アンナ、ハルとナツ
ギルドの会議室は、荒れていた。
「──で、あなた方が逸れてから、Jの足取りが消えてしまったのですね」
「…………はい」
「既に、二ヶ月以上が経っています。廃坑の方へ行ったのかもしれませんね」
「廃坑?……あの辺りで廃坑と言えば、魔化ダンジョンの所しか…………でも、何故、廃坑に?」
「ジャクダウと同行していたからでしょうね」
「くっ!」
「ジャクダウか!」
「あぁ…………J」
「私のJ」
「ああっ?私のJって何だよ」
「俺のJだよ」
「クソ同性愛者が」
「何を!Jは性別を超えてんだよ」
「分かる〜〜」
「皆さん、確認しておきます。Jは皆のJです」
「そういえば、山越えで帝国に向かっていた冒険者グループを見たという者がおりました」
「私も聞いた。ハーフリング族と揉めて森に逃げ込んだ奴らだろ?」
「数人の奴隷を連れていたとか……」
── トントン
ノック音が聞こえる。
「すいません、アンナさん、お客様がお呼びです」
「私は、休憩中です。そちらで対応してください」
「それが、アンナさんを指名されていますので……」
「くっ、皆さん、申し訳ございませんが、呼び出しです。議長の私が抜けますが、引き続きJの足取りと目撃情報を集めてください」
「「「「「はい!」」」」」
アンナが冒険者ギルドのカウンターに戻ると、一組の男女が待っていた。
「貴方たちでしたか、『ハル』『ナツ』」
チクナルデルの所に現れた二人組がそこにいた。
「『転生者救済財団』がなんの用ですか?」
「釣れない事を言うなよ、アンナ」
言葉を返したのは、『ハル』と呼ばれた男。
「それに、俺たちの財団名は、『リングラング財団』。名前間違わないようにね」
「同じ事でしょうに……。で、今日の目的は?」
「このギルドで、不思議な魔法を使う子供が登録したという噂を聞いたんだけど?魔力値も高いそうだね」
「どこで、そんな事を……」
「で、いたの?いないの?」
「貴方たちが来たという事は、彼も『転生者』?」
「つまりは、居たんですね。どこに?」
「今は、いません。」
「えっ?また」
アンナは、『また』という言葉に疑問を持った。
この『ハル』と『ナツ』の二人は、『リングラング財団』の調査員。『リングラング財団』は、別名『転生者救済財団』と言われ、世界の厄介者と呼ばれる転生者を集めている財団である。
『ステータスオープン』の開発団体でもあり、専売を行っているので、ギルドとしても、大きい顔はできない。
「また?」
「いやね、帝都に転生者が産まれたっていう情報で探ってたんだけど、すれ違いでさ……。で、いないって、何があったの?」
「商人の護衛で街を出たんだけど、その後、行方不明に…………」
「あ〜、よく行方不明になる子だな。で、ここでの名前は?」
「『J』。いや、『ジャム』と名乗っていました」
「『ジャム』か。帝都時代は『ジャリムス・エンファ』だったから、ほぼ間違いないかな?名前も似てるし」
「『エンファ』……、貴族?」
「あぁ、貴族の養子。だった、という方が良いかな?鬼籍に入ってるから。まぁ、いいや。何か情報掴めたら頂戴」
軽く手を振って立ち去ろうとする二人を、アンナは呼び止めた。
「あの、暫く前にユンシャウ付近の森から山越えで帝都に入ったという冒険者がいたと聞いたんですが……」
この二人の情報力に掛けてみた。正直、財団の情報収集力は、世界トップクラス、いや、ダントツでトップ。いま、私たち『JKS』と、財団の情報が組み合わせれば、ジャムの行方が分かるかもしれない。
「結構、情報早いな。でも、その中にジャリムス?ジャム?ジャムで良いか言いやすいし。ジャムはいなかった」
「そうですか…………」
「ついでだから、教えといてあげるよ。帝国、遷都する事になるよ。──」
意外な所に話がいってしまった。
帝国が遷都?
大き過ぎる話。
戸惑っていると、小声で『ハル』は話し続けた。
『ナツ』は、我関せずといった風で、ギルド内を眺めている。
最初に、帝都に入った冒険者パーティーは、ジャムの義兄だったチクナルデル・エンファがリーダーとして、ジャムを探すことを目的として組織されたという。
帝都に連れ帰った奴隷というのは、ユンシャウダンジョン近くの集落にいた魔族の子供達。
意気揚々と、帝都で魔族の子供達をダンジョンの餌にしたんだけれど、それにより帝都近くのダンジョンが魔化してしまった。
ダンジョンには、影のような人型が徘徊するようになり、魔獣がより巨大化、凶暴化。魔族も出没するようになったらしい。
ダンジョンに近い、帝都にも影響が出始め、帝都の機能がストップ。
それで、遂には、帝都を捨て、別の地に遷都する決定をすることになったのが、先日の事だそうだ。
おそらくは、帝都のトップレベルのシークレットだろう事を、噂話程度の口調で言う『ハル』という男に畏怖を感じながらも、アンナは、次の質問をする。
「それで、そのジャム君のお義兄さんは?」
「ああ、飾られてるよ」
「飾られてる?」
「うん、首だけになって、お仲間達と一緒に街道沿いに飾られてる」
アンナは、言葉を失った。
「じゃあ、そのジャム君の情報が入ったら教えてな」
軽い口調で言い残し、去っていく二人。
世界が動き出す。
そんな気がしていた。
【昊ノ燈です】
後、一話で終了です。
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