二日目 夜
宴会は大盛況?
毛布にもぐってスマホさんの確認をするようです。
宴会が終わって寝静まった頃。
もそもそと毛布に潜り込んで、スマホさんと向き合う。
{現状確認は、設定のステータスから確認が可能です}
大分、完成してきたって感じか?
{システムの統合や整理整頓に関しては7割が完了しました。解放された機能は、今の所、魔導リンクシステム、レーダーリンクシステム、ストレージシステムとなります。次の解放予定は召喚システムとなります}
…ん?
{召喚システムは、ゲームを取り込んだ際に改変された機能となっており、魔力により一時的に幻想獣などを召喚し、マスターを守護または補助、並びに敵対勢力への攻撃などを役割として担ってもらうシステムとなっております。消費魔力が多目となっている分、効果は高いものが期待されます}
もしかして、ポケ○ン?
{はい。それとメガ○ンですね}
おおぅ…そういえばソフトだけ鞄に入れてたっけ…
っていうか、悪魔とか神とか召喚したらヤバイ気がするんだが。
{そちらに関しては能力の再現に、より大きな魔力が必要となりますのでヤバイと言えるだけのものとなるでしょう。あと、見た目に関しては幾分ぼかしておきます}
再現しようとしているのか。…うん、余程の事が起きない限りは使わない方向で頼む。
…で、あと、やばそうなシステムはあるかな?
{PCのデータ内から解析したものですと、現代兵器を擬人化したシリーズが…}
やめて!!
…えっ、擬人化した状態で召喚されるのか?
{いえ、能力を再現するとなると実機となります}
…そうか。残念。…いや、実機もまずいよね?でかいよね?これも使わない方向で!!
{そうですか。では優先順位を下げておきます}
なんか、召喚システム、すっごい危険なシステムな気がしてきた…。
ポケットなモンスターだったらまだ、見た目とか能力がぶっ飛んでないから良いとして。
他のは威力も見た目もインパクトが大きいから人前で使うのは、考え物だ。
補助とか護衛として使う事を主な用途としておこう、そうしよう。
よし、気を取り直してステータスの確認だ。
設定→ステータス
本体名称…ウルトラスマート3DPSV
システムAI…
バージョン…θ1.05
マスター…オルタ・ムラクモ
魔導CPU…14GHz(+)
魔導SSD…2TB(+)
魔導ストレージ容量…A1000(0.01)
魔力保存領域…∞(8万)
ほう………なにこれ?
{本体名称はこの本体の名称です。システムAIは私です。まだ無名ですので空欄となっております}
えっ、名前付けられるの?
{はい}
そうか。スマホさんっていうよりは名前付けた方が呼びやすいか。実際、秘書みたいな感じだし…
そうだな、artificialからもじって…アルテ、なんてどうだろう。
{…はい、設定完了しました。私は今後アルテと認識されます}
よろしくな、アルテ。
{はい。では次にバージョンの説明をします。これはAIのバージョンとなります。現在、シータバージョンの1.05番目という表記ですが、これはαから始まり三段階目のバージョン、小さな変更が5回あったという意味合いになります}
うん、何となく解った。
{次のマスターはマスターの事です。その次の魔導CPUは処理速度を表しています}
なんでこんなに速いんだ?
{改変と、取り込まれた機器の統合により、超越統合型多段並列処理装置へと変わった結果です。こちらは保存魔力と共に進化を続けているので、+が付いております。これは次の魔導SSDも同じ事が言えます}
そういう事か…この二つは魔力量で更に進化できるって感じか。
{魔導術式による常時補助などで能力を上げる事が可能となっております}
うん、その辺は良く解んないから、もう、お任せするよ。
{はい、お任せください。次に、魔導ストレージ容量ですが、これはAという名称の体積1000立方メートルの領域、その中に0.01の容量が入っているという表示になっています。詳しくはホーム画面から対応のフォルダを開いてご確認ください}
どれどれ…ふむ。名称は任意で変えられるのか…
中に入っているのは『ジャウルンデの実』が一個。
これ、スタックとかどうなるんだ?
{実際の箱の入れ物と同じとお考えください。ゲームのような便利さまでは再現できませんでした}
そうか、そこまで万能を求めてはいないから大丈夫だ。
別の空間に倉庫があるという考え方で良さそうだな。
…よし、それじゃ次。
{はい。次の魔力保存領域ですが、こちらは現在使用可能な保存魔力量となっております。魔力の保存先は別次元となっていますので実質無限です}
なるほど。無限か…ふむ。
こうしてステータスを見た感じ、量子力学とかに詳しくて、更に魔導術にも精通していないと理解するには程遠いと思うな。うん、よく解らんが、とにかく凄いという事だけは受け止めておこう。
{ちなみに、現状の魔力量ですと、マスターの周囲100mを瞬時に消し飛ばす事ができます。この際、マスターに被害が及ばないように遮断障壁を展開する事を含めます}
やらないでください。
…消し飛ばすってどういうことだよ。いや、いいや、説明は聞きたくない。怖すぎる。
とりあえず、自衛能力はある、という事でこの話は終わりにしよう。
そうだな、あとは…いいか……流石に眠い………
{おやすみなさいませ}
とあるテントの中。
「…他に仲間は見当たらないんだな?」
「はい、本当に、一人でここに辿り着いたようです」
「身を隠す場所も無いし、下手に動けば流砂や魔物に食われるからな…」
「彼は、信用できると思うよ。まあ、真実を全て語ってはいないようだけど…
…でも、話せない事が悪い事と決まっている訳ではない。
それに彼は、実際に相当混乱しているようだったからねぇ」
「そうか…。身なりからしてちょっと貴族かとも思ったが、全然高慢さが無いし、寧ろ…
あれだな。ゆるい、って感じだ」
「ははは…確かにね。兄さんもそう感じたんだね」
「女衆の見る目も大丈夫そうだし、風に好かれているようだから、このまま様子を見るとしよう」
「一応、見張りは付けておきますか?」
「あー、たぶん、ラティーファとナディヤが勝手に引っ付いて動くんじゃないかな?」
「…確かに」
「あと、モニールだね。うん、モニールだったらそれ程仕事にも影響が無いし、彼女が適役かな」
「そうだな、その辺りはエルダスに任せる。…で、だ。
…やはり、流砂の流れに異変があったようだ」
「…道程を変える事になるのかな?」
「今まで使っていた道を遮るような流砂がありました。…地下で異変が起きたと考えられます」
「まさかとは思うけど…竜が…」
「その可能性は高い。この数十年はその影さえ見る事も無かったが…」
「餌を求めて動いたのか、新たに現れたのか…」
「引き続き、調査はしますが、範囲によってはかなり大回りになると予想されます」
「次の村までは5日…食料と水はまだ余裕があるから、確実に進める道を進もう」
「ああ、それでいい。…それにもしかしたら、あの男が道を示してくれるかもしれん」
「ふふっ…それはそれで面白いかもね、兄さん」
「明日は、あの男は女衆の手伝いからで構わん。あとはいつも通りだ」
「はい、了解しました」
「さて…この出会いは何をもたらすのか…」
とある毛布の中。
{…敵対行動に繋がる言動は特に無し。好意的に迎えられていると暫定…流砂の情報は要注意。地下の状況を確認する事を優先…竜に関しての情報はマスターの記憶から推定…危険度高で対応…パターン別に竜を瞬滅させる魔導術を構築………合わせて流砂に巻き込まれた時の安全対策を考察……}
こうしてムラクモの異世界二日目の夜は更けていった。
翌朝、お約束のような展開が待っているとは露知らず。
そして、長きに亘る旅の始まりを告げる風が、静かに、ただ静かにオアシスを吹き抜けていた…
アルテは眠りません。
キャラバンの人々は夜番を2人立たせています。