家出少年、その二
なんかよく分かんないから、適当な場所で良いやと思ってサインしたら未開拓っぽい港町に来てしまったわけですけども……どうしよう?
うわー……なんて言うか、すごいね。
船の中で寝てた僕は能天気、素晴らしい。
荷物とか盗まれてなくってよかったよ、まあ僕の荷物はたぶん邪な心を持って触った瞬間に指がヤバイ。
そういう魔法を養父が掛けてたし。
一応は後継ぎなのだから気を付けなさい、って言ってたし。
地図開いたけどここ何処だよ、マジで。プチ迷子だわ。
だってさー、藁葺き屋根だよ? 藁葺きなのかよく分かんないけど、とにかくそういう感じの屋根だよ?
未開拓は言い過ぎだけど、まだ文明開化してないよ。
道もちゃんと整備されてないし、なんか冒険してるって感じしてきた感じですけど。
なんか漁師さんいるから、ちょっと聞いてみよう。
言葉は統一されてるって聞いたから……大丈夫だと信じたい。
「すみません……、この村にギルドはありますか?」
「あぁ? ギルド? 村の中心部にありゃーよ」
「そうですか、どうもありがとうございます」
ギルドはあるのか、本当にギルドは何処にでもあるな。
まあギルドの本来の目的は未開拓の地とかを開拓して調査する事らしいし、未開拓っぽいところの方が充実してんのかな。
モンスターの調査や遺跡の調査もやってんだっけ?
とりあえずギルドは何でもやってるからな、別名何でも屋だからな。
ギルドを作ったのは精霊のテスタト・ミモザ・オーカーとディーテ・カーマインとフェクタ・カクタスと愉快な下僕たちだって言うけど本当なのかな。
天使や妖精とか魔人とかが創設に関わってるとか聞いた、すごい昔の話らしいけど。
魔装具戦争前にあった魔族狩りのもっと前からあるらしいから、かなり古いね。
つーか魔装具作る原因になったのは無差別な魔族狩りだったから、結果的に戦争の原因って人間じゃね? どの世界でも人間ってろくなことしねーよなー、人間はやはり愚かな生き物だったのだ。
人間は死ぬべきなんだな、まあ僕はきっちり寿命を全うするけど。
……でもたしか魔族狩りの原因って魔人が人間の住処を蹂躙した所為じゃなかったっけ? 魔法戦争が起こって魔科学戦争が来て魔族狩りに変わってーの魔装具戦争か、これは無限ループ入りました。
今は平和な時期なんだな、ずっと平和だと僕は嬉しいんだけど。
そんなくだらない事を考えてればギルドに着いた。
周りと比べるとめっちゃ立派な建物だ。
中に入ると人は少ない、受付に一人しか居ない。
クレメニスのギルドはめっちゃ人で賑わってるけど、やっぱり過疎ってるのかな。
というか受付に居る人にめっちゃ見覚えがある、誰だっけ?
まあ、良いや……誰でも。
「……おや? こんな辺鄙なところにドルガー家の次期当主様がいらっしゃるなんて、私は白昼夢でも見てるのかな?」
「ここって何大陸のなんて名前の町ですか」
「……えっと、迷子かな?」
「家出ですけど、適当にサインして船乗ったら思った以上に過疎ってるとこに来て驚いてます」
「私も驚いたよ、事前確認は私もしない主義だけど君の様な未来有る若者がするのはいただけないね?」
あー……思い出したけど、僕の知り合いは白い方じゃなくって黒い方だ。
黒いのも僕も猫カフェ常連なんだよね、最近黒いの見てないな。
それにしても相変わらず黒白双子は怪しい格好してるな、いつか自警団に捕まるんじゃね。
「ここはティーヴァリという漁村だよ、大陸名はガルガニア。近くにはエミュニア遺跡があるね」
「ガルガニア……、禁酒時代に酒を製造してた町の名前ですよね?」
「そう、それがそのまま大陸名になったという訳だね。エミュニア遺跡は神事のお酒を造る為の場所でもあり、神様を祭っていた場所だからね。大酒飲みの神が居たらしい……せっかくだから観光してきたら良いと思うよ?」
「まあ、まだ調査途中だから危険かもしれないけどね」ってへらへら笑って白いのは言った。
危険な場所に行くように勧めるってどんだけだし。
というか豪遊しようと思ったのにこんな場所じゃ何も出来ないな。
むしろ何もしたくないな、クロドジェニアに行ってカジノやってみたいな……。
これってラスベガス行ってカジノやりたい、みたいな発想だよな。
やっぱり僕は現実世界の人間だな、うん。
でもやっぱり僕は今反抗期の家出少年な訳だし、ちょっと危険な場所にも行ってみても良いかも知れない。
いざとなったら魔法薬散布してしまえば良いのか。
燃やしたり、溶かしたり、爆発させたり。
この世界で一番威力が高くて有効な攻撃方法は瓶詰の魔法薬を投げ付ける事だからな。
魔法薬学士が最強職ですよ、ただ材料費が高いけどね。
回復も出来て状態異常も出来て、攻撃力も高いんだからね。
なんかゲームしたくなってきた。
でもその所為で魔法薬は管理が大変らしい、必要以上に知識を流失させないようにドルガー家が管理してるらしいよ。
魔法薬の知識を独占してるんだよ、ズルいなドルガー家、賢いなドルガー家。
だから重宝されてるわけだ。
戦争になったらどこにも所属はしないそうだけど、周りの人は怖いだろうな。
ファントムメイド達はドルガー家に縛り付けられてるんだな、かわいそうだね。
こんな辺鄙なとこに来て何もしないって言うのは勿体無いから、エミュニア遺跡……行ってみようかな。
それに勉強になるかもしれないしね。
エミュニア遺跡……、名前がちょっと可愛い。
――家出少年山吹陸斗、その二




