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カリハとジャクダウの死

 暗闇の中を駆けていく。


 背に当たる光が、斜め上から、背後からの光に変わったから、ジャムも最下層に降りてきたんだと分かる。

 ジャム……。

 気が付けば、右手の人差し指が唇に触れていた。

 ジャム。

 旅の途中で出逢った、男の子。

 男のくせに女の子みたいな顔。

 普通の魔法が使えないくせに、魔法陣で戦う。

 虚弱とか変態って言って、からかっていた。

 世間知らずでさ…………。

 変なファンクラブ作ってさ…………。

 でも、話しやすい男の子。

 いつも一生懸命で、

 優しくて、

 ウチの為に泣いてくれる。

 キスをし…………。


「ダーー!ウチはジャクダウ様のポーターや。従者なんや!」


 でも、格好つけすぎたかな?

 ジャムも初めてだったのかな?


「ダーー!ウチはジャクダウ様の為に生きて、ジャクダウ様の為に死ぬ女や」


 ジャ……ジャム様。って…………。

 ううん、ジャムはジャムがいい。


「って、ダーー!何考えてんね──」


 ── ポン


 背中を軽く叩かれた。

 マドゥがサムズアップして、追い越していった。

 こんな表情するんだ……。

 思えばマドゥの顔をちゃんと見た事なかったよな。

 片頬がなくなってるけど、引き締まったイケオジ。

 今まで敵認識だったけど、よくよく考えると、ジャクダウ様の方が悪いんだよね。


「──リハ。カリハ、光からズレて──」

 っ!ジャムが声をかけている。

 熱る顔で振り向くと、真剣な顔をしたジャムがいた。

 くっ、凛々しいやんか。

「カリハ、光からズレて、闇に隠れて走って」

 言葉通りに光の陰にズレる。

 ジャムの左手には、火の魔法陣。

 マドゥと共同戦線を張るつもり?

 それも、右手に光の魔法陣を出したままで、囮になるつもり?

 でも、今の戦力からして、それが私達の最高戦力。

 あ〜、情けないな。

 格好良く飛び出したつもりだったのに……。

 ウチじゃあ戦力不足。



 マドゥと魔族の戦闘が始まった。

 特異な武器を使って、複雑な攻撃をするマドゥ。

 ジャムが隙をついて、魔法陣の一撃を入れようとする。

 勝負は、一瞬でついた。

 尻尾を振るだけで、マドゥとジャムが吹き飛ばされる。

 男の所に残っているのは、足元の光る魔法陣だけ。


 っ手?

 ジャムの手首?

 ジャム?

 

 声がした。

 ジャクダウ様の声。

「カリハー!俺の斧や、探すんや」

 

 見ると、ちょい先にジャクダウ様の大斧が落ちていた。

 持つ。

 重い。

 持ち上がらない。

 自分の中にある魔力を信じて。

 自分が知らず知らず使っていた魔法を信じて、今一度、大斧に挑む。


 信じられない程、軽い。

 まるで、重さが無いみたい。


 男の足元では、消えそうな魔法陣。

 ジャムの手が、打つターゲットの場所をを教えてくれている。


 そのまま、上段に掲げ、男に振り下ろす。


 違和感。

 軽すぎる。

 重量が乗らない。

 このままでは、攻撃にならない。

 切り裂く事も、打撃にすらもならない。


 不意をついた攻撃は、まるでコルクの棒で叩くかのよう。

 肩に当たった大斧は、なんの衝撃も与えないどころか、大斧を男に奪われてしまった。

 男は、片手でジャクダウ様の大斧を振り上げると、軽くジャクダウ様に振り下ろした。


 ── ドシュッ!


 ジャクダウ様の胴体が二つに割れた。

 血がイッパイ流れてる。

 手から、マドゥの部族の宝珠が転がっていく。


 ああ…………。

 ああ…………ああ…………。

 ああ…………ああ…………ああ…………。


 死んだ…………。

 ジャクダウ様が死んでしまった。


 ジャムの魔法陣から光が消えた。


 真っ暗になった。

 

【昊ノ燈です】


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