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第五王女シャーロットの貴族没落大作戦<第一部>  作者: 笹 慎
第一部 王都特別行政地区(王太子直轄領)医療改革
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第1話 女王シャーロット1世伝:貴族のケツの毛までむしり取った女

 倒竜暦823年。

 その日、シグルズ王国の首都ファーヴニルにある国際会議場前では、世界中から大勢の報道陣が詰めかけ、互いに腕を交差させて固い握手を交わした各国首脳に向けて一斉にカメラのフラッシュを焚いた。


「先ほど調印式が行われ、ナーロッパ連合こと通称NUが発足されました」


 会場前からの中継を受けて、スタジオの女性メインキャスターが微笑みを浮かべる。


「NUはまずはその第一歩として、来月1日よりNU加盟国すべてで使用できる共通通貨『ナーロ』を導入します。1ナーロコインのデザインとして、我が国のシャーロット女王1世の横顔の肖像画が採用されたのが記憶に新しいですね」


 横の政治評論家も笑顔で頷く。


「はい。共通貨幣ですから、本来は特定の国の偉人をデザインにすることは避けるべきですが、初代シャーロット女王陛下はナーロッパ中から人気が高いですからね」


「私、シャーロット女王をモデルにした映画の『ファーヴニルの休日』大好きです! そして、やっぱり彼女を支えた円卓の賢人たちの物語がまた良いんですよ~」


 反対隣に座っている高学歴が売りの女性アイドルが興奮してそう続けると、メインキャスターもニコニコしながら頷いた。


「円卓の誰推しなの?」

「えー! 選ぶの難しいなぁ!」


 女性陣のキャッキャッと紡がれる会話に、政治評論家は苦笑いながらも話に乗る。


「ちなみに僕は円卓派ではなく、宿敵と言われたゼロイセン皇帝アレクス二世派ですね」

「えええ! 超当て馬じゃないですかー! しかも『女王シャーロット1世伝』だと、めっちゃ嫌なヤツだしぃ」


 アイドルの猛抗議を受けて、政治評論家は人差し指を回しながら説明を続ける。


「そこがいいんですよ。アレクス二世は皇太子時代に、当時、許嫁だったシャーロット女王にお願いされて、東ナーロッパ中の街道整備してくれた太っ腹で純粋な男なんです。そのせいでゼロイセンは一時、財政が傾いてしまいましたが」


「我が国は大いにその街道を利用して各国との交易で大儲けした挙句に、シャーロット女王が結婚の話を丁重にお断りしたのは有名な話ですね」


 話にオチがついてスタジオは和やかなムードに包まれたまま、次のマンホールに落ちた犬の救出劇のニュースに移った。



◇◇◇



 中世から近世への変遷において、各地で市民革命による王族の処刑と王室制度の廃止という共和制の嵐が吹き荒れる中、シグルズ王国では国民投票によって「王室の継続」が可決された。その功労者にして絶大な人気を博した女王シャーロット1世の人生には逸話が多い。



『国民なくして、国は存在せず』

『国民の信託なくして、王は存在せず』



 シグルズ王国21代目国王・シャーロット1世は、その生涯をかけて階級制度の廃止と富の再分配、国民の健康と教育の向上に注力した。


 国民から「賢王」と称された彼女だったが、反対に富を取り上げられた貴族や大商人、そして相対した政治家たちからは「ファーヴニルの魔女」と恐れられた。


 特に東ナーロッパの覇者として名高いゼロイセン皇帝アレクス二世は「あれが存命の間はシグルズに手を出すな。戦争には勝たせてもらえるだろうが、気が付いたらすべてをむしり取られているのは我々の方だ」と、いまわの際に言い残したと伝えられている。



 そんな女王シャーロット1世の隣には常に()()()()()()()が寄り添っていた。


 この物語は、己の自己決定権を手に入れ、()()()()()との身分を超えた結婚をした一人の女性が、獅子奮迅の活躍を繰り広げた少女時代のお話である。

ブクマだけでも何卒~。

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