夢が消えて
── ゴプッ……ゴボゴボ…………
音がした。
「何ダ 何ダ 何ガアッタ?」
「何ガアッタ?」
「私ノ身体ガ……」
「私ハ ドウナッタ」
「オ前モ 私」
「ハッハァー 私ト私ト私ト私ト私…………」
「私ハ プットブル」
「プットブル?」
「誰ダ?」
「私ハ私。私タチダー!」
男の死体から這い出てきたのは、夥しい蟲。
ただ、その全てが、男の顔を持っていた。
「エサ……」
「エサ……エサ……エサ……」
「餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌」
「餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌」
「餌餌餌餌エサ餌餌餌餌餌餌餌餌餌餌」
蟲達が、ジャクダウの死体に群がる。
ガツガツという咀嚼音を鳴らし、骨すらも噛み砕いていく。
「………ヒャ………………………」
カリハは、あまりの悍ましさに悲鳴すら上げることができなかった。
這うように逃げた。
さっき黒い球があった所へ。
あそこに行けば、助かる気がした。
ジャムが助けてくれる気がした。
「餌、逃ゲルナヨー」
「エサガ 逃ゲルゾ」
「生キガイイ餌」
「ハッハァー」
「若イ 女 エサ」
あるモノは多脚を絡ませながら、あるモノは長い脚を滑らしながら、あるモノは伸び縮みを繰り返しながら、カリハを追ってくる。
カリハが、黒い球があった場所についた時、そこに見たのは、黒い染みのような円。助けてくれる存在などいない。
人面の蟲達が迫ってくる。
カリハが、あまりの悍ましさに目を瞑ろうとした時、床が丸く光った。
マドゥが倒れていた所だ。
丸いひかりの円周は、光の壁となり、天井まで届く円柱、光の柱となる。
そえて、その光柱から現れた者は、一人の騎士であった。
左手にマドゥという特異な武器を持った騎士。
騎士というには、何処となく部族的な雰囲気を醸し出しているが、大分すれば騎士である。
そして、全身は白銀であった。
カリハは、この騎士がマドゥであると感じた。
マドゥがマドゥのまま、ミスリルのゴーレムとなったことが、わかったのだ
「悍ましい存在に成り果てたな」
白銀の騎士となったマドゥは、人面の蟲を見下ろし、言い捨てた。
殲滅。
◇◇◇◇◇
気が付けば、街道沿いの拓けた場所にいた。
そばには、キュラ。
ウチは、空のバックパックを背中から下ろし、ただ呆けていた。
あの後の事を覚えていない。
極度の緊張から解かれたウチの意識は、深い眠りに落ちてしまったようだ。
夢だったようにも感じる。
大き過ぎる喪失感は、現実を歪ましてしまう。
キュラの話では、ゴーレムとなったマドゥは、ダンジョンに帰っていったらしい。
ちなみに、ここまでウチを運んでくれたのは、マドゥ。
共に居ることを願ったキュラだったが、マドゥは主の元に居ることを選んだ。ゴーレムとしては、当たり前の選択。
ただ、主と言っても、ジャムは黒い染みとなった。
マドゥは、今も暗いダンジョンの最下層で、黒い染みを護っているのだろう。
横に転がっていた大斧を手に取る。
ジャクダウ様が使っていた大斧。領に代々伝えられていた伝統ある大斧なのだそうだ。
ジャクダウ様を失った。
マドゥが去って行った。
そして、ジャムが消えていった。
押し潰されそうな程の喪失感。
キュラと二人、歩いていく。
【昊ノ燈です】
ついに48話目。
本日、2話目の投稿です。
このお話、50話で終わる予定ですので、
もうしばらく、お付き合いお願い致します。
それで、
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