僕とマドゥ。ジャクダウとゴーレムの宝珠
カリハが飛び降りるのを、呆然と見ていた僕の肩をポンと叩いてマドゥが続いて飛び降りて行った。
右手でサムズアップを決めながら……。
ハッと我に返り、後ろを振り向くと、キュラが真っ赤な顔して、ファースト?ファースト?と呟いている。
僕もマドゥに続いて飛び降りた。
あぁ、顔が熱い。
当然、僕もファーストキス。おそらく前世を含めても……。『リア充爆発しろ』なんて思っていた前世の僕よ、今世の僕は『リア充』だ!
って、死んじゃうかもしれないけどね…………。
◇◇◇
マドゥは、走っていた。
頬に受ける風が、剥き出しの左奥歯を刺激する。
微かにキーンとする痛みが、頭を冷ましてくれる。
焼け焦げた筈の右腕も動く。
武器は、左手の一振だけ。
それでも、行く!
初めにあったのは、部族の教だった。
滅びさった部族の最後の一人として、頑なにそれを守っていた。
『常に強者たれ』
『弱き者を助けよ』
その二つ。
そして、部族の宝を持ち去った少年から、宝を取り戻す為に幾度となく戦いを挑んだ。『護りながら戦う』。それは、集落を出て、初めて知った『騎士』という存在の影響だ。
集落を襲った他民族は嫌いだ。でも、その他民族の中にも感銘を受ける者はいた。
日々、一生懸命働く庶民達。
その庶民たちの住まう街。
その街を守る騎士達。
守る為に戦う。その徹底した姿勢。
確かに守る為に戦う事はある。しかし、危機に直面した者、周囲で過ごす者、全てを守りながら戦う『騎士』の姿。単純にかっこ良かった。
それから、私の中の守るべき教は、三つとなったのだ。
『常に強者たれ』
『弱き者を助けよ』
『護りながら戦う』
少年に向かい、必死に走っている少女の背中を軽く叩き、追い抜いていく。
「Aaaaaaaa!」
少女もまた、私の守るべき者だ。
私は、魔族となった男に向かっていく。
◇◇◇
体が動かない。
落下した衝撃。
ジャクダウは倒れ込んだまま、自分の前に立つ男を見た。
向こうにある光のせいで逆光となってハッキリとは分からない。分からないが、その巨体、頭部に見える二本の角、太い尻尾、その全てが危険な生物であると心に警鐘を鳴らす。
「シネ シネ シネ 【Thun──」
狂気。魔法。サンダー。
奴だ。幾度となく魔法を放ってきた男。
その男が、自分に向けて再び魔法を放って──
何者かが詠唱を阻止し、男に一撃を入れる。
誰だ?
目が慣れてくる。
何度も相手をしてきた特異な武器。
マドゥ!
何故?
何故ここにマドゥがいる?
何故、という気持ちと共に、マドゥなら何とかしてくれるかもしれない、という希望が心に灯る。
視線を移す。
光を出しているのは、ジャム。
そして、光の陰から走ってくるのは、カリハ。
二人共生きてたんだ。
ジャムの左手には光の魔法陣、右手には何度も見た──火の魔法陣。
いける!
マドゥとジャムの連携攻撃。
ジャムは魔法陣を発射しないのは何故?
至近距離から最大熱量を当てるつもりなのか?
いけっ!
ど、ジャクダウが思った時だった。
男の胸元に突き刺さったマドゥの武器が、筋肉によって絡め取られ、動きを止めた瞬間を狙われた。強烈な尻尾の一撃がマドゥを打つ。
吹き飛ばされるマドゥ。
そのまま男は、振り向きもせず左手を後方に振る。
力なく振られたかに見えた男の左手は、手刀となり、ジャムの右手首を落とし、振り返しでジャムをも吹き飛ばした。
「ウグアッ!」
男の左腕から煙が上がっていた。
ジャムが魔法陣を当てるのに成功したのだ。
しかし、全身に燃え広がる筈の炎は、男の左腕で燻り、消えた。
失敗!
敵わない。
死ぬ。
殺される。
一度、助かると安堵したジャクダウの心には、今までにない恐怖が満たされていた。胸の奥から四肢の先に冷たいものが流れていく。震えた。
誰か助けて!
何か手は!
たしか、カリハも走っていた筈。
自分の大斧は?
落下した時に何処かにいってしまった。
「カリハー!俺の斧や、探すんや」
胸の奥を震わせて叫んだ。
俺の大斧とカリハの身体強化なら時間を稼げるかもしれない。
マドゥの部族の宝珠を使うのは、ここだ。
ここでゴーレムを創れば、凌げるかもしれない。
ハイドロミスリル(勝手に命名)の正体は、白銀のスライムだったけど、周りはミスリル銀。ミスリルゴーレムが創れる筈。ミスリルゴーレムにしても伝説的な存在。あの男を倒せるかもしれない。いや、敵わなかったとしても、自分を担いで逃げるくらいはできるかもしれない。
何とか動くくらいになった右手で、胸の内側、首から下げた宝珠を取り出す。
親指の先程の宝珠。
宝珠を握りしめ、祈る。
「ゴーレムよ、我が前に顕現せよ」
………………………………何も起こらない。
「ゴーレムでろや」
………………………………何も起こらない。
「ゴーレム出てくれや」
………………………………何も起こらない。
ジャクダウの前に立つ男の足元には、小さな魔法陣が放つ、微かな光が灯っていた。切り落とされたジャムの手首が、魔法陣を維持しているのだ。
だがそれも、次第に光量が落ち、消え去ろうとしている。
何故、ゴーレムが創れないのか、分からなかった。
手に持つ宝珠は冷たい。なのに汗が滲んでくる。
クソッ!
クソッ!
クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!
………………………………………………。
「なんでやねん……」
言葉が漏れた時だった。
「やぁ!」
カリハが、男に向かい、上段から大斧を振り下ろした。
── ドシュッ!
地を割るような衝撃。
瞬間、全身から力が抜けていく。
大斧は、ジャクダウの身体を二分していた。
【昊ノ燈です】
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