表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

都合のよすぎた魔法

「俺の名はレッド・クモマン!」


「俺の名はイエロー・クモマン!」


「俺の名はホッカホッカ・ニクマン!」


「「「我ら三兄弟の力を思い知らせてやる!」」」


 各々、自己陶酔(ナルシスト)気味の派手なポーズをキメながら地表に降り立った。


 律儀なことに三匹とも順番に自己紹介してビルの上や建物の隙間から飛んできたのだが、前のあいつの亜種だと思われる。


 色が変わっただけの馬鹿が二匹、それとどういうわけか一匹はコンビニで売られてるやつが巨大化して手足が生えただけの物体だ。


 ギン係長は買い物袋を道路脇に置き、腕組みして三馬鹿を見据えた。深く長い溜息が漏れ、沈んだ首が左右に揺れた。世の無常を(はかな)むようなしぐさ。気持ちはわからなくもない。


 今回は普段の変装姿であるので俺は初めてギン係長の変身シーンを拝むことになる。脱衣してくれるかな、とほのかに期待したが指をパチンッと鳴らしただけで普通に着替え終わっていた。


 なんの情緒もない。あっさりとしていた。


 ちょ、えっ……もっと、こう、あるだろ? ねえ。サービスとか。ねえ?


 俺の手前勝手な不満をよそに足を伸ばしたり、手首をひねったりしてストレッチをし終わるとギン係長は真っ直ぐ正面に立つ。


「一匹だけ明らかに兄弟じゃないの混じってるんだけど、わかっててやってるのよね。そうよね? 本当はあたしをイラつかせるのが目的なんでしょ? 知ってるけど効果はあるわよ。なぜかわからないけど無性に腹が立ってきたわ」


「行くぞゲロリン・バレット!」


「死ねパンチラ・バレット!」


「おっぱい見せてください!」


「よーし、全員切り刻むことにしたわ……!」


 クモマンズはギン係長の逆鱗に触れたようだ。攻撃用の魔法なのか五本の光の剣を構成し、空中にふわりと浮かべて切っ先を標的に向ける。何かを持つように片腕を天に向けて伸ばし、額に青筋を走らせながら放つ構え。


 俺は車のサイドウィンドウを開いて音を拾いながらその様子を眺めていた。ギン係長はこちらに気付いていない。いつものように観客の取り巻きの中。応援のような歓声と勝負をはやし立てる大音量。


「シルバーちゃんは本調子に戻ってきたかな。最近ずっと調子悪かったみたいなんです」


「そうなんですか」


 バトルの九割は肉弾戦でカタをつけてきたが、苦手だといっていた遠距離攻撃にしている。恐らくは三対一だからということもあるのではないか。


「魔法を乱用すると回復しないようなんです。本人曰く『楽しくならないとダメ』ってね。だからあんな風な怪人と遊ばせてたんですけど、もうあの手も通じなくなってきてしまいまして。本当に新木さんは渡り船でした。あの娘はあれでも人見知りが酷くて」


 ――意味が一瞬だけわからなかった。


 思考が停止した。衝撃から復帰すると過去の回想が連なって脳裏を過ぎる。怪人とは都合よく居合わせた。彼らは悪を歌いながら人質を取ることなどしなかった。ほとんどの人的被害がなかった。


 水原部長はビルの爆破も予期していた。だとすれば導き出される答えは一つだ。


 それは大人ならば薄々気づいてたが、子供の前では口に出すことはできないことだ。


「やはり、茶番なんですか」


「当然でしょう。大衆もそこまで愚かではありません。気付いていて、わかっていて、知っていて踊らされるのですよ。ニュースとして流れ、人々の口にのぼりになり、自分にとって面白いことならなんでも容易に受け入れてしまうものです」


 水原部長のいっていることは単純だ。怪人はうちの会社で用意したものであり、テレビの前でわざとギン係長と戦わせているということだ。


 正義と悪を両手に持っているのなら、それは単なるお芝居となる。


 そのことをギン係長は知っているのか。知っているのなら女優になり、知らないのならば道化になる。


 どちらにせよ、大人の都合で子供を危ない目に遭わせるのは許し難いことだ。


大衆娯楽(ヒーローショー)ですか。司法組織に許可とかは取ってるんですか?」


 レッド・クマモンのケツにギン係長の放った光の剣が突き刺さった。耳をつんざくような悲鳴。哀れにも尻を押さえて両足飛びでぴょんぴょんと跳ね転び、力尽きて爆発四散した。


 水原部長はブロッコリーを箸先で摘まんで口許に運ぶ。桃色の舌がぺろりと森林を思わせるつぼみの部分を舐めあげた。


「勿論です。表立ってはいませんが」


「ありえません。どうやって許可を取るんですか。ほとんどの人は何も知らず、危険なときもあるというのに」


「お金と権力です。人間は社会性のあるの生き物ですから、ほとんどの人がその二つから逃げられないんですよ」


「権力? うちは玩具会社でしょう」


「うちは玩具会社です。でも人間が誰と繋がっているかわからないように、会社だってどことどう繋がっているかわからないものですよ」


 人々のどよめきが騒がしく聞こえた。空を旋回するギン係長の光の剣を受けたホッカホッカ・ニクマンの肉体が裂け、ギョーザ・ピザマンだったという衝撃の事実が発覚して過去話が展開されている。中洋折衷という新感覚の味覚をコンビニ店長が試してみた結果、一つも売れずに廃棄された怨念が結集して生まれた設定らしい。イエロー・クモマンが兄弟だと思っていたのに騙されていたと知って仲間割れをし始めた。お互いの胸倉を掴んで醜く罵り合っている。


「わからないですね。そんなに大勢を巻き込んで、あんなバトルをする意味はない」


娯楽(エンターテイメント)に意味など求めてる必要はありますか。ここにあるのは合理だけです。利害が一致すれば人は動くものなのですから」


「どんな利害だっていうんですか?」


「おや、もう終わりみたいですね」


 質問は答えられず、ギン係長の鉄拳がバトルそっちのけで口論していたギョーザ・ピザマンの腹部を突き破った。拳圧で吹っ飛ぶ臓物(具材)は少しグロ。鉄拳が開き、内容物を鷲掴みして引っこ抜き味見をした。もぐもぐした後に「わりとイケる」との感想。


 その一言でギョーザ・ピザマンは雷に打たれたように震えた。そしてゆっくり、はらはらと涙を流しながら倒れた。そしてもうこの世に恨みはないと、成仏するといい残して安らかに爆発した。


 取り残されたイエロー・クモマンはしばらく茫然と立ち尽くしたが、吹っ切れたのか「べらんめえ!」と叫びやけくそになって突撃したが、残った光の剣の集中砲火を食らって串刺しにされた。無情にしてあっけない最期だ。


 ギン係長はナプキンで口許をぬぐい「でもやっぱりちょっとしつこい味だったからダメね」とギョーザ・ピザマンの安楽死を普通に否定し、羽を生やして空を飛んで行った。


「シルバーちゃんの魔法には値千金の価値があるのです。この世界で彼女以外、誰もあんな力はないのですから。私は路上に立つ彼女を見つけたとき、心躍らせたものですよ」


「何に利用してるんですか? 玩具の売り上げだけでこんなバトルをしてるんですか」


 唇に指が当てられる。俺の目を見ようとしない。


「人がまばらになってきましたね。さて、バッテリーを回収しに行きましょうか新木さん。午後からはお勉強ですよ」




 ☆ ★





『幸魔道』に地下階があることは知っていたが、エレベーターで昇降するためには指紋照合が必要になっていた。地下へ続く非常階段の類はどこかにあるかもしれないが、少なくともロビーには出入り口は見当たらない。


 水原部長は腰を屈めてボタンを押す。尻が突き出されるセクシーな動作。俺の一部は上昇しそうだったがエレベーターは地下二階へ。


 俺はバッテリーをたっぷり詰め込んだ段ボールを両手で抱え、足腰を踏ん張っての苦行態勢だった。一人に持たせるような重量ではない。だからといって上司に持たせるわけにもいかない。


「そもそも魔法ってなんだと思いますか新木さん」


「ふっ、ふっ、不思議な力ですか」


 膝が笑う。六十キロは軽く越えてるよねこれ。


「そう、原理不明の作用ということです。研究者としては本当に興味がそそられるものです」


 エレベーターが止まる。機械音が鳴り、一気に空間は広がった。


 区切りのない解放感のあるフロアが目に飛び込んでくる。あちこちに照明器具が立てられ、白壁に反射して眩しいくらい明度が高まっている。数十人はいる研究者がそれぞれ白衣を着て仕事に従事している。年配の人間の割合が高い。顔つきは真剣でこっちを見向きもしない。秘密の地下研究所という言葉がぷかりと脳裏にかすめる。


 よく観察すればチームごとに土台となる机を中心に活動しているようだ。壁際には薬品瓶や機械器具がスチールパイプ棚に並べられ、なんらかの装置であろう筐体に繋がれたおびたただしい配線の先のモニターの数値を見たり、スポイトでフラスコの中に液体を入れ、振ったりしながら成分の変化を調べている。


「む、お前か」


「ふわふわん!?」


 丸まった二つの角を生やしたもこもこ羊帽子を被り、冬服のダッフルコートを着た雪国の子供のような怪人ふわふわんが俺に気付き、首をひねった。


 エレベーターの前で荷物運びをしていたようで、持っていた段ボール箱を部屋の隅に下し、また戻ってくる。


 敵意や悪意などといった感情の波はない。むしろ首筋を暖かく包む襟元の羽毛を指で摘まみつつ、端正な顔を近づけてのひょこひょこじろじろと好奇心をむき出しにしている。


「ふわちゃん。そんなに見ちゃダメよ」


 俺が重そうに持っている段ボール箱にぴくんと気付き、ひょいっと持って行かれる。剛腕ぱねえ。


 頭の上に両手で持っていき、灰色の目が細められる。


「知ってるぞ……直ノ介だったな。話はリトルボスから聞いているぞ。取り返しのつかないほどのロリコンだそうだな」


「根も葉もない誹謗中傷ですね。ところでお菓子食べるかいお嬢さん」


「いきなり私を狙いにきたな。抜かりないな」


 減らず口を微笑で無視し、運搬の手間賃として意味合いの板チョコを差し出すと、両手が塞がっていたふわふわんはニッと笑う。


 板チョコはかぷっと歯で受け取られる。そのままくるりと背を向けて歩いていく。スキップでもしそうな颯爽とした足取り。


「さて、参りましょうか」


 部屋の真ん中を歩くと気付いた研究者が水原部長に向かって次々と会釈した。彼女は手を振って応える。慇懃な態度には敬意がある。水原部長にはそれなりの人望があるのだろう。


 部屋の突き当りは丁字路だった。左手に曲がって歩き続ける。病院を移動しているような清潔さと真新しい管廊。それでも窮屈な感触がないのはベンチや観葉植物が置かれているせいだろう。


 天井を這う給気ダクトと給水管と電線。通りがかる部屋の縦プレートの多くは個人名で所属する会社名や大学名が刻まれていることもあった。


 別口にエスカレーターも見える。どこへどう通じているのか。思ったよりも地下世界は広大かもしれない、


 ふわふわんは一室の前で立ち止まった。


 そこだけ頑丈な金属扉。プレート名は『魔力貯蔵庫』。自動ドアのようでセンサーが反応し、ぷしゅっと音がして開く。


 足を踏み入れると暗がりがパッと明るくなる。薄緑色のマットの敷かれた床面。金属特有の濃い硬質な臭い。壁際に縦列に並んだLEDが照らし出す先には巨大なタンクが鎮座していた。


 圧力計と配管の形からしてボイラー設備近い。銀色の外面はツヤツヤとして光沢がある。底部や上部には緑色の配管が無数に繋がれて天井で枝分かれしている。五メートルほど横に制御盤あり、計測器を見たが『M』というよくわからない単位だった。ヘルツでもワットでもないしパスカルでもない。


 全体の一部だけ露出しているのか胴体は埋まり、その下辺は金属板が固められている。


 奇怪なタコのような印象。


「ま、待っていたぽん、直介」


 制御盤の影からトコトコと現れたのは喋るハムスターのポムポム――どういうわけか松葉杖を突いて全身包帯まみれだった。


 ハァーハァーッと荒い息を吐きながらの歩み、既に瀕死だった。目に力はなく生彩を失い、やっとこさ持つ杖もぶるぶるとさせている。


「社長、どうしたんですかその怪我は?」


「おっ、お前は自分が今朝やったこともう忘れたのかぽん。こんな愛らしいポムポムを三階の窓から叩き落としてトラックに車輪に踏み潰させたぽん。おおよそ人として、してはいけないことに分類されるぽん」


「忘れました」


「お前ちょっとマジでクズ過ぎるぽん。解雇して欲しいのかぽん……って、ま、またひまわりの種をくれたって許さな……ま、まさかこれはチョコでコーティングされた……ほ、ほぉ? ほぉおおおおおお? ドロドロデェリシャス!」


 懐に忍ばせておいた追加のひまわりの種(チョコ仕様)にあっさり釣られてポムポムは陥落した。サイクロン掃除機を思わせる勢いで貪っていく。あっさり誤魔化され、痴態を晒す小動物に俺は憐みの念を禁じ得ない。


 面白半分につま先で突いて横倒しにすると、その態勢のまま食事を続けている。どういう執念だ。


「それで水原部長、この施設はなんなんですか?」


「原発です」


「はい?」


 ということはあのタンクってもしかして――緊張のあまり頬から汗がつたった。


 水原部長は本気顔だ。俺はなんとなく出入り口に視線を向ける。危険な話にはこれ以上、足を突っ込まない方がいいのではないかとの判断が頭の片隅で働き始めていた。


「――みたいなものですね。平たくいうとですが」


「で、ですよねー!」


 二の句で安堵して手の甲で顎先をつたう汗をぬぐった。尋常じゃないほどの発汗していた。確かに俺は冒険野郎だが谷底に飛び込みたいわけじゃない。


「さて、これより『幸魔道』シークレットB講習を始めます。それではふわふわん講師、お願いします」


「うい。固くならず、そこのみかん箱の前に座れ直ノ介、なんだ。いきなり手を挙げて質問か?」


 ふわふわんが車輪付きのホワイトボートをがらがらと押し運んできたかと思えば、いつの間にか俺の膝元にはみかん箱が設置されていた。


 戸惑いながらも俺はひとまず腰を下ろし、挙手した。


「ふわふわんは人間なんですか?」


「おい、プライベートなことだぞ。何か? 直ノ介はストーカー気質か? やはりロリペタな私に興味深々なのか?」


「心配しないでください。確かに俺は生まれながらのハンターですけど、子供は狩らないって決めてます。それが狩人の、ネイティブ・ラブリストの掟なんです」


「お前は本当――全力で気持ち悪いな。いや、その獲物を品定めする目つきは止めろ。何が「あと二年でいけるか」だ。小声でも聞こえるからな。後、諦めのため息をつくな。ぶっ殺すぞ……いいか、よく聞けよ。まずは順を追って話していってやる」


 ふわふわんはステンレス製の指示棒を伸ばしたり縮めたりしながら、思考をまとめているのかしばらく目を閉じ、開くと同時語り始めた。


「我々怪人が出現したのは三年前のことだ。有名だから知っているとは思うが最悪の怪人にして最初の怪人ハンサム・ボルト。体長十メートルの大型怪人にして電気を吸収する能力の持ち主だった」


「ああ自衛隊に銃殺されたやつですね。東京都を停電させまくって都市機能を麻痺させた」


 ふわふわんの背後のホワイトボートだと思っていたものはその形状を模しただけの――液晶画面だった。面白いアイディアだ。パッと映像が浮かび上がる。映っているハンサム・ボルトは下半身が太く短足でずんぐりとしており、鈍重そうな人型の怪人だった。見事な丸頭で全身は鉄板尽し。意味もなく無数の六角ボルトが打ち付けられている。細長い両手の先は二又に分かれただけで機能性は低い。


 昭和のブリキ玩具みたいな簡素な造形をしていたが、放電しながら自動車を跳ね飛ばして猛進していく姿には有無いわせない迫力があった。


 立ち向かっている突撃銃を持った自衛隊は決死の表情なのだが、皮肉なことにアクションコメディのワンシーンに見える。


「被害額は推定二千億ともいわれている。分厚い鋼鉄で造られた漆黒の身体は銃弾でも容易には止められなかった。電気のあるところなら高層ビルでも駅でも電塔でも向かうようにプログラムされていた。倒さなければ半永久的に稼働し続けたともいわれている。これがうちの会社の『マジで作っちゃったシリーズ』だ」


「うちの会社ってテロ組織なんですか」


「結論を急ぐな。この一件は上層部を大いに悩ませた。どうして日本人の研究者は真面目なんだと。怪人を創れといったけどこんな凄いの作んなくていいのにと。どうして予算が潤沢にあるからといって使い切ろうとするのかと」


「最後はお役所仕事っぽいんですが」


「二番目に造った怪人はグレードを落とした。というよりもう予算がなくなりかけていた。どうして最初に頑張ってしまったのかと研究者たちも激しく後悔した」


「なんで関わってる奴ら全員馬鹿なんですか」


「うむ。まあ、どこにでもある話だろう。責めてやるな。そして次の怪人はレッツイェーイ。研究者の一人が競馬の大ファンで、でも全然勝てなくて負けまくってたことを逆恨みしたことにより生まれたお馬さん怪人だ。主に中央競馬場に現れて勝手にレースに参加していた。スタートすると同時に塀を乗り越えて併走するのでリポーターが困惑しながらも実況を配信してしまい大変話題になった。これが当時の有名馬との対決だ。障害走というのにレッツイェーイは果敢にも背面走という奇抜なスタイルで……」


「ふわふわん講師」


「なんだ?」


 いつまでも続きそうだったので区切った。俺が聞きたいのは怪人の生態とかではない。


「要点だけでいいです。なんで怪人が生まれたのか、どうしてギン係長が戦わされてるのか、うちの会社はどのように関わってるのかでお願いします」


 怪人の説明ができないのが不満なのかふわふわんは下唇を突き出した。だが一応は講師として胸を張り、こくりと頷いた。


「我々怪人はシルバーバレットの力を引き出すための存在だ。ただそれだけのために誕生し、ただそれだけのために滅びる」


 しん、と静寂が場に満ちた。


 ポムポムはひまわりの種を食べ終わったのか丸い腹を上にして寝っ転がっている。


 ふわふわんの顔には痛痒はない。それが当然というわりきった顔。なぜか、どうしてか、無性に悲しくなったのは俺だけか。


 液晶画面はギン係長の後ろ姿になっていた。


「シルバーバレットは魔力製造機(マジカル・メィカー)という存在だ。あいつが魔法を使い、飛び散った魔力を人間組織が回収して有効利用する。すべては誰でも魔法使いにするためのプロジェクトだということだ。原始時代から人類はすべからく新たなエネルギーを渇望してきたものであり、そうして発展と栄華を手にしてきたのだろう?」


 つまり、とふわふわんは続ける。


 急激に壮大な話になってきやがった。ふわふわんは大真面目――かと思えばシニカルな笑みが浮かべる。


「あいつが原初の火を熾した者ということになるな。そして火は密やかに燃え盛っている。では、次は魔法少女という存在から力を盗み取った人類の魔法(ミラクル)の使い方を見てみようか」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ