闇より産まれしモノ
崩落を避け、更に下層。
「なぁ、魔獣が出てけえへんのやけど?」
カリハが不思議そうに言った。
「キュラが魔獣のいない道を選んでいるから、当然です」
「凄いな、獣人の力なん?」
「兎型は危険察知の力が強いからね。その中でもキュラは特にその力が強いんだよ」
「ホンマ凄いな!」
「でも、もう難しいみたい。どの道行っても危ない…………」
◇◇◇◇◇◇
生贄とされた魔族。
その身を失い魔力だけとなった存在。
意思など持たない筈の魔力が、哀しみを湛える。
意思など持たない筈の魔力が、怒りに震える。
存在を持たぬ筈の魔力が、存在を持つ。
暗い暗い世界。
狭い狭い空間。
音が遠い。
ダンジョンと洞窟を分けるモノ。
── ヒト?
── アア クルシイ……
── ワレ ハ ワレラ
蠢くモノがあった。
人でも魔獣でもない、渦の様なモノ。
モノと例えて良いのだろうか?
個別の意思を持つ全体。
固体であり、液体であり、何でもないモノ。
モノは影のような触手を伸ばし、組成を変えていく。
生あるものを魔獣に。
土を泥土に。
泥土を砂に。
石を鉱石に。
鉱石を魔鉱に。
── イ イツマデ
── ワレ ハ イツマデ
── 呪
── ワレラ ハ イツマデ
そのモノは、待っていた。
自らを開放する時を。
自らの力により、自分達を縛り付ける時の中で。
── クズレル
── アア ダンジョン ガ
── ロウゴク ガ
── キエル
── ワレ モ キエ レルノカ
── ナゼ
光のない世界は、時間さえ狂わせる。
悠久の時。
── マダ カ
── マダ ダ
── アア イツマデ
── イツマデ モ
モノは、渦。
繰り返される自問。
音のない世界。
形の無いモノに届く音はない。
ただ、この時、渦を乱す揺れがあった。
眠るように沈んでいた欠片の想いが、泡立つように浮かんでいく。
── マダ
── マダ マダ
── ワレラ ハ ワレ
── イツマデ
揺らぎに震わされた一滴の流れる白銀の結晶が、天井から渦の中に落ちる。
ドプンッ
── イタイ
── イタイ
── イタイ
── コロス
── ワガヤ ヲ コワス モノ ヲ
── ワレノ ネムリ ヲ
── ワレラノ ネムリ ヲ
── サマタゲルモノ ヲ
── サマタゲルモノ ヲ
結晶は渦の中に溶けていく。
暗い暗いモノの欠片は、微かに色を持つ。
微かな色を持つ、モノの欠片は、人型となり、渦の中で蟠る。
── ワレラ ノ
── ワレ ノ
── ウラミ
── イル
── 呪 チカラ ヲ
── タスケテ
人形は、渦より居出て、彷徨い始める。
闇より産まれた影。
微かに白銀を帯びた黒。
【昊ノ燈です】
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