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初日 夜

何やら生き延びるに都合の良い展開が…

 色々と頭が回らないので、只管東へと向かって歩き続けた結果。


「夜になっちゃうか…」


 結局、景色は変わらなかった。

 砂の質や、何か変化を求めてはみたものの、あるのは砂漠。

 こんなことなら東京砂漠の方が何倍も何倍もましだ…。

 

 異世界の砂漠に転移して、持ち物はポケットのスマホに手帳にボールペン、腕時計。

 食料と水も無しに、このまま死ぬかと思いきや、何故かスマホがエヴォリューション。

 そのスマホが魔法?で水を出してくれたから水問題は解決したけど…食料は流石に出せない。

 東京砂漠ならコンビニというオアシスがそこかしこにあるんだが。


{警告します。気温の低下による体調不良を起こす可能性があります。至急、寒冷対策を実行してください}


 ポケットから…聞こえている訳ではないんだよな、これ。


 今、俺は一人だ。

 そして、決して腹話術とかでもない。


 これは、スマホのAIの声だ。


 最初は、スマホから聞こえてきたと思っていたんだが、直に指向性のある音波(正確には魔力がうんたらかんたら)のようなものを発生させて話しているらしい。女性のしっとり落ち着いた、それでいて透き通った声質で聞こえるので大変耳に優しい。…いや、それは今はどうでもいいか。


「なんとかしてもらえるのか?」


{では、魔導リンクシステムを起動してください}


 これだ。


 俺のスマホはリンゴマークのスマホとは違うモノへと変わってしまった。

 その際たるものが、魔導リンクシステム。これは、所謂魔法が使えるアプリのようなものだ。

 ただし、俺自身には使えない。…orz

 実質、このホーム画面中央の三頭身の女性キャラが使っている事になるんだろうな。

 

 …あれ?こいつ、昼に見たのと違うような…


{夕方を過ぎるとナイトバージョンになります。寝巻き、ネグリジェ、シークレット等あります}


 そんなのあるんだ。

 それに、無駄にバージョン多くないか?

 …っていうか、今心の声に反応した!?


{常に、マスターとはリンクしていますので、大体の思考はこちらで把握しています}


 プライベートが筒抜けかよ…


{マスターの不利益になるような事はほぼ起こらないようになっていますので、心配ご無用です}


「ほぼなのか。そこは絶対無いと言って欲しかった!」


{魔導リンクシステムを起動してください}


 スルーできるのか、こいつ。

 AIだから学習するのか?…そんな無駄な学習して容量無くなるとか止めて欲しいな…。


「はぁ…」 


 取りあえず、段々と肌寒くなってきてるから、とっとと頼もう。

 ぽちっと、な。


{魔導リンクシステムを起動…マスター保護システムにより、自動選択モードを稼動します。…地面に穴を掘ります。マスターは位置固定推奨……『アースムーブ』を前方3mに発動します}


 その声の後に、前方の砂がアリ地獄の穴のように、すり鉢状へと変化していったのだが…


「徐々に戻っちゃうな」


{対策を検討中………}


 固めれば良いんだろうけど…


{………対案を作成、試行に移ります。『アースムーブ』『フレイムピラー』を前方5mに発動します}


ボォォォッ


 あっつ、あぶなっ!!

 おい!

 間合いを間違えたんじゃないのか!?


{申し訳ありません。熱せられた空気の膨張を計算に入れていませんでした}


「そこは素直に謝るんだ…」


{…対案の試行結果により、実行案へと移行、縦穴式寝床を作成します。『アースムーブ』『フレアピラー』を前方10mに発動します}


…ボォォォッ


 今度は少し離れた所に火柱が立った。心なしか色がさっきと違うような?


 しばらく待つと、火が消えて静けさが戻る。

 恐る恐る覗いてみると、おお…深さ2mくらいの縦穴ができている。

 上部は1mくらいは、ややすり鉢状になっていて、その下は俺が丁度横になってスッポリ収まりそうな感じの………なんか、棺桶みたいな造りだなぁ…。これ、わざとじゃないといいなぁ…。


「これ、要は、ガラス化させたって事だよな?硬い、よな?」


{その点に関しては、現状、その上に幾らか砂を敷き詰める事で緩和するくらいの案しかありません}


 あっ、そうか、それなら別にいいのか。ウォーターベッドならぬ、サンドベッドか。

 成る程、だからそれなりの深さにもしたって事なのかな。


{マスターが寝ている間は、私が時折気温調整の為に魔導術を起動しますので、安心してください}


「そうか、助かるよ」


 …至れり尽くせりだな、こいつ。いや俺のスマホなんだから当たり前といえば当たり前なのかもしれないけど、こいつのおかげで命拾いしているし、凄いありがたいんだよな。それに、何気に…可愛いしな!というか、よくよく見てみると…何処かで見たような気がする。なんだっけ…最近………ああっ!?


「携帯ゲームのキャラに似てる!?」


{参考にしています}


「そうなの!?」


{マスターへ提案します。一度ヘルプ機能をご覧ください}


「説明があるのか?」


{はい、このウルトラスマート3DPSVに関するヘルプには大体の改変内容が記されています}


 …ちょっと、まって。


「えっ、その名前、まさかだけど…俺の携帯ゲーム機…

 {はい、マスターの所有していた他の機器はこちらへ取り込まれています}

  …あ、そう」


 なんてこった。

 鞄に入れていた他の携帯ゲーム機とタブレットとノートPCがこのスマホ一台になったのか。


 ははっ…




「すげええええええ!!!なにそれ!?えっ?これ一台で全てまかなえるのか!?」


{機能はこちらの世界に合わせての改変となりますので、主な用途が大幅に変更されております}


 あ、そうなの。


{ゲームプレイは出来ないようになっておりますが、そのゲームを元にした新たなシステムが構築されていますので、この世界ではお役に立てるのではないかと愚考します}


 ちょっぴり謙虚になっているのは、申し訳なさの表れかな?


「まあ、とにかく、説明を読んでみよう」


 スマホの設定のアイコンを押してみる。

 ふむ、これはそのままのアイコンなんだな。

 どれどれ………と、読めない文字が並んでいるのはどうしてだ?


{申し訳ありません。読めない部分に関しては、最適化がまだ済んでいない部分となります。ヘルプは大まかな部分では最適化が済んでいます。ただ、使える機能に関しての説明は殆ど読めますが、その他に関しては適時更新する予定となっています}


 んー、つまり、今読めるのは?


{魔導リンクシステムに関する部分と、Tショックに関する部分となります}


「…Tショックって?」


{マスターの左腕に装備されている時計型の魔導機器の名称です}


 …えっと、G、じゃなかったっけ?


{そちらも、改変を受けていますので}


「た、たとえば?」


{主要な部分は変わりませんが、付加機能として、レーダーマップシステムが搭載されています}


 付加機能が凄いんだけど。寧ろメインじゃないの?


{あくまでも、おまけ機能です}


 価値観が良く解らん…

 まあ、でも、パワーアップしたのなら、大歓迎だけどな!!


「それにしても、ごちゃごちゃと話があっちこっちに広がって混乱してしまうな…」


 今日中にある程度把握して、明日は食べ物を見つけないと…って考えたら腹が減ってきた…。


「すまん、先に、水を飲ませてくれ」


{はい、気温を考慮してぬるめで作成します…『アクアウォーター』を発動します}


フォゥォン

ゴクゴクッ


 っとね。

 さて、ヘルプは…と。


 設定の一番下にヘルプの文字があり、それを押してみる。


 魔導リンクシステムと、レーダーシステムという項目が上部にあって、その下は?で埋まっているな。

 とりあえず、一番重要っぽい、魔導リンクシステムを見てみよう。


 …魔導リンクシステムとは、この世界の定められた魔導法則を解析及び構築して実行するシステムである…


 …と。要は、魔法なんだよな?


{はい、肯定します}


 こいつは確か、再構成とか言っていたから、それなりに自由度は高いシステムらしい。イメージとしてはプログラムの構文があって、それを組み合わせることである程度好きなように魔法が使えるって感じか。…そうなると、この世界の魔法使い…魔導使い?…は結構、大きな力を持っていそうだ。よし、ひっそり生きよう。俺自身は大した能力が無いんだから、安全に行こう。


 次は魔導リンクシステムの項目の中にあった魔導術に関する補足、と。


 …魔導士の使う魔導術では、その結果に至る過程を自ら構築しなければならない。この為構築部分を詠唱という間接構築で処理をする。この時、手間が余計に掛かり、魔力の消費と結果値に差が生じる事になる。しかし、魔導リンクシステムでは、演算処理をする事により大幅な構築処理の改善及び向上ができ、その結果普通の魔導士よりも、大幅に優れた魔導術を行使できるようになっている。


「…おい、これ説明じゃなくて自慢じゃないか」


{…補足です}


 っく、まあ、確かに、補足と言われたら補足なんだけどさ!

 その微妙な間がモヤっとするぞ…

 …はぁ、気を取り直して、次行こう。


 …魔力に関して。魔力とは、人の持つ生命エネルギーと、世界を満たすマナとの化合反応による超常のエネルギーである。一般的には成人男性での魔力量は100~200とされている。これは『ファイアーボール』を発動するとして、10~20回の量である。しかし、ウルトラスマート3DPSVは、内臓バッテリーとマナとのコラボ改変が実現。マナでバッテリーを充電し、その電気エネルギーを使い魔力を生成する事を可能とした。これは、最早遥かに人の領域を凌駕していると言える。


「……おい、最後の一文、蛇足じゃないか」


{解りやすく説明をした結果です}


 確かに、解るけど!

 …そしてこれ、永久機関って事だよな?


{はい、肯定します。補足しますと、バッテリー素子も改変されているので、劣化が無くなっています。そして魔力はストレージへとほぼ無限に貯蓄されるので、現在も魔力は溜まり続けています}


 …ああ、何か凄い事になっているっていうのは解った。


 でもな、空腹でこのやり取りは…つらいよ…



ウルトラブック+スマホ(+タブレット)+3D○+P○V=ウルトラスマート3DPSV

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