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極彩色のまどろみの中 1
極彩色のまどろみの中
ふわりふわりと
灰黒の羽根
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小さな小さな女の子。
それは、5歳のわたし、ヒセ。
手に抱いてるのは、ぬいぐるみ。
いちばん大切なぬいぐるみ。
キズついたぬいぐるみ。
ぬいぐるみに向かってヒセがいう。
「もう大丈夫だからね!」
飛世は言う。
―――その言葉に嘘はないの
ぬいぐるみに向かってヒセはいう。
「必ず助けてあげる!」
飛世は言う。
―――その思いに嘘はないの
「なのに」
―――なのに
ぬいぐるみはどこにもない
ヒセはただ泣きじゃくる
「ごめんなさいっ」
―――あなたを巻き込んでしまった
「ごめんなさいっ」
―――あなたの未来を奪ってしまった
飛世はただうずくまる
ぬいぐるみはどこにもない
泣きじゃくるヒセと
うずくまる飛世がいるだけ
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極彩色のまどろみの中
ゆるりゆるりと
羽根は泉に溶けてゆく