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たとえ我が願いで世界が滅びようとも  作者: pu-
第二章 魔人が生まれた時、青年は道を進む〈下〉
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4.新たなる仲間達(変な人)

 ソラノアが最初に案内したのは、五日後に〝魔剣〟奪取に同行するノーグ・チェリオが開く戦闘術道場だった。

 ただ、宗太が想像した道場は空手や柔道、ないしはボクシングジムのような一つの大きな部屋だった。のだが、訪れた場所はパッと見、高くそびえる壁でどうなっているのかまるで分からない。

 建物へと渡る際には、大きな堀にかけられた橋を通過しなければならず、城を連想とさせた。

 中に入ると中庭――というよりも、兵が待機できるような場所――があり、そこから少し歩いて施設内へと入る。


 その施設の名前はやはりというべきか、ムーンフリーク千星戦闘術道場と【千星騎士団】の施設扱いになっていた。

 普段は閉ざされているが、施設の裏側には戦車が通れる可動式の橋もあるという。ムーンフリークから少し先の星都領の端(帝都領の近く)で、本格的な大規模訓練を行うとのこと。

 また、ソラノアが所属するムーフリーク千星技術学院との交流は多く、合同訓練・実験を頻繁にするのだと彼女は説明した。

 いくつもの部屋を通り、『チェリオ教室』と看板が掲げられた部屋に辿り着く。


 中は広く、実践を想定しているような組手や、それらとは距離を離して剣や銃のような武器を手に戦っている者達がいる。その誰もが、急所などにプロテクターが装備されたラバースーツのような服を着ていた。


「ノーグさん、すみません!」


 ソラノアのかけ声に、奥で指示していた女性がこちらを向く。

 隣にいた男性に何か告げると、駆け足でやってくる。


「ソラノアか。どうした?」


 ノーグ・チェリオは宗太よりも背が高く、訓練途中だからかポニーテールにしている。目つきはきついが、美人であるためまるで問題がない。

 むしろ、高貴さをより引き出しているともいえる。


「こちらのユキシロ・ソウタさんが訓練を受けたいと仰っているので伺いました」


 紹介され、宗太は「初めまして」と頭を下げる。


「あなたがノーグ・チェリオさんですか?」

「違う」

「んっ?」


 否定されたことに、宗太はやや間抜けな顔になる。

 どういうことか、さっぱり分からない。

 一方のこのノーグ・チェリオではないという女性は一切表情を変えない。真剣な面持ちそのものだ。


「というか、お前はなんだ?」

「えっと、〝魔人〟の力を持った者なんですけど……儀式の場にいましたよね?」

「ああ。いた。見ていなかったのか? まぁいい。私がノーグ・チェリオだ」

「ん? どういうことですか?」

「冗談だ。初対面の相手には緊張されないよう、常に気を配っている」


 しかし、表情はまるで変わらない。

 つまりは真顔で冗談を口にしたということなのだろう。全く伝わらない冗談を。


「ソラノアにも彼氏というものができたのだな。実に青春だ。青春全力感が出ているな。青春というものはいまいち分からないが、色恋沙汰は大体青春だ」

「あの……? あの状況は見ていましたよね?」

「当り前だろう? どうした、ソラノア? まさか、記憶が欠落しているのか?」


 やはり面持ちに変化はなく、淡々と訊ねる。


「このように顔馴染みにも冗談を言い、常に気を配る。それが長を務める者の義務だ。君も〝魔人〟などという大きな力を手にしたのだ。学んでおけ」

「参考にはしておきます」


 とりあえずそう言っておき、宗太は改めて目的を口にする。


「ノーグさん。俺に戦い方を教えて下さい」

「する必要もないだろう? お前には〝魔人〟の力などという、理不尽なものを持っているのだから」

「だからです。もしなんらかの方法で〝魔人〟の力を封じられたら、俺には何もありません。それに〝魔剣〟も同じ『魔物』なら、〝魔人〟の力がどこまで通じるか分かりませんし」

「だが、四日そこらで身につくものなど実戦では役に立たないぞ?」

「それでも、やらないよりはマシだと思います。最悪、この身体はイメージ通りに動いてくれますので、戦い方さえ記憶すればある程度は戦えるようになるかと」

「頭でっかちで戦えるものではない。実戦の感覚は必須だ」


 ノーグが否定的なことに、納得はできる。

 経験者だからこそ、付け焼刃がいかに危険かということを熟知しているのだろう。

 しかし、そうですかと諦めるわけにはいかない。

 宗太は無理を押し通すため、確固たる決意の証明を口にする。


「なら実戦で覚えます。なんだったら、残り四日で【凶星王の末裔】と敵対しているやつらと片っ端から戦っても構いません」

「ソウタさん!?」

「心配してくれてありがとう。でも、それくらいの覚悟がないと、これから先、俺は生き残れない。これは何より、俺のためにやることなんだ」


 不安を少しでも拭えるよう、宗太は柔らかく微笑む。

 だが、その声にはできる限り意志を込めるように意識していた。

 二人の様子を眺めていたノーグは腕を組み、数秒の沈黙のあと「うむ」と何かを決めた。


「そんなことをしなくてもいい。君の誠意と意志は分かった。教えよう。どちらにせよ、君がどこまで戦えるのか見る必要があるしな」


 もう少し話がもつれるかと思っていたのだが、意外にもあっさり同意してくれたことに、宗太はちょっとだけ面を食らった。

 他者の意見を聞き、判断する。確かに、このノーグ・チェリオという女性は、部下を率いることに長けているのかもしれない。


「よし。善は急げだ。今から見てやろう」

「いえ。今日はソラノアとデートなんで」

「それもういいですから!」


 きっぱりと拒否する宗太に、ソラノアが口を挟む。


「なるほどな。それなら仕方ないな」

「ノーグさんまでっ!?」

「何を驚いている? 顔馴染みの青春を邪魔しないのも長としての役割だ」

「上役としては当然ですね。じゃあ、明日伺います」

「ああ。明日待っている」

「今日でいいんじゃないですか?」


 そんなソラノアの意見は無視され、宗太とノーグは手を握り、約束を誓った。

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