その名も『JKS』
ジャクダウは、ユンシャウ近くの町までの護衛クエストを受注していた。
「いや〜。『橙の麗人』の皆さんに受けていただけるなんて」
ホクホク顔で語るのは、依頼人の禿げた商人。
「分かっていたら、六人も雇いませんでしたのに」
「(だったらこんな安いクエスト受けねぇよ)ホホホ」
「ちょうど日程が合いましたから(じゃねぇよ死ねハゲ)」
「ジャムきゅん…………」
なんか、心の声が聞こえてくるような気がする。ルーさんなんて、まんま僕の名前を呼んでいるし……。
まぁ、確かに気持ちは分かる。
僕たちなんて、「護衛の仕事に、ガキが一人にお嬢ちゃん二人か、役立たねぇ」なんて言われたんだから。役に立つかどうかは、やってみないと分からないし。男二人に女一人なのは、ちゃんと冒険者ギルドから案内が行っているでしょう。
女の子に間違われることはよくあるけど、こんなにあからさまに嫌悪感丸出しで言われるなんてなかったから、傷付いたよ。
それにしても『橙の麗人』の皆さんは優しい。
僕が困ってたらいつも助けてくれる。
この間も、迷子になってたら助けてくれたし。その前は、怖い人に絡まれてたら助けてくれたし。図書館では、高い所にある本を取ってくれたし。
僕を弟みたいに思ってくれてるのが、丸わかりだ。
多分、今回も僕の為に一緒のクエストを受けてくれたんだ──なんて、思ったら、図々しいかな?
「ウチは知っている……。クエストのもう一枠をめぐって、熾烈で悍ましい闘いがあったことを…………JKS……怖い」
カリハが遠い目をしながら、低い声で呟いていた。
暫くして、気を取り直したカリハがジャクダウに聞いている。
「ところでや、ジャクダウ様。ウチら、三人でパーティーになったやんか。パーティーネームは、何にしたんです?」
「俺も悩んだんやけど、格好良い名前にしたで」
格好良い名前に反応した僕も話に入っていく。
「何?『紅蓮』とか『ドラゴンナイツ』とか『円卓の騎士』、『アルティマ』」
「『ジャクダウ三銃士』とかちゃう?」
「もっと今風やで」
「「何々?」」
「ええか」
ジャクダウは勿体振った感じで、パーティーネームを披露する。
「ジャクダウとジャムの『J』、カリハの『K』、そして探索者という意味のSeekerの『S』──」
「もしや…………」
途端にカリハの顔が青くなっていく。
「三つ合わせて『JKS』!」
「嫌や〜〜〜〜〜!」
カリハの悲鳴が響き渡る。
「なんや、格好悪かったか?」
戸惑うジャクダウ。
カリハの悲鳴を聞きつけた『橙の麗人』の三人が、駆け寄ってくる。
「何があった?」
「いや……、俺が、俺とジャムとカリハの三人のパーティーネームを言ったら、カリハが泣き出してん」
「ふ〜ん。で、なんて名前にしたの?」
「『JKS』。俺とジャムとカリハの名前にシーカーのスペルを足したんや!」
ここぞというドヤ顔に、『橙の麗人』の面々は、表情の無い顔で、空を見上げた。
── JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い JKS怖い
カリハの言葉が、呪文のように繰り返されていた。
◇◇◇
「そういえば、カリハ」
「なんや」
「この間、港の飯屋に行った時、女の人に連れて行かれてたよね。何だったの?」
「ブルブルブル…………。地獄…………狂気」
「はっ?」
「お前は知らんでもええ。いや、知ってくれるな」
「んっ?」
「この世界にわな、闇があるんや」
「闇?」
「そうや、深い闇や。近付いたらアカン……アカンのや…………」
【昊ノ燈です】
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