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序章
この手をつかむ温もりを。
この腕をつかむ力強さを。
知らないから、この命すべてなげうてる。
大切なものが無いから、この命をいらないと思える。
―――――あの頃の私は、確かのそう思っていた。
けれど。
私は知ってしまった。
貴方に出会って、知ってしまったから。
もう。
後戻りなんて。
できない。
人を愛するという事は、
こんなにも苦しくて、
こんなにも悲しくて、
こんなにも、嬉しい気持ちにさせられるなんて。
貴方がいなければ知る事のできなかった気持ち。感情。
それに名前をつけるとしたら、一体どんな名前になるのか。
貴方は、私を絶望から救い上げてくれた人――。