しーちゃんとイズマさん
仕事の都合で古都ミアーティスに来ていたイズマさん、早々に仕事を終えて帰ろうとすれば頭の上の緑色に光る手のひらサイズな妖精が騒ぎ出します。
どうやら彼はアイスクリームが食べたいらしく、それはもう鬱陶しく騒ぎます。
「あいしゅあいしゅあいしゅが食べたい! ずっちんあいしゅ買ってー! 買ってってー! ミルミンが良いのーミルミン買ってぇ、ミルミンミルミンミルミンミルミンミルミルミルミルミルミルミルミルミルミルミルミルミルミルミル……」
「うっざ」
子供にしか見えない妖精なので大人の視線は気になりませんが、子供の視線が痛いほどに突き刺さります。
頭の上でじたばたされるので髪型が乱れてしまいます、そして何より耳元で叫ぶのでうるさいです。
今イズマさんはとても後悔していました、妖精では無く……無理矢理にでも悪魔と契約していれば良かったと、ですがそれは後の祭りというものでした。
アイスクリームショップを覗いてみれば、色々な種類のアイスクリームがならんでいます。
流石はアイスクリームを売りにしているだけはあります、カクテルフレーバーも並んでいました。
「モヒートで」
「ミルクミントが良いって妖精しゃん言ったの! なんでミルミンじゃないの! ミルミルミルミルミルミルミル……」
子供たちの視線が突き刺さりますが、もう気になりません。諦めました。
妖精も諦めたのか、騒がずにアイスを食べていました。
「なかなかしゃわやかである」との事なので、どうやらミントが入っていれば彼は何でも良かったようです。
嫌がらせのつもりだったイズマさん的には、あまり面白い感想ではありません。
その体のどこに全部入ったのか、全部食べ終えた妖精はイズマさんにわがままを言います。
「こにょへんにー、ちーちーぷどらごーんがいるらしぃーにょ。妖精しゃん見たいなぁ!」
「勝手に見てきて良いぞ」
「ずっちんも見たいよにぇ? 見たいよにぇ! ちーちーぷどらごーんおたかいでっ!」
長々とシーシープドラゴンについて語られます、うざいです。
「聖女しゃまにちーちーぷどらごーんを献上ちないとしぇかいが崩壊ちちゃうじぇ」と泣き真似をしながら言われ、仕方なく探しに出る事にしました。
闇雲に草原地帯を歩いていましたが、案外早々に見つかりました。
群れから離れてしまったのか、それとも協調性がなかったのでしょうか、そのシーシープドラゴンは一匹で草を貪っていました。
「ちょーもっふもふやんけー」
「もふもふー! だってちーちーぷどらごん、どらごんだからね!」
妖精と同じ雰囲気を感じます、ですが聖女が連れていたシーシープドラゴンもこんな感じだったような気がします。
シーシープドラゴンは飛びまわる妖精を追い掛けてくるくる回っていました、まるで尻尾を追い掛ける犬のようです。
尻尾を追い掛ける犬のようだと言えば可愛らしいですが、どうやら妖精はシーシープドラゴンに餌だと思われているように見えます。
イズマさんは飛びまわる妖精を捕まえます、助けてあげたのでしょうか?
「ほーら、取ってこいよ」
「にゃあああああああ! ずっちんのドメスティックバイオレンシュー!」
「きゃー! どめすてぃっくばいおれんちゅー!」
嬉しそうに投げられた妖精を追って、シーシープドラゴンは走って行きます。
シーシープドラゴンは妖精を咥えて戻ってきましたが、よだれでべっとべとなので触りたくありません。
「……そうだな、ドラゴン使いのドラゴンにしてやるよ」
「えー! ほんとー!?」
こうして、しーちゃんはイズマさんに確保されたのでした。
おしまい。
――しーちゃんとイズマさんのお話




