家出少年、その五
慌ててた僕が取った行動は、魔法薬をその眼に吹き付ける事でした。
吹き掛けたのはアミスティル奥様が作った魔物避けの効果のある香水、マジ痛そうにもがいてた。
超苦しそうなんだけど、何入ってるんだろう? これ。
土蜘蛛は暫くもがいた後に僕を押し退けて洞窟を飛び出して行った、岩壁に背中をぶつけてマジ痛い。
香水って実はこう使うのが正しいんじゃね? って思わせる様な出来事でした。
やっぱり眼についたら沁みるどころの話じゃないのかな?
魔物避けの効果もあるから、沁みるだけじゃ終わってないのかも。
雨で香水落ちると良いな、土蜘蛛は基本綺麗な山に住む魔物だし、基本は人を襲わない臆病な種類だからな。
こうやって僕みたいに縄張りに侵入すれば襲われるけどね。
僕の場合は自業自得だからな……、痛い……。
ちょっと奥に入れば土蜘蛛が居やすいように掘ったのか、少しだけ広くなってる。
巣の奥は柔らかな土が積んであって封じられてる様に見えるけど、よく見れば天上までは積まれて無いから通り抜けは可能そうだ。
糸は微かに甘い匂いがする、花やフルーツの様な爽やかな甘い匂いがするからこの土蜘蛛はあんまり肉を食べてないのかもね。
土蜘蛛は雑食だから、餌が取れない場合は花やフルーツで代用するらしい。
久しぶりの動物性蛋白質を食べられるチャンスだったのに、邪魔しちゃったみたい。
なんか悪いな、巣にくっ付いてるアレは見なかった事にしてエミュニア遺跡に行こうか。
土蜘蛛が積んだと思われる土の山を登っていれば、ギャーギャー騒ぐ声が聞こえる。
酷いとか、外道とか、鬼とか、なんか騒いでるけど……僕には関係無し。
というか土蜘蛛視点から考えれば、勝手に縄張り荒らされて餌まで逃がされた方が外道でしょ。
僕はね、ちょっと頭のおかしい動物愛護団体とは違うの。
食物連鎖に置いて君みたいな餌となる小動物は必要だと思ってるの、むしろ土蜘蛛は立派な山なら一匹くらいは必要な存在だから。
五匹、六匹くらい居たら異常繁殖かも知れないけど、一、二匹なら全然問題なし。
土蜘蛛は縄張りさえ荒らさなければ人間に害をなさないし、害虫や害獣を食べて減らしてくれるから人間にとって益虫だから。
そんなことを考えてれば頭に衝撃が……、いてぇ。
「もー、なんなの! せっかくなんだから助けてよ、ここまでしたんだからさー!」
どうやら自力で抜け出したらしい、じゃあ僕の助けなんていらないじゃん。
だいたい助ける予定なんて無かったから、頭に引っ付くんじゃねぇ。
頭に引っ付いてたやつを引き剥がして見れば、黒とピンク……それに赤色等の目に痛い色合いの蝙蝠型の魔物だった。
顔はちょっと可愛いけど、キモいと言うか目に痛い。
なんでそんなにピンクなんだよ、ありえねぇ。
目立つし……、弱い魔物なら隠密して生きろよ。
投げ捨てればその魔物は騒ぐ騒ぐ、……何なんだよ、抜けられたんなら早く逃げれば良いじゃん。
でもあんまり関わり合いになりたくないから、土の山を登りきる。
土の山の所為で入口からの光が届かないみたいで、めっちゃ暗い。
そう言えば灯りを持ってきてなかったな……、きっちり用意してたつもりなんだけど。
しょうがない……、さっき拾った赤い魔石を取り出して魔力を注ぎ込めば反応して赤く光る。
ちょっと頼りない光だけど、足元が見えれば問題ないかな。
「そんな物をもって歩いたら危なくないですかー? 転んだらめっちゃ痛くないですかー?」
「なんなの……お前、鬱陶しいんだけど」
「えーだってほら、やっぱり罠に嵌った動物を助けるのは恩返しフラグですよ! お兄さんは恩返しをしないといけないんですよ!」
「フラグって……、恩を作っておくのは面倒臭いからその恩を忘れるっていう恩返しで良いよ」
「素晴らしい切り返しだね、でも私的にーそれは面白くないから却下の方針で~お願いします~」
うっぜぇ、何こいつ。なんなの。
足場が悪いし、暗いから走って逃げる事も出来ないし……面倒臭い。
そう思ってたら手元の魔石をそいつに奪われた!
最悪、何こいつ……光り物が好きなタイプの動物?
見上げればかなり眩しく光る、意外と魔力を保有してる魔物なのか?
「これで明るくなったね、凄いでしょ? 良いでしょ? これは契約フラグですよ!」
「お断りします、不透明で信用の置けない魔物となんて契約できません」
僕の家の知識を絶対に流失させないなんて、言えないし。
それだったらやっぱりファントムメイドみたいな喋れない魔物に呪いをかけて契約するかな。
灯りを持ってくれるのはありがたいのでそこだけ利用させてもらおうかな、その赤い魔石はもう上げるからさ。
洞窟内だけの付き合いだ、ここから出たら走って逃げよう。
そこまで拒絶したらさすがに諦めてくれる……よね?
――家出少年山吹陸斗、その五




