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Still,  作者: ラヴィ太
1章
2/20

第1話 ~きっと夢~

ふと思いました。タイトル「Still,」ってカンマ付いてるじゃないですか。こちらはタイプミスだと思っている方がいらっしゃるのでは・・・?なんて。カンマ含めてタイトルですので!

こら、そこ!どーでも良いとか言わない!笑

 明はふわふわと宙に漂うような無重力感を感じた。

 辺りは薄暗く、上下左右何も無い。ただ浮いているだけの感覚。

 彼は身体を動かそうと試みたが、動けているのかさえ分からなかった。神経の感覚もないのか、と思った。



 そうこうしている内に前方の空間が歪んだような気がした。薄暗く自分の感覚に自信が持てなかった。

 その歪んだ空間から犬が出てきた。耳が垂れていて、胴長短足の愛らしい姿だった。黒を基調として、所々に赤茶色の毛色が顔を覗かせる。その姿からはミニチュアダックスフンドを思わせた。



 「君は」



 その犬が口を開いた。凛とした中性的な声質だった。

 一瞬驚いた明だったが、すぐに「なるほど、これは夢の中だな」と思い至った。その証拠に先ほどから動けないままの上、声も出せないようだった。



「君は、命の重さを分かってないね。」犬は呆れるような口調でそう言い放った。表情が変わらないので、口調でしか判断が出来ない。

 明は耳を塞ぎたくなった。夢の中でまで説教されるのはごめんだ、と思った。それに自分は自殺しようとしたわけではない。死ぬかもしれない場面で諦めの色を想っただけだ。人によってはそれを自殺と考えるかも知れないが。

 反論しようとしたが、やはり何も喋ることが出来なかった。



「何か言いたそうな眼をしているね。」そう言うと少し間を空けた。沈黙が降りる。犬はまたすぐに口を開いた。

「説教されるより体験した方が早いな、きっと……」

 まるで自己解決。どうあっても自分の意見は流されるのだ。明はそう思った。犬は続ける。



「人間の性には男性と女性の二つがある。君は二十数年男性として生きて、そして成人したね。でもそれでやっと半分だ。もう一つの性である女性としても生きるんだ。そうしてやっと人というモノを理解する。命の重みも少しだけ分かる。それでもほんの少しだ。そのほんの少しでもいいから、生を……性を……世を全うしようと思ってもらえると嬉しい」



 ゆっくりとした言い方で、淀み無く言い終えた。そこまでまくし立て所で、じぃと明を見た。値踏みするような観察するような不躾な視線。身を捩って避けたかったと、動かない身体で明は思う。

 犬は納得したように「うん」と一言。再び空間を歪ませて消えていった。後に残ったのは静けさだけ。

 明は言われた事を整理しようと思ったが、うまく出来なかった。それは非現実的な言葉ばかり並べられたためだった。整理しようにも、意味が良く分からなかった。



 それでも最後の言葉だけは妙に頭に残った。それは図星――とも言えよう。少なくとも自分には生を全うしよう、という思いは殆ど無かったのだから。



 明は前方から放たれる光を見た。5メートル程の距離だろうか。

 眼を凝らしてみると、それは細長い楕円形で、彼の直径を軽く飲み込むほどだった。

 そこでふと気づく。身体が動かせるのだ。浮遊感も無くなり、地に足を着いている感覚がじわじわと沸いてきた。

 景色が上下左右なにも無いのは変わらなかったが、ひとまず楕円形の輝く扉まで歩いてみる。誘われるように扉の前に着いた。まるで自分は灯りに吸い寄せられる蛾のようだと思った。



 そこまで来て明はどうしようかと悩んだ。扉を潜らないとこの夢は醒めないのだろうか。潜ってしまったら最後、どうにかなってしまいそうな、後戻り出来ないような何とも言えない不安感が胸を締め付ける。

 意を決したように口を一の形に結び、誰にともなく頷く。勢いを付けて肩から突っ込むようにして、扉を潜った。

 視界が光で埋め尽くされて何も見えない。





 少女が目を開けると、そこは見知らぬ部屋の天井だった。僅かなシミが見える。

 彼女は鼻先に蒸れるような不快感を感じた。右手で触れてみると、それは呼吸器のようだった。すると、ここは病院で、自分は寝かされているのだろうかと思った。しかし、考えても考えても何故病院で寝かされているのか分からなかった。



 少女の身体はとても小柄で、160cmも無いようだった。髪は腰近くまである薄い茶色のロングで、緩いウェーブが掛かっていた。すっと整った鼻梁と精悍な顔立ち、髪型と身長も相まって外国製のお人形を思わせた。



 彼女が顔を上げてみると、見知らぬ女性が二人瞳に映った。一人は高校生位で、もう一人は大人の女性。歳、背格好、顔つきから言って恐らく親子だろうと思った。

 少女は顔を上げた。二人は彼女が目覚めたと気づいたようだった。それを認めると、娘の方が駆け寄り、手をぎゅっと握ってきた。



「良かった! 気づいたのね」

「もう目を覚まさないかと思った」



 母親の方も涙目になりながらも、心底ほっとした声音だった。

 少女は困惑した表情を浮かべた。



 「ねぇ、大丈夫なの?どこか痛いところは……?」

 娘は心配そうに少女の顔を覗き込む。それがとても澄んだ目に見えて、少女ははっとした。

 言うまいかの一瞬の逡巡。目が泳いでしまう。それでも前に進まないと思い口を開いた。



 「あの……失礼ですが、どちら様でしょうか……?」



 面識の無い相手故に、つい敬語になってしまった。それと同時に彼女は何か違和感を感じたが、それが何だか分からないまま意識の底へ埋もれてしまう。

 娘はその言葉にぎょっとしたように、胸を詰まらせた。3秒程間が空き、溜まっていた涙が一気に溢れた。

一応プロット的な構想は作ってあるんですけど、書く毎に何だか変化していってるような気がしないでもない。小説って難しいんだなー、と実感しますデス。

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当作者の短編です。「Still,」との関連性はありません。
お時間ある時にでも、覗いてやってくださいまし。
わたしとケイと彼とサクラ

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