第一章~成瀬多々良の場合~
はっと目が覚める。現実味が無かった。呼吸も乱れていてパジャマ代わりのシャツも汗でぐっしょりと濡れている。ふと、枕元の時計に目をやるとまだ四時過ぎだった。 成瀬多々良は汗で濡れたシャツを着替えるためにベットから立ち上がった。全く何が悲しくてこんな変質者じみた夢で起こされなくてはいけないのだろう。原因は分かっていた。隣の家に住んでいる彼女だ。先月出来たばかりの小綺麗な家に引っ越しで来た彼女の名前は何だっただろうか?篠崎...あぁ、そうだ。篠崎、篠崎琴音だ。彼女は、いや、親しみを込めて琴音と呼んだ方がいいな。まぁ、琴音は隣に住む冴えない俺の事など覚えていないと思うが。琴音は引っ越しの準備で忙しい両親の代わりに挨拶回りに来た、そして俺は一目で琴音に恋をしてしまった.....。 今思えば何故、母に対応させてしまったのだろか?面倒くさがらずに対応すれば良かった。だが、熟年女性特有の図々しさがなければ琴音の名前や年齢、通っている大学は知ることは出来なかっただろう。思い出すだけで興奮してしまう、琴音は美しいのだ。そこら辺読者モデルや整形で作った偽物の美しさとは全く違う本物美しさを持っているのだ。腰まで伸ばした艶のある黒髪、陶器のような白く張りのある肌、燃えるような赤い唇、痩せすぎず太すぎない身体は服を着ていてもエロティックだった。そして、この界隈では知らない奴はいない名門大学のしかも、医学部に通っているという。将来は内科医になって、病気に苦しんで居る人を助けたい。と語っていた琴音は輝いていた。 そんなことを考えていると外から強烈な視線を感じた、犬の散歩をいてるおばさんからであった。朝から窓際に突っ立て動かない男を見て不振に不審に思ったのであろう。 俺はカーテンを閉め、シャツを着替えるとベッドに入りまた深い闇の中へ堕ちていった。