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たとえ我が願いで世界が滅びようとも  作者: pu-
第三章 祭事が行われる時、狂宴は知れず開かれる
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エピローグ それはかつて『魔法使い』が起こしたという惨劇

 ついに始まったのか。

【千星騎士団】の襲撃に騒ぐ仲間と避難する村人達の片隅で、私は静かにそう呟いた。

 声は誰も聞いてはいないだろう。みな、自らがなすことで手一杯だ。

 この【千星騎士団】の討伐の意図を、私と『剣の神子』を除いてまるで分かっていない。今日という日を狙ったことも。


 様子を見に行った――と言うよりも、処理か――アイロギィが戻って来るまでの間、私は一冊の書物に目を通すことにした。

 それをいつ手に入れたのかは定かではないが、私が【テーブルスナッチ】に連れられた時にはすでにあった。


(これも七〇年前なんてことはないだろうな?)


 少なからず、この組織ができたのが十五年前後だ。ならず者の集団が集まり、アイロギィを中心に拡大していった。


(ただこれは、何か(・・)が起こる前に書かれたものなんだろうな)


 この書物は、かつて起きた悲劇がお伽噺として綴られている。



『遥か昔。『魔法使い』と呼ばれる、世界と人間を仲立ちする者がいました』


 当たり障りのない始まり方だが、どこかそこから起こる悲劇を連想させる。

 それは、今確かにこの世界に起こっている混沌を知っているからだろうか。


『しかし、『魔法使い』は課せられた責に耐え切れず、徐々に狂って行ってしまうのです』


 かつて起きた、悲劇の始まり。

 そして現在、降りかかっている困難と同じ始まりだ。


『『魔法使い』は世界を滅茶苦茶にしようとしました。

 理由なんて分かりません。すでに彼は狂ってしまったのですから。まともな考えでは、彼の考えなどまるで分りません。

 彼はまず手始めに、この世界の全てを制御する『魔法』(イグドラシル・ロウ)を壊し始めました。

 真っ先にそうしたのは、自らを縛りつける原因だったからかもしれませんが、結局は分かりません。


 しかし、彼の膨れ上がる狂気に反して『魔法』(イグドラシル・ロウ)は全く壊れません。

 いくら『魔法』(イグドラシル・ロウ)を使える『魔法使い』とはいえ、彼は星約の範囲でしか扱うことができなかったのです。

 仕方なく『魔法使い』は自分が扱える『魔法』(イグドラシル・ロウ)の一部を引き千切り、それをさらに一〇に分けてアルトリエ大陸のどこかに封印してしまいました』


 どこまでも、この世界に降りかかった災いと酷似している。

 もしくは現在起こっている破局を引き起こした『魔法使い』が、それをなぞらえたのか。


『彼はもう『魔法』(イグドラシル・ロウ)を使わなくなったのですから、『魔法使い』ではありません。

 それはもう『魔法』(イグドラシル・ロウ)でなくなったのですから、彼は『魔法使い』ではありません。

 星約を無理矢理終わらせた彼は、その瞬間に消えてしまいました』


 仲立ちを失った結果、この世界に何が起きたのかは分からない。

 人々の記憶を失ったのが、それが原因なのか。

 アルトリエ大陸が『無望の霧』に塞がれたのが、それが原因なのか。

 それとも、もっと恐ろしいことが起きたのか。ないしは、これから起きるのか。


『壊れた『魔法』(イグドラシル・ロウ)と、失われた『魔法使い』。

 その二つの要因は、この世界に破局を招くこととなります。

 それは単純に『魔物』の闘争による余波。限られた資源を奪い合う人間の戦争だけでなく、この世界の寿命そのものを削っていくものでした』


『魔法使い』の空座を、過去はどう対処したのか。それはこの書物には綴られていない。

 だが、現状は天の使用者と化した『天使』と呼ばれる存在が、その代わりをなしている。が、当然のことながら完全なる制御ができてはいない。

『魔法』(イグドラシル・ロウ)は『魔法使い』によって、その一部を壊されてしまったのだから。


『物質化した『魔法』(イグドラシル・ロウ)である『魔物』達は、己が生き残るために殺し合います。

 バラバラになった『魔法』(イグドラシル・ロウ)を戻し、星約に基づいた力を手にして、新たなる『魔法使い』となるために殺し合います』


 それがついに始まったのだ。

 この閉ざされた地――アルトリエ大陸を舞台に、『魔物』達による世界救済の殺し合いが。


『長きに渡る闘争の果て。

 世界が壊れ続け、この世界に残されたものが僅かになった時。

 ようやく、『魔物』は一つとなりました。『魔法』(イグドラシル・ロウ)へと戻り、勝ち残った精神は新たなる『魔法使い』へと至りました。

 そして、世界は招かれた破滅を回避することができました。

 この世界に、数多の傷と悲しみを残して』



 そこでお伽噺は終わる。他にもいくつかのお伽噺が書かれているが、この地の『剣の神子』に関するものはない。


(果たして……)


 胸中で呟き、疑問を続ける。

 この伝説は果たして、誰が書き綴ったのか。

 この伝説の果てに勝ったのは、一体誰なのか。

 そして、誰のために、この伝説は残されたのか。

 それら全てを解き明かすには、いつしか用意された『魔物』達の狂宴に生き残るしかない。

 アイロギィ・スタンクフとともに、勝ち続けるしかない。

 それがこの世界にやって来た私の儚く拙い、しかしそれでもかけ替えのない望みだ。

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