森①
さて、世界征服うんぬんの前にわたしが死んでいた間の世界の変化を知りたい。
死んでからどのくらい経ったかや、人間と吸血鬼の今のパワーバランスなどは重要だ。
そのためにこの森から脱出する必要がある。
飛んで出るか?
この森は暗いし木の枝が縦横無尽に広がっているので飛びにくそうだが、やれないことはないだろう。
しかし外が昼だった場合人間に見つかるかもしれない。
そう考えながら暗さで昼か夜かもわからない空を見上げる。
ん?何か光ったような?
光の方へ向くと、木と目があった。
そう、目があったのだ。
!?歩く木か!
わたしが飛び下がるより先にトレントの動く根に右足を貫かれる。
くそっ、なんで気づかなかったんだ。
復活に成功して気を抜きすぎていた。
普段なら奇襲なんか受けないのに!
トレントは木のふりをして人間に近づき、殺して養分にするという大変物騒な魔物だ。
続く根が迫ってきているが、この足では避けるのは難しい。
このままではわたしはたちまちトレントの養分にされてしまうだろう。
こうなったら、やられる前にやる!
右手に血を集中させ、打ち出す。
<血弾>!
トレントにむかって勢いよく放たれた血弾だが、あっけなく弾かれる。
まじか!?
迫ってくる根を血の盾で防ごうと試みるがあっさりと破られ、片腕をもっていかれる。
...まさか。
そう、わたしは奇襲にあった時点で気づくべきだったのだ。
自分が大幅に弱体化していることに。
おそらく蘇生に力を使いすぎたのだ。
今のわたしの力はそこら辺の人間と変わらないし、足や腕もしばらく再生できないだろう。
ましてや再びの蘇生など。
ここまできて今更自体の深刻さに気づいた自分を悔いたい。
脳を総動員させこの絶体絶命の状況から助かる方法を探す。
きっと何かあるはずだ。
心臓を狙った攻撃を間一髪でかわすも、脇腹を貫かれる。
体からドパドパと血が吹き出し、わたしから正常な判断力が段々と失われていく。
サー、と死の予感がわたしの脳裏をよぎる。
賭けに出るしか無いか。
このままいても賭けに負けてもどっち道死ぬだけだ。
どうせ死ぬなら悔いが残らない方を選びたい。
わたしは覚悟を決めると、自分の体を思い切り押し出した。
トレントの方へ。
トレントは咄嗟のことで反応できていない。
そのままの勢いで根を掻き分け、トレントの中に腕をねじ込む。
トレントの根に体のあちこちを貫かれるが、気にせず掻き回す。
手にコツンと石のようなものにあたる感触があった。
ははははは!
この賭けはわたしの勝ちだ!
わたしはトレントの核を握りしめると、最後の力を振り絞って破壊した。




