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カリハ

 あれから三年。

 ウチは、トラルディン半島付近の小さな町にいる。

 帝国はナザロフに遷都してから、他国への侵略を激化させていった。

 『民族浄化』の旗印の元であるが、旧帝都での魔化により遷都を余儀なくされた帝国貴族達支配階級が、被支配階級の暴動を抑えるためのガス抜きであることは、周知の事実である。


 そして、この町も前線の一つだ。


 ── カンカンカンカンカン


 鐘がなる。

 戦闘の始まりだ。


 立て掛けてあった大斧を手に、戦場に向かう。


「よう『死にたがり』、今日も独りで突っ込んでいくのか?」

「『死にたがり』が行くぞー!」

「『死にたがり』の帝国退治だ!」


 ウチの事を『カリハ』と呼ぶ者はいない。

 『死にたがり』

 それが、ウチの通り名。

 正規兵も傭兵達もそう呼ぶ。

 前は、キュラだけが、『カリハ』と呼んでくれてたけど、今はいない。

 死にたがって戦場に出るウチに愛想を尽かして、去ってしまった。

 北の方にあるという魔族の国を探すんだとか…………。ウチにも一緒に行こうって、言ってたけど、ウチは戦場を選んだ。多分、そこにウチの幸せはないと、思ったから……。

 いや、何処にもない。


 走り抜け、魔法で軽くした大斧を上段に構え、魔法を解き自由落下に任せて大斧を振る。これだけで、人が死んでいく。

 これが、あの時できていたら、これを知っていたら…………もう遅い。

 今度は、魔法で重くしながら振り回す。遠心力と相まって、大斧は凄い破壊力をだすけど、腕の筋がピキピキと音をたてて、壊れると悲鳴をあげる。この感じが好きみたいだ。唯一、生きてるって思える。

 痛みだけが生きている証明。


 走り、殺す。

 それを繰り返しながら、敵陣の奥深くまで入っていく。


 んっ。

 何か可怪しい。

 いつもなら、距離はあれど後ろをついて来る傭兵団の姿がない。ウチの殺りそこないを狙う浅ましい奴等。

 それに敵の数が多い。

 まるでウチを囲ってるような…………。

 気が付けば、軍勢により取り囲まれていた。


「ホッホ〜。お前が『死にたがり』か?」

 兵達を押し退け、豪奢な鎧を纏った小太りの男が、目の前に現れた。

「中々の見目じゃの。儂が飼ってやろう。ホッホッホッ」


 人を値踏みするような瞳に怖気が走る。


「お前は、売られたんだよ」

 別の男がそう言いながら、六つの首を投げてきた。


「これだから異民族は汚らわしい。仲間を売る等と」

 小太りの男が言葉を続ける。

「誉れあるゲルン人として、成敗してやったわ。ホッホッホッ」


 ここまでか…………。

 でも、せめて一振り。

 そう思っても、自分を取り囲む輪は広く、届きそうもない。

 「さあ、我がもとに来い」と言う、小太りへの返事として、力一杯、大斧を投げつける。


 ── ガインッ!


 小太りの横にいた盾兵により、大斧は弾かれた。


 ジャクダウ様の大斧。


「ホウ。やはり、獣は獣か」

 小太りは、侮蔑の言葉と共に上げた右手を下ろす。


 途端、パシュパシュという高い音をたて、幾本もの矢が雨のようにカリハに降り注がれた。


 カリハは目を閉じない、自分の死を見届ける為に。


 嗤いながら矢を放つ者。

 面白そうに盾を構える者。

 談笑しながら剣を持つ者。

 嫌らしい目つきを向けたままの者。

 全てが、口惜しかった。

 でも、死ねるという救いもあった。

 これで…………………………。


 ── バシュシュシュ ──


 しかし、矢達は、一本としてカリハに届くことはなく、打ち落とされる。


 突如現れた、白銀の騎士によって。


 カリハの呼吸が大きく弾み、瞳に涙が溢れる。


「な……なんだ、お前は?」

 小太りが声を上げ、周囲の兵達の目つきが変わっていく。


 もう、戦いは終わった。

 なぜなら、カリハは知っていたから。

 この白銀の騎士が何者かを。

 このゴーレムの主が誰であるかを。


 視界の至る所に見慣れた掌大の小さな魔法陣。

 あの時と同じ、でも数が違う。

 そして、沢山の魔法陣から発せられた、蒼く白い光の線が空間に描かれた。


 戦場をランダムに疾走る線。

 それは、全ての敵を穿き、カリハを護った。


 線が動き始める。

 光跡により、線が面となり、空間を切り取っていく。


 一瞬にして、全てが消えていた。

 線に触れた者は、全て燃え尽きた。

 一片の欠片もなく、臭いすらも残さず、焼き尽くされた。


 そして、そこに一人の少年。

 ジャム。


 ── フニフニフニフニフニフニ


「何、ジロジロ見とんの?変態?」


 呆気にとられた。

 何故、こんな感動的な再開のシーンで、ジャムはウチの頬を突付いて、馬鹿な事を言う──あっ。


「なんやのん、ウチのセリフ取ってからに」

「ヘヘ、分かった?」

「わかるわ。に、しても、変わったね」

「似合わない……かな?」

「ううん、ワイルドになった」

「へへ」


 照れるように笑うジャムの目は真紅で、金色の瞳を際立たせている。そして、左のこめかみ辺りから細く長い角。


「なんか、魔族になっちゃった」

 戯けるように言う、ジャム。


「ウンウン」

 分かってる、分かってる。全部、ウチを助ける為なんよね。

 一度止まった涙が、また溢れ出しくる。


「あっあっ、泣かないで。ねっ、カリハ」

「プッ。やっぱしジャムはジャムや」

「あ〜、なにそれ」


 ジャムは視線をマドゥに向けると、笑うように言う。

「さぁ、次はキュラの様子を見に行こう」


「あっあっ、ジャム、ちょい待ち」

「何?カリハ」


「おかえり。そして、ありがと」

 人生二度目のキスをした。

今まで、ありがとうございました。

とりあえず、これで終了となります。

本当は、もっと続けたかったのですが、キャラクターのカリハが気に入りすぎまして、カリハメインの話を作りたくなってしまいました。

(当然、名前とかは、変えますけど……)


読んでくださった皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m

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