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アヤメちゃんの短編日記  作者: 深光
魔法日記以前の話
11/11

家出少年、その七

 集落跡地を抜けて、少し歩けばエミュニア遺跡はあった。

 外壁は所々崩れて蔦がからんでるけど、中々綺麗な状態を保ってる。

 本当は長い階段があったんだろうけど、崩れちゃってて階段の機能を保ててない。

 でも上れない事はなさそう、足に負担がかかりそうだけど。

 というかそろそろ日が暮れそうだ、やばいなー野宿したくないって思ってたのになー。

 でも今から戻ったら山の中で夜を迎える事になるから、それは危険すぎる。

 入口は壊れた扉を無理にこじ開けた様な、ちょっと壊されたような感じになってる。

 これは遺跡荒らしの仕業なのか……それともギルドの調査員の仕業なのか……。

 扉の破片をよけながら中に入れば空気が変わるのが分かる、遺跡内は甘い匂いが染み付いている。

 ちょっと甘さに酔いそうだな……、独特な蜂蜜の匂いがする。

 嫌いじゃないけど、ここまで匂いが漂ってると辛いかも。

 天上に開いた穴から光が射し込んでいて、遺跡内は幻想的な雰囲気だ。

 中はいたってシンプルで、中央部分は祈りを捧げる為の場所なのか高くなっている。

 上る為の階段は崩れているから、簡単には上れなさそうだね。

 高くなっている場所には大きな紅い結晶があり、その中には大きなベッコウバチが封じられていた。

 まるで虫入りのコハクみたいだね。

 祭壇の向こうには扉が見える、昔は木の扉でもついていたのかもしれないが今は何もない。

 奥は広くなっており目の前には大きな階段がある、そして広間は小部屋に繋がる扉が多くある。

 此処は居住区かな、階段の下は蜂蜜酒を発酵させる場所なんかがあるのかも。

 なんかひんやりとした空気が流れ込んで来るし。

 部屋を見ていると綺麗なまま本棚が残っていた、中の本も綺麗に残っている。

 近付いて手に取ってみると古言語で文字が書かれている、クソ……。

 だが僕を侮るでない、この鞄の中にはな……言語辞書と古言語辞典と薬草事典と動物魔物事典と新生魔法百科事典が入ってんだぞ!

 言っておくけど薬草事典以外は僕が用意したわけじゃなくて、ファントムメイドさんが『坊ちゃまは幻想世界初心者ですから……、これくらいは持って行ってくださいませ、命に関わる問題でございますから』って無理矢理に鞄に入れたやつ。

 床に本と辞典を広げて解読していると、なんかついて来てた蝙蝠の魔物が暇だーって騒いでた。

 暫くしたら灯りの魔石を置いてどっか行っちゃったみたいで静かになったけど。


 ――うん、魔法蜂の蜂蜜について詳しく書かれてた。

 滋養強壮に良くて、通常の蜂蜜には無い効果を与えてくれるって書いてあった。

 ちょっと僕の解読力ではどんな効果を与えてくれるのか、よく分かんなかったです。

 体を温める、って書いてあった。

 あと、ここら辺の魔法蜂はクァンナヴァーニスって言う花から蜜を取るらしい。

 クァンナヴァーニスってどんな花なのかな、薬草事典にはそんな名前の薬草は無かったけど。

 葉にも少し薬としての効果があるけど、クァンナヴァーニスは蜜が一番の薬になるらしい。

 でも蜜はそのまま摂取すると体に毒らしい、でも魔法蜂が蜂蜜にしてくれたものは平気なんだってさ。

 クァンナヴァーニスの花の蜂蜜で作ったお酒に、クァンナヴァーニスの真っ赤な実を入れると風邪なんてすぐに治っちゃうらしい。

 赤い実がちょっと辛いけど、お酒は甘くて辛い不思議な味で面白いらしい。

 もしかしてクァンナヴァーニスって……、クアニ・カヴァニ(仮名)じゃね?

 でもまだ断定できないし、その可能性は頭に置いとこう。

 あと、花は食べないようにしなきゃ。

 というか没頭してて気が付かなかったけど、だいぶ暗くなっちゃってるな。

 魔石の灯りのおかげで気が付かなかったけど、……アイツにはちょっと感謝だな。

 この本をカバンに入れたい所だけどー、そんな事したらギルドに怒られるどころの話じゃないから止めとこう。

 下手したら牢獄が僕の家になってしまうからな。

 クアニ・カヴァニの為にこれも買取しなきゃいけないのかよ、順調に僕の財産が減っていくんですけど。

 でも成果を出せば倍になるから、頑張って研究を進めたいと思います。

 元の場所に戻す……、あぁ他にもいっぱい本があるよ。

 きっと蜂蜜酒とか土蜘蛛とかベッコウバチについて書かれた物がいっぱいなんだろうな。

 読みたいところだけど、もう辞典と睨めっこしながら本を読むのは疲れたよ。

 あと、僕は一日中勉強するのは無理なタイプだし。

 遺跡内で野宿ってして良いのかな、ギルドの人に見つかったら怒られちゃうかな。

 というか水も底を着きそう、明日になったら村に帰って水を調達しなきゃ。

 帰るという選択肢はまだ無いです。

 きちんと後片付けすれば大丈夫だろって事で、鞄の中から鍋とか取り出します。

 鞄って言ってるけどスポーツバッグなんだけどね、中は無限大。

 というか魔法って本当にどうなってんだろ、もしかして鞄の中で眠れるんじゃね? というか僕はこんな大量に入ってる鞄の中からどうやって目当ての物を取ってんの? 欲しい物を頭に思い浮かべれば奥の方に入ってるって、どんな原理だよ。

 普通に開けた感じだと、タオルしか見えないし。

 だがしかし、この魔法のバッグは緑色の魔法が扱えない人間には使うのが難しい代物である。

 記憶力が試されるからね、中に入っている物を明確にイメージできないと駄目らしい。

 僕は緑色の魔法は少しなら使えるから、全然大丈夫だけどね。

 そんな事を考えながらジャガイモの様なケニケニの皮を剥いてると、あの蝙蝠の魔物は戻ってきた。

 なんか、魚持ってた。


「食べ盛りなんだからー、いっぱい食べないといけないですよ!」

「一匹でいっぱいとは言わないから」

「だって持てないんだもん」


 ついでに水汲んできてって、バケツを渡したら嫌そうな声を上げたけど取っ手を足で掴んで飛んで行った。

 なかなか使える……いや、絆されたら駄目だ。

 絶対に使い魔なんていらないから!

 というかこの魚は本当に食べられんのかな、なんとなく大丈夫な気がするけど。


「うぎぃ……魔法使ってガン見しなくても食べられるのを捕まえたから」

「バケツはそこらへん置いといて」

「お兄さんに感謝の一言もないのか、最近の若者はダメダメだね」

「……ドウモアリガトウゴザイマシタ」


 火に掛けてた鍋の中にケニケニ投入、塩ゆでして味見します。

 ちなみに鍋の中の水は飲料水ね、バケツの中身は洗う用だから。

 そう言えば、この蝙蝠ってなんか食べんのかな。

 アイツの言うとおり食べ盛りだから僕的には分け与えたくないんだけどな。


「私は食べないよ、だって食べる必要ないし? お菓子しか食べたことないし」

「なにそれ勿体無いねー、人生の七割は損してるんじゃね?」

「えっ、七割も? 七割もお兄さん損してるの?」


 どうしよう、って蝙蝠みたいなのは悩んでた。

 僕なんて幻想世界に来たばっかりの時は食べる事しか楽しみなかったんだぞ。

 今は魔法薬作ったりしてる時が楽しいけど。


「というかなんでお菓子は食べたことあるの?」

「お兄さんの大事なお友達がくれたから」

「それってもしかしてその大事なお友達は食べる生き物なんだ? 大事なお友達と美味しいを共有できないんじゃね?」

「……そう言われると、人生の十割は損してる気がしてきた」

「お前の人生は大事なお友達に占拠されてんのかよ」

「むしろお兄さんの人生は大事なお友達に捧げる為の物だよ」


 なんでその大事なお友達の使い魔にならないんだよ。

 訳分かんないって言ったら、大事なお友達は家族だからそういうのは違うらしい。

 ふーん、家族ねぇ。

 塩ゆでしたケニケニを食べたけど本当にジャガイモだわ、これ。

 試しに蝙蝠に上げてみたけど、あんまり味ないって不評だった。

 とりあえず魚のうろこを取って、塩で洗って水で落としてから頭と内臓を取るよ。

 頭と煮干しで出汁を取ってる間に皮とかをゴミ袋に移すよ、魔法使えば超楽だね。

 魚はぶつ切りにした、骨取るのが面倒だから。

 煮干しとか取り出してケニケニ入れて、塩を入れて柔らかくなるまで煮る。

 これマジで美味しいのかな、ちょっと自信無いけど。

 途中で魚のぶつ切りともう一回アラも入れる、持って来たクアニ・カヴァニの赤い実も潰して入れます。

 煮立ったら味見。


「まあ……こんなもんかな」


 ちょっとピリ辛だな、魚が意外と美味しい。

 塩で味を整えたら完成です、意外と美味いな。民族料理っぽくていい感じじゃない。

 器を取り出していると、蝙蝠が興味深そうに近寄ってきた。


「お兄さんにもちょっとちょうだい」

「ちょっとだけだからな」


 とりあえず、魚のアラのところをあげるよ。

 食べるのが面倒だからな、一番美味しい部分だけどね。

 感想はプルプルしてるところが面白い、だそうな。

 全部綺麗にした後に鍋で潰したクアニ・カヴァニの実と、アミスティル奥様の香水を煮てみた。

 目潰しになるかなって思って、こして冷やして瓶に詰めて蓋をして出来上がり。

 綺麗な真っ赤な透明度の高い液体になった、飾って置いてもお洒落じゃん。

 それを蝙蝠で試そうかなって思ったのに、痛覚が無いから効果ないよって言われた。

 だから自分に吹きかけてみたらすごく痛くて地獄を見た。

 決してドMとかそういう訳じゃない、いざという時使えなかったら困るから試しただけだから。


「リーディア……目が真っ赤だけど大丈夫?」

「良く見えない……」

「……えっと、治してあげようか?」

「……自分で治せるけど、どれくらいの間効果があるか計らないといけないから」

「いつもそんな事してるの?」


 してるよ、だって使えなければ意味無いじゃん。

 寝る必要が無いから、コウモリが寝ずの番をしてくれるらしい。

 そうか、ありがとう。

 でも使い魔にはしないから……。





 ――家出少年山吹陸斗、その七

作者は書いててすごい楽しいけど、もしかしたら読者には面白くないかも。

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