亡命する軍人
実在の人物・団体及び国名とは一切関係ありません。
掌編小説3
お題:煙、貧乏、旗
地雷があった。
仲間がやられた。
一歩進んでは爆破し、1歩退いては爆破した。
前を見れば肉塊があり、後ろでは悲鳴と静寂が連鎖する。
ここは日元帝国高凛県、かつてクレヤと呼ばれたこの土地で私は北に逃げている。
私はこの国が嫌いだ。
弱者救済というスローガンで1家に1台奴隷を持つ。
自助努力を合言葉に身売りをする者は後を絶たない。
身売りも出来ない私には軍人のみが行路であった。
軍は国の縮図である。
上官は肥え、女を侍らし、汚い声で常に笑う。
部下には特攻を強要し、敗残兵は殺される。
私は軍の所有物であり、私はそれに納得する。
しかし、今は違う。私は人になれる。
この亡命の機会をモノにするのだ。
肩で息をし、ゲロを撒きながら私は国境まであと数mの所までたどり着いた。
あの塀までたどり着けばやっと、やっと解放されるんだ。
私は思わず笑みをこぼした。
地雷に注意し、塀に近づく。
カツン、私は足元に違和感を覚える。
足元を見ると旗が落ちている。
旗は戦場には似合わないほど真っ白で血でところどころ汚れている。
しめた、この旗を掲げれば降伏の印になるだろう。
私は旗を迷わず掲げ、気づけば地雷があることを忘れ走っていた。
「助けてくれ!私はそちらへ亡命する!」
相手に聞こえるはずの無い声を私は必死に絞り出す。
「おーい!気づいてくれ!たす、け」
私の叫びは途絶えてしまった。
胸が熱い。
私は胸に目を向ける。そこには空洞があった。
思わず仰け反り前を見る。
人がいる。銃をこちらに向けている。
人がいる。ニタニタと気色悪い笑顔を浮かべている。
私は倒れ込む以外に何も出来ず、ただ旗が落ちる音だけを聞いた。
薄れゆく意識の中、旗が目に入る。
真っ白だと思っていた旗には模様が書いてあったのだ。
中心に赤色の円が。