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たとえ我が願いで世界が滅びようとも  作者: pu-
第二章 魔人が生まれた時、青年は道を進む〈下〉
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5.新たなる仲間達(変な子)

 次に向かったのは武具なども販売する鍛冶屋。これはテッジエッタが受けていた予定だ。あの時手渡した紙は予定表のようだった。

〝魔人〟の力に合わせた魔偽術(マギス)が施された武具――そういった道具を魔偽甲(マギカ)と呼ぶらしい――を調整するために向かっている。


 本来ならサイズはソラノアのままだったので、受術耐性という魔偽術(マギス)の耐性を測るだけで終わるはずだった。

 しかし、その予定を変更し、宗太のサイズに合わせなければいけない。そのため、既存のものと合えばすぐにでも用意できるが、なければ武具の調達に時間がかかるとのこと。最悪、魔偽甲(マギカ)ではなく普通の防具になるかもしれない。


 街の中央へとしばらく歩き、工場区のような地域に目的の鍛冶屋はあった。

 中に入って真っ先に目に入ったのは、商品の武具や道具などではなく、店内中央にて甲高い奇声を上げ(好意的に捉えれば歌)、謎の激しい動き(拡大解釈すれば踊り)をする小柄な少女だった。

 それこそ異世界が広がるその光景は、不気味すらある。

 ソラノアも若干顔を引きつらせながら、声をかける。


「あのリーリカネット」

「おっ!? なんか普通っぽいじゃん、ソラノア! と――?」


 振り返る少女の視線が宗太へと流れるに連れて、首も傾く。

 ほぼ真横に来たところで、ハッと何かを察した。


「おっとこ♪ おっとこ♪ おっとこ連れ~♪ ソラノアついに連れ込んだぁ~♪」


 なんて歌い始め、くるくる回り始める少女に、宗太は思わずソラノアに訊く。


「ここの女性はあれか? 個性的じゃないとダメなの?」

「……私もそれに含まれているんですか?」

「もちろん。ナイスバディという絶対的個性が――うん。セクハラは止めるから、そのトンカチをじっと見つめ続けるのはやめよう? うん。軽くスイングとかしなくていいからさ。そんな古典的な方法で記憶は飛ばないと思うよ?」


 無言で続けるソラノアにやや恐怖していると、リーリカネットが腰に左手を当て、右手人差し指をビッシと天を指してポーズを決めて止まった。


「ヘイ! で、このラヴリーなリーリカネットちゃんに何か用事かい? ねぇならむりくり作りやがれってんだ! 気ぃ使え!」

「あのですね、リーリカネット……」

「おっと! ちゃんとラヴリーをつけねぇか、このすっとこどっこいガール! それにちゃんと『ヴ』の部分は下唇噛めよ?」

「なんつーかハイテンションだな」

「そりゃ、師匠がいねぇからね! 口うるさいのがいない代わりに、このリーリカネットちゃんが――あっ、違った。このラヴリーなリーリカネットちゃんが喚いてやってんだぜ! うぜぇだろ!?」

「ああ。心底うぜぇな」

「だろ!? アタシだったら、こんなやつは絶対にあっちの炉の中にケツをぶち込んでやるけどな!」


 扉の隙間から僅かに覗くことができる熱のこもっていない炉を指さし、高笑いするリーリカネット。

 よほどおかしいのか、大笑いしすぎてやかましく咳き込み、うるさいくらいにむせる始末。


「普段からこんな感じなの?」

「ここの主人のレイグオットさんがいないと、こんな変なテンションになるんです――作業中は凄く真面目なんですよ?」


 このぶっ飛び少女がどう真面目になるのか、楽しみであると同時に不安でもある。


「で、この特徴なし無能確約機能不全チキン野郎はなんなの?」

「えっと……」

「まぁ、今のところはそれで話を進めておいていいよ。大丈夫。泣かないから」


 戸惑うソラノアに、若干胸の奥に痛みを覚える宗太が助け舟を出しておく。


「この方は〝魔人〟の力を持ったユキシロ・ソウタさんです。『魔物』の力の所持者が変わったので、最終調整ではなく魔偽甲(マギカ)を一新しないと」

「やっぱ、ソラノアはソラノアってわけだな! だっけど、今日は師匠いねぇからな! 〝魔人〟用の魔偽甲(マギカ)に対して、このラヴリーなリーリカネットちゃんにできることは、せいぜい寸法と受術耐性を測るくらいだぜ!――というか、ソラノアが測るか? つーか、知ってるんだろ、隅々までさ? ちゃっちゃと教えねぇか!」


 ぐりぐりとリーリカネットは肘を押しつける。ソラノアの胸の部分に。宗太をにやけた笑みで見つつ。

 彼女の顔には、はっきりと書いてある。『羨ましいだろ?』と。

 しかし、宗太は思う。羨ましくはない。ただ、今すぐに代わってくれ、と。切に。


「言えよ~。減るもんじゃないだろ~? むしろこの胸、少しくらい減ってみろよ~。つーか、さらに膨らむんじゃねぇ~の~?」

「知りませんよ!」


 よっぽど鬱陶しかったのか、痛かったのか。ソラノアがリーリカネットの腕を目一杯払いのける。


「悪いな。俺が不甲斐ないばかりに」

「病気持ち?」

「早くして下さい! 次が控えてますから!」


 顔を赤くするソラノアに、リーリカネットは「そっちのチェックは病院に行ってね~」なんて残して、奥の作業部屋へと準備をしに行く。

 ソラノアは何故か宗太を睨んだが、当人は冷たい目を向けられる理由が見当たらない。

 今だって、ただ調子に乗ってリーリカネットと一緒にソラノアをからかっただけだ。


(うん。さっぱり分からないことにしておこう)


 目くじらを立てるソラノアを、宗太はなるべく視界に入れないよう心がけることにした。

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