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ジャムと魔法陣

「ところで、お前、何故魔法が使えない?」

 ラチェアが、急に聞いてきた。

 ラチェアとバーント、ヘンリスのバーティ『マイコスの森』の本拠地である『リュンシハ国』の『貿易都市リャンシャンテ』に向かう途中の事だ。


「魔法陣は出るのだろう。水を滴らせる事もできたそうじゃないか。何故魔法が発動しないのか、気になってな」


 僕は、言われるままに魔法の発動を行う。

 火の魔法陣をイメージして、右手の人差し指の先に意識を集中する。

 程なく指の先に白い魔法陣が現れ、魔力の流れを調整すると、赤色の光が魔法陣に漲る。

 だが、そこまでだった。

 僕の魔法陣は、輝くだけでそこから炎は生まれない。


「そのまま力を抜くな」

 ラチェアはそう言いながら、ヘンリスと考察を始める。

「綺麗な魔法陣じゃのう」

「魔力も詰まりなく行き届いているな」

「ラチェアよ、触ってみろ。魔法陣がかなり熱くなっとるぞ」

「魔法は発動しとると言う事か……。精霊は働いてくれているという事か」

「のう、ジャム坊は、前世の記憶があるんじゃろ。その世界に精霊がおらんかったとしたらどうじゃ」

「頑なに精霊を認めない過去の記憶が、魔法陣に蓋をしとると言う事か」

「じゃと思うんじゃがのう」


 ラチェアとヘンリスの話し合いの結果、前世の記憶が魔法の発現の邪魔をしているという事になったらしく、

「ジャム、お前、もっともっと魔法陣に魔力を込めろ。蓋をこじ開けてやれ!」

 と、いう事になった。


 魔法陣の許容範囲以上の魔力を込める為、暴発の危険があるので、仲間たちがヘンリスの防御魔法壁の中に入っている事を確認し、魔法陣に魔力を込める。


 フッ……………………………………

 ハァァァ……………………………………

 目の前が白くなり、意識が飛びそうになる。

 爪先、耳の先、骨の髄からも魔力を掻き集める。


「もっと!」

 ラチェアの声が耳を叩く。

 魔法陣の赤い光が強く。


「もっとじゃ!」

 ヘンリスの声が背中を押す。

 赤い輝きが、オレンジ色に変化。


「もっとやで!」

 ジャクダウの声が四肢を支える。

 オレンジ色が、やがて白く。


 魔法陣から温度を感じる。

 ドンドン高く、激しい温度へと。


「もっとだ!」

 バーントの声が胸を打つ。

 白が、蒼く透明に。


「もっとや!」

 カリハの声が力をくれる。


 魔法陣が揺れた。


「「「「「もっと!」」」」」


 頼む!

 魔法よ出てくれ!

 火よ、火よ燃え盛れ!

「ハァァァァ…………【Fire】」


 全身から絞り出した魔力の最後の一滴まで注ぎ込んだ魔法陣は…………。


「「「「「はぁ?」」」」」


 進んでいた。

 蒼く発光したまま、フヨフヨと飛んでいく。

 僕の指先から離れ、二歩三歩分先に浮いている。


「なあ、ヘンリス。魔法陣って動くのか?」

「ラチェアよ、儂は聞いたことがないぞ」

「魔法陣が飛ぶって、なんや?」

「魔法が出ないで、魔法陣だけが飛ぶ?」

「あかん、変態や…………」


 頬を掻く。

 何とも言えない恥ずかしさが…………。


 魔法陣は、そのまま飛び続け、一本の大木に触──


 ─ボシュウ!!!

   ─ボッ!!!


 大木が一瞬にして燃え上がった。


「「「「ヘッ…………」」」」

「変態や…………」


 僕の必殺技『魔法陣アタック』の誕生であった。




【昊ノ燈です】


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