プロローグ
人間と吸血鬼の戦い、それはこの世界が誕生してから幾度となく繰り返されてきた歴史。
決して相容れない二つの種族の戦いは人血対戦で原初の吸血鬼が聖騎士達に討ち取られることによって終了する。
討ち取られた原初の吸血鬼は教会によって極秘で封印された———
ここは一度入れば何人たりとも出ることができないと言われる神門の森。
危険な魔物が大量に生息していることでそのように言われているこの森だが、その中に月明かりに照らされ異様な雰囲気を放つ何十もの鎖で縛られている茶色い木箱があった。
滅多に人が入らないこの森にそのような木箱があるのも不思議だが、危険な森の中でよほど頑丈に作られていたのか傷一つないのがまた異様だった。突如大きな風が吹き、木々がざわつく。
それに呼応するかのように木箱がカタカタという音と共に激しく揺れ始め、それもだんだんと激しくなる。
限界を超えた木箱にヒビが入り、どんどん大きくなっていく。
ヒビがひろがるたびにサラサラと漏れ出る灰はだんだんと何かの形を作り出す。
木箱が完全に粉々になったとき灰は一人の少女の形になっていた。
真っ白な服に身を包んだ少女は長く美しい白髪をさらりとなびかせニタリと微笑んだ。
わたし———原初の吸血鬼レノは木々のざわめきと共に目を覚ました。
ん?ここは地上か。
奴らの悪趣味な箱に妨害され続けたせいで外の情報がわからないが、灰になってから二、三年は経っているだろう。
近くの木に触れる。
手は動く、感覚もある。
おそらく何十年ぶりであろう五感が体に戻るのを感じる。
ふむ、問題なさそうだ。
蘇生はちゃんと成功している。
こんなヒヤヒヤしたのは何千年と生きてきたが初めてだ。
もう死ぬのは本当に勘弁。
罠に嵌めやがった人間ども、許さん。
前みたいにこそこそ生きるのはやめて、世界征服でもしてやろう。
あれ、どうしてわたし、こそこそ生きてたんだっけ?
はじめまして。拙作ですが少しでも楽しんで頂けると幸いです。よろしくお願いします。




