森②
ドーンという音と共にトレントが地面に倒れ込む。
か、勝った。
本当に苦しい戦いだった。
弱体化した状態で勝てたのはもはや奇跡としか言いようがない。
だが流石に血を使いすぎた。
意識が朦朧としてくる。
当たり前だ、身体中を根に貫かれていて腕なんて片方ないのだから。
どうにかして血を摂取して回復しなければ吸血鬼といえど流石に死ぬ。
トレントから流れ出している半透明のドロドロした液体をみる。
これ...血か?
考えている余裕はないので意を決して牙をトレントに突き立てる。
よかった、血だ。
血だが...
まっっずいなこれ。
吸血鬼のわたしでさえ飲んで大丈夫なやつなの?と疑いたくなるほどだ。
贅沢を言うつもりはないが、目覚めて最初の食事がこれか。
ともかく、これでさっきの傷のある程度は癒えるだろう。
吸血には様々な効果があるが、特に重要なのはこの三つ。
血を補給や回復と、吸血した相手の眷属化。
そして人間だけが神から授かることができる人智を超えた力、異能の吸収だ。
トレントの血を吸うことですこしだが体力が戻るのを感じると共に異能が流れ込んでくるのを感じた。
なんで!?
異能を持っているのは人間だけのはず。
まあ、死ぬ前に山ほど持っていた異能も今はすっからかんだしありがたいが...
手に入れた異能は<隠密>。
わたしがあっさり奇襲されたのはこの異能のせいでもあったんだろうか。
だが、異能を持っている魔物がうろつくようなこの森では役立つに違いない。
ありがたくいただいておこう。
眷属化もためしてみたが、弱体化のためかうまくいかなかった。
こればっかりは仕方がない。
どうにかして力を取り戻せばいつか使えるようになるだろう。
ドスーン、チュー
ドスーン、チュー
変なことしてるわけじゃないよ?
トレントから隠密の異能を奪ったわたしは、絶賛トレント狩りの真っ最中だった。
環境破壊目的じゃないよ?
気づいてしまったのだ、奴ら隠密で近づいて直で核を破壊すれば簡単に倒せてしまうのだ。
さらに血を吸って匂いを覚えたおかげで居場所もわかるときた。
これは力を少しでも取り戻すためにやるしかないでしょ。
何匹かトレントを狩ってわかったんだけど、全てのトレントが隠密を持ってたんだよね。
これのおかげで隠密のLvがだいぶ高くなってきた。
Lv3ぐらいにはなったんじゃないかな。
異能は普通、たくさん使ったり練習することで力が強まるんだけどわたしは同じ、もしくは似たような異能を吸収するだけでLvが上がるんだよね。
ずるいとか言うな。
ただ、この森にはトレント以外の魔物もうじゃうじゃいるいるけどそいつらも同じ異能を持ってるかはまだ狩ったことないからわからない。
だって怖いもん。
どんな異能を持ってるかもわからない魔物に丸腰で挑むわけにはいかないでしょー。
特にあの銀色の狼みたいなやつ。
あいつら鼻がいいのか<隠密>発動中のわたしに気づいて、群れで超スピードで牙をガシガシ言わせながら追いかけてくるんだもん。
撒くために地面に穴掘って潜る羽目になった。
おのれ狼、力を取り戻したら覚えてろよ?
そういうことで、わたしはトレント以外の魔物にあったら隠密でそそくさとたいさんすることにしている。
ドスーン、チュー
あ、Lvが4に上がった。
Lv上げのためにもしばらくは出口を探しつつこれを続けようかな。




