キュラの村と役立たずな僕
ジャクダウたちを追って一昼夜、キュラが血の臭いを感じた。
木々の間にあったのは、心臓を一突きされたと思われる男の死体。鼠と数多の蟲に覆われた死体は、死んでから半日と経っていないとらしい。この辺りでは、蟲が多く、丸一日もあれば死体は白骨となるとキュラが言っていた。まだ顔が判断できるので、半日程度。そして、少し行った所に後二体。
一体目の死体を僕は知っている。名はハシャト、義兄チクナルデルの友人の一人。
「KUOIihs」
「うん、キュラの村を襲った人達だよ」
「UOYfeq」
「多分、三人共」
「なぁ、キュラの村に行ってみないか?」
僕は提案した。
首を落とされた死体を見て、ジャクダウの大斧が浮かんだ。その上、昨夜、森の火が無かった。
ジャクダウが襲われて、反撃したのではないか?
既に、ジャクダウにより征伐されているのではないか?
そんな、疑問がわいた。
そして、死体を見つめるキュラの瞳。
暗い愉悦を湛えた瞳が、村を確認したほうがいいように心を促したのだ。
「もし、チャンスがあれば、キュラの妹達を助けられるかもしれないし」
「!?マドゥ様、良い?」
キュラの輝く瞳に村行きが決まった。
◇◇◇
村に近づくにつれ、吐き気を催すような脂を焼いたような臭いがしてくる。
そして、惨状跡を見ることになる。
「あっ、これは…………」
火が灯らなかった理由が分かった。
燃やす物が無くなったからだ……。
家だった物、倉庫だった物、櫓だった物、人の山、全てが焼き尽くされていた。
「あ……あ…………」
キュラの言葉にならない悲鳴が聞こえる。
マドゥが、そっとキュラの頭に手を添える。
「なんだよお前ら遅いよ。皆、先に行っちまったよ──って、誰だお前ら!」
不意に聞こえた声が、臨戦を伝えた。
マドゥが武器であるマドゥを両手に駆けた。
男の魔法の詠唱が終わる前に、魔法を出そうとして伸ばした右手を裂く。
そして、そのまま武器の中央、盾の部分で胸を打撃。
男は弾き飛ばされ、その意識も飛ばした。
一瞬、刹那と言うべきだろうか、寸の間もない決着。
男の装束も、ネシュレトと同じように見えた。
ここに来て思い出す。帝都魔法師団候補生の制服。
バタバタと、男に続いて出てきた四人の男が、魔法の構えをとる。
再びマドゥが走り始めるが、距離がある。間に合わない。
四本の雷撃が奔る。
三本はマドゥに、もう一本は僕とキュラに向けて。
僕も魔法陣を出すべく両の手を前に伸ばす。が、出ない。魔法陣が描けない。
マドゥは、雷撃を武器の角部で弾き、躱し、凌ぐ。
足手まといは、僕。
魔法陣を出そうとせず、躱す事だけに専念していたら躱せたかもしれない。
時間がゆっくりと動く気がした。
一本の雷撃が迫ってくる。チリチリという迸りまで鮮明に見える。ゆっくり、ゆっくりと。でも、それ以上に僕の身体は、ゆっくりで、ゆっくりで躱す事もできずに、雷撃を待っている。
── バシュ!
目の前でスパークが起き、雷撃が消えた。
僕にも、キュラにも届いていない。
目の前には、焼け焦げたマドゥの武器。
マドゥは、右手の武器を投げ、雷撃と相殺させてくれていた。
四人は、再び魔法を撃たんと構える。
再び、四本の雷撃。今度は、全てがマドゥに向けて。
二本の雷撃を避ける。
しかし、一本は武器のない右手を、一本は顔に受けた。
それでも、マドゥは残る左の武器で、二人の胸元を裂き、奔る。
倒れ込むように身を屈ませると、残る二人の脚を狩り、片膝をつく。
「マドゥー!後ろ!!」
胸元を裂かれた一人が手を前に突きだす。
「【Thunder】」
僕は走った。
今迄で一番くらいの速さで走った。
そして、ダガーナイフで男の手首を薙ぐ。
カツンとした、刃が骨にあたる感触のまま、勢いのまま振り抜いた。
刃が踊り、骨に沿ってダガーナイフが進む。
ヌッとした軟骨を裂く感覚から刃が解かれたとき、男の手から手首が無くなっていた。
そのまま片膝をつくマドゥの手を取って走った。
男達に背を向けて、走る。
既にキュラも走り始めている。
僕たちは、逃げた。
仲間の手から吹き出る鮮血を浴びて、戸惑う男達。
他にも仲間がいるかもしれない。
何より、これ以上の戦闘は無理だ。
魔法の使えない僕。
右腕から焼け爛れたマドゥ。
魔法を受けたマドゥの顔は、左側が無くなっていた。
正しくいえば、左頬は雷撃の衝撃で弾け飛び、奥歯まで剥き出しになり、真っ黒くなった左眼から微かな白煙が上がっている。
ただ只管に逃げた僕たちは、ダンジョンに辿り着いた。
魔化したとされる、ユンシャウのダンジョンに。
モチベーションが…………。
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