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森⑤

 わたしは何もない白い空間に立っていた。

 ここは...どこだ?

 気配を感じてそちらを見るとわたしの前に誰かが立っていた。

 しかし彼(彼女?)はモヤのようなもので姿を確認できない。

 彼はわたしに向かって囁く。

「返せ、返せ、」

 何を言っている?わたしはこんなやつに何かを借りた覚えはない。

「かえせ、かえせ、」

 わたしの頭がズキンと痛む。

「カエセ、カエセ、」

 頭の痛みが強くなる。

 やめろ、しゃべるな。

 痛い、痛い、痛い。

 あれ、何かわたしは大切なものを忘れているような...

 彼の言葉はもはや聞き取れなくなっていた。


「ローズさん、こいつ本当に大丈夫なんですか?神門の森に一人で倒れてるなんてどう考えても普通じゃない。起きたら口封じに殺されるかもしれませんよ?」

 誰かの声でわたしは目を覚まし、あたりを見回す。

 わたしはなんで生きてる...?

 どうやらわたしは檻の中の布団に寝かされているようで、わたしの正面で男女二人がこちらを睨みつけていた。

「うわぁ!起きた!殺される!?」

「ハギ、落ち着け。相手から今のところ敵意は感じない。」

 ハギと呼ばれた男を、ローズと呼ばれた女が静止し、わたしに話しかけてきた。

「すまない、混乱していると思うが先に君に敵意がないことを確認したいんだ。いくつか質問をさせてくれ。」

 誰かの異能だろうか、わたしの傷はすっかり癒えていた。

「単刀直入に聞こう。君はなぜ神門の森にいた?結界が壊されたことに何か関係があるのか?」

 わたしは何も知らないのでそう伝える。

「いや、何も知らない。記憶が曖昧になってるんだ。」

 ついでに記憶がないことにしておく。

「そうか、知らないか。精神系異能もちに何かやられたのか?ようやく手がかりをつかんだと思ったんだかな...」

 都合よく解釈してくれたようでなによりだ。

 わたしはベットから起き上がり、質問する。

「お前らは誰だ?ここはどこで何が起きたんだ?」

 ローズではなくハギとかいう男が答えた。

「神門の森には恐ろしい魔物がたくさんいるので、そいつらが出ないように結界が張られていたんですが、その結界が何者かに壊されたんですよ。森からやばい魔物が大量に出てきて、この辺りの村は大パニックです。だから調査のために派遣された僕達が森の中で倒れているあなたを見つけて王都に連れてきましたんです。」

 あの結界が破壊されたのか。

 犯人は相当な力を持っているようだ。

 そのおかげでわたしは助かったのか。

 ありがたい。

 折角生きて森の外に出れたのだから、情報を収集しよう。

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