針を曲げて足を縛る、クヌギミツアリは頭をそぎ落とし蜜の貯まったとこだけを残す。
それらを転移魔法でテントに転送し、キャタピラの方に向かう。
タンパクキャタピラはでかいので神経を動かなくする針を刺し、シイロに結界を張らせる。
大巨虫を倒した後にギルドのZOOに連絡し引き取って貰う予定だ。
シャドウにインカムで連絡を取ると二人は闇の力を含んだ虫を2体倒していた。
3メートルと先ほどより大きい変化した蜘蛛と蜂が襲いかかってきたと言う。
「さっき逃した蜘蛛がこっちの様子を伝えたみたいだな、すぐそっちに向かう」
「メックが居なくても余裕だがな、早く来ないと全部片づけちまうぞ?」
「シャドウらしいな、そっちまで10分近くかかる、慢心するなよ」
そう言うとインカムをオフにしたのか通信が途切れた。
シイロに状況を説明し一緒にシャドウ達の方に向かって走る。
向かっていく途中ゴーレムが見えた、さっき倒したであろう3mの巨虫達の周りを守ってるらしい。
闇の力が広がらない様にレオが土魔法を使い召喚したのだ。
先ほどの戦闘でシャドウが炎を使ったのか少し焦げ臭い臭いがする。
周りの虫達はハンターを警戒し、皆距離を取ってこちらを見ていた。
その時シャドウから連絡が入る。
「大巨虫が近くに居る、なるべく気配を消してこっちに向かってくれ」
よく周りを見渡すとそこは大巨虫の縄張りになっているのか、虫達が近寄らなかった。
蜘蛛は肉食で虫も食べる、虫達にとっても敵であり嫌われ者なのだ。
進んでいくと隠れているシャドウとレオと無事合流する事が出来た。
目の前の光景を見てメカコアラが言う。
「あれが蜘蛛の大巨虫か、デカいな」
前方には6mはするキラキラと光る蜘蛛の大巨虫が佇んでいた。
目が赤くその様子から闇の力が入っているのだと観測出来た。
「さて狩りの時間だ」
メックがそういうと全員戦闘の用意をし始めた。