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たとえ我が願いで世界が滅びようとも  作者: pu-
第二章 魔人が生まれた時、青年は道を進む〈下〉
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6.新たなる仲間達(変な奴)

 寸法と受術耐性を測ったあと、宗太とソラノアは最後の予定に足を運ぶ。

 魔偽術(マギス)の個人耐久力である受術耐性を測るのは、漠然と想像していた方法とは異なり、いたってシンプルかつ短時間で終わった。

 なんとなく、CTスキャンのように全身をくまなく調べるのかと思っていたのだが、星座が刻まれた棒――測定用の魔偽甲(マギカ)を約一分握り続けただけで終了した。判定結果は明日になったら分かるとのこと。

 その時のリーリカネットは確かに真面目に測ってはいた。いたが、師匠がいないせいなのか終始テンションが高かった。


 そして、今向かっている最後の予定は、〝魔剣〟奪取の作戦に参加者達との顔合わせ。

 なのだが……


「人、いるの?」


 待ち合わせ場所である騎士団・北門訓練所。

 ここも当然ながら【千星騎士団】管轄の地である。

 ただ、訓練所内の明かりはすでに消え、周辺を警備する人間が数名いるだけ。ソラノアが数名の名前を挙げるが、もう宿舎へ戻っていると返るだけ。声をかけた人物はこちらの関係者ではないのだろう。彼女の態度もよそよそしい。

 一体、何が起こっているのか。

 最悪なのは、【凶星王の末裔】の関係者とバレ、かつ何かしらの尋問を受けていること。

 できるだけ警備や他の人間の視界に入らないところで、宗太とソラノアはこれからどうすべきか相談する。

 ――と、


「悪い! 寝てた!」


 なんて駆け寄ってくる、宗太と同年代くらいの青年。遠くからで判断しにくいが、身長も体格も同じくらいか。

 二人の目の前まで来ると、訓練によってその体躯が引き締められていることが見える。


「ジンクさんだけですか……?」

「えっ!? ソラノアなのか!? どうして!? というか……その男は……?」


 ソラノアがこうして、ソラノアとして生きていることに驚いているのだろう。

 宗太は彼がすぐに状況を呑み込めるように、簡潔に説明する。


「彼氏です」

「〝魔人〟の力を持ったユキシロ・ソウタさんです」

「そうか。ソラノアは〝魔人〟にはならなかったのか」


 安堵するジンクだが、ソラノアにはどこか陰りが窺えた。

 すると、ジンクは宗太の肩をやや強引に組んで来る。


「俺はジンク・セダー。お前の仲間だ」

「押しつけがましいな」

「構うもんか。むしろ、ライバルだとさえ思ってる」

「暑苦しいな」


 空気が読めないのか。読もうとしないのか。それとも察することのできない馬鹿なのかは分からないが、半眼で睨み続ける宗太の鬱陶しいという心の内を全く分かっていない。

 なんとなく、ジンクの雰囲気に宗太の頭の中で『今どきの都会の若者』に当て嵌めた。ないしは、俗っぽい言い方をすれば『リア充』か。


「それで、他の方は?」

「訓練を早めに切り上げたから、もう宿舎か適当にふらついてることだろうよ」

「予定は聞いていたんですよね?」

「だから、俺が残ってんだよ――くじでハズレ引いた俺がな。みんなソラノアが〝魔人〟になると思ってたからさ。俺もだけど、覚悟ができてなかったんだ。最悪、怒りをぶつけちまいかねなかった」


 あくまでも予想だが、だから訓練が早めに終わってしまったのだろう。

 身の入らない訓練など危険なだけだろうから。


「だけど、杞憂だったな! よかったよ、本当に――もうあれだな! 今日はバラけちまっから、明日はパーティーだ!」

「それはやめた方がいいんじゃないのか?」宗太はやや表情を陰らせながら、「儀式は失敗したんだ。その結果がこの状況だ」

「だからなんだってんだよ!? ソラノアがこうして、いつものようにいることを祝わないでどうする!?」

「いや、だからさ……」


 こちらの思惟をまるで気づいていないジンクに、宗太はどうソラノアの傷口を広げず、婉曲的に伝えさせるか考えを巡らせる。

 と、ソラノアが宗太の横に立つ。


「ソウタさん。ありがとうございます。私は大丈夫ですから――それに私のことでお祝いをしてくれているのに、無下にはできませんよ」

「そうそう! 失敗がなんだ! 次に活かせばいい話だろ!?」

「まぁ、ソラノアがそう言うなら」


 腑に落ちないが、当人が良しとしたことを頑なに否定するのも気が引ける。


「じゃあ、そん時に他の仲間を紹介してやるからよ!――よっし! 張り切るぞおおお!」

「――って、顔合わせはどうするんですか!?」


 なんて馬鹿でかい声を出して走り去るジンクに、ソラノアが慌てて引き留めようとしたがもう手遅れだった。

 ソラノアは深い溜め息を一つ吐き、「顔合わせは私のパーティーの時になるみたいですね」と、こちらに困り顔を向ける。

 宗太も釣られるように同じ顔を浮かべ、「そうみたいだね」と返した。

 とっくに姿の見えなくなったジンク・セダー。やや空回りしているようにも見えたが、ソラノアの無事が嬉しいのだろう。宗太は『体育会系で馬鹿』とカデコリーを変更しておいた。


「仲間、ね」


 遠ざかっていくジンクの背に思わず口にすると、ソラノアが暗い顔をして訊いてきた。


「……嫌ですか?」

「そんなことないさ。まぁ、ちょっとこそばゆくはあるけど」


 頬を掻きながら、宗太は苦笑する。

 友達は少ないながらもおり、仕事仲間だっている。

 だが、面と向かって仲間だと言われるのは、慣れていないのもあってどこか恥ずかしい。


「まぁ、〝魔人〟様よりはよっぽどいいね。様づけなんかよりもさ」

「ソウタさんって、性格悪いですよね?」

「ソラノアが自意識過剰なだけじゃない?」


 なんて意地悪く言うと、ソラノアはそっぽ向いて拗ねた。実に可愛らしい。

 そんな彼女を横目に、宗太は思う。

 たった数時間で、新しい人間関係ができあがっていくことに戸惑いこそあるものの、そう悪い気はしない。そんな風に思えた。

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