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キュラとマドゥと僕の下層散歩

 ユンシャウダンジョン下層の一層目。


 上に戻る道は塞がれた。

 仕方なく下層を歩く。

 幸いながら下層も【癒やしの湖】の所と同様に鉱石が蒼い光で周囲を照らしてくれていた。


「この光る鉱石、ジャクダウが見たら喜ぶかな?」

 そんな事を考えている。

「カリハ……無事かな?」


「カリハって誰?」

 キュラが覗き込んできた。

 キュラって、話しかけてくる時、絶対に下から見つめてくるんだよな。

「誰?誰?女?」


「女って、お前、女の人だけど……。ジャクダウと一緒にいる人だよ」

「なんだぁ、人の女か」


 人の女って、おい!

 そんな関係じゃないから。

 そんな関係じゃないよね、ジャクダウとカリハって……。

 って、僕がそんな事を考えている間にも、キュラは兎耳を忙しなく動かし、進んでは駄目な道を教えてくれている。


「で、可愛い?」

「あっ、…………ウン」

「綺麗?」

「……………………ウン」

「LN……Y……EEIh……luH……C」

「えっ、吊り目がちで気の強そうな娘。か〜〜。それで人の女か。兄ちゃんツラいね」


 おい、おっちゃんか、お前は!マドゥも頬肉もっていかれて話しにくいなら話すなよ。

 ん、キュラって兎系の獣人だよな。兎って成長早いっていうし、もしかして…………。



 急にキュラが足を止めて、マドゥと僕に申し訳無さそうな瞳を見せた。

「ゴメンナサイ。気が付かなかった……。知らないうちに二階層分くらい下ってるかもしれない……」


 そして、目の前には更に下へと降りる階段。

 僕にはキュラを責めるつもりはない。それは、マドゥも同じだろう。

 魔獣が徘徊するというダンジョン内で、一体の魔獣とも出会っていない。機敏に耳を動かし、魔獣の気配のない道を選んでくれる小さな道案内人に感謝しかないのだ。


「ここって、山の中がダンジョンになってるんだろう?」

「ウン、そう作られたらしいから」

「だったら、いつか別の出入口があるかもしれない。最悪、水の流れに乗って出られるかもしれないよ」


 僕は気楽に答えた。

 こんな満身創痍な状態で、ダンジョンに閉じ込められているという、傍から見れば最悪の状況だ。

 でも、キュラの笑顔と、マドゥの包容力の中、僕はちょっと楽しいなって思ったんだ。

 多分、こんな僕の見たら、カリハなら「変態マゾ」とか言うんだろうけどな。



 ◇◇◇


「なぁ、さっきダンジョンが作られたって言ったよね」

 僕は、先に行くキュラに声をかけた。


「ウン、そうだよ」

 さも当たり前の事のように答えてくれた。


 この山には、昔、魔族の集落があったらしい。

 集落と言っても、土着の魔族という訳ではなく、迫害を受けた魔族達が集まって集落を形成したらしい。その魔族達が国人に対して叛意を持っているという事で討伐されたというのが、一般に伝えられている歴史。

 でも実際は、魔力値の高い魔族を炭鉱に埋めて、ダンジョン化させて、質の良いダンジョン鉱石の採掘場にしてたんだけど、欲を描いたリュンシハ国の御偉いさんが山全体をダンジョン化しようとして失敗。閉山となったんだって。

 なんとなく帝国と同じような気がする…………けど、山全体をダンジョン化しようとするなんて、規模が違う。流石、領地面積だけは、帝国を凌ぐリュンシハ国。

 だけど、魔獣も良い資源になるし、ダンジョン鉱石が採れるなら、わざわざ閉山にしなくてもいいのに……なんて、考えてみるけど、分かんない。

 帝国に比べて、比較的緩いリュンシハ国も色々だし、お国の決定には逆らえないからね。


「で、キュラ達の兎人おじいちゃん達は、ダンジョンの道案内人をしてたんだって」

 キュラは、つまんなそうに言葉を締めた。


 僕は、キュラの角を見る。

 キュラは自分の親や祖父母達を兎人と言う。まるで自分達と違う人種であるかのように強調して言う。

 兎人の子は兎人。

 でも、兎人に角は無い。

 なんとなく、モヤッとした感じがした。

 そんな僕の気持ちを察したのか、キュラは「キュラはキュラだよ」って、笑って言った。



 ◇◇◇


「なぁキュラ、話が随分戻るんだけど、聞いても良い?」

「何?」

「キュラって、兎系の獣人だよね?」

「あ…………ウン」

「小動物系の獣人は成長が早いって聞いたことがあるんだけど…………」

「で、何?」

「もしかして、キュラって…………経験済み?」


 殴られた。

 何故かマドゥからも殴られた。

【昊ノ燈です】


 少しでも面白いと思われた方。

 僅かでも興味を持たれた方。

 一寸でも先が気になる方。


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