カリハの過去
「カリハ、ジャムいいか、ユンシャウに行くで」
ジャクダウが、不気味なほどの笑顔で駆け寄ってきた。
「ジャクダウ様、ユンシャウって、魔化ダンジョンのユンシャウですか?あそこは特別管理ダンジョンですやん」
戸惑うように言うカリハ。
僕も話だけは知っている。『魔化ダンジョンユンシャウ』リュンシハ国の北西部山岳地帯にあるダンジョン。古戦場跡に現れたダンジョンで、今は閉鎖されているらしい。
「ちゃうって、カリハ。ダンジョンに行くんやない。廃坑や。あそこに廃坑があるんや。病がでたいうて、立入禁止になってんねん」
ジャクダウが、キラキラとした瞳で語る。
「そこで、ミスリルが出たという記述があったんや。それも、『白銀に輝くそのミスリル鉱石は、奥が透ける程に透明で、内側に流れるような液体を想わせた』って、書いてあったんやで。未知の鉱石かもしれん」
ジャクダウは、鉱石の事を話す時だけ、年相応の笑顔をみせる。彼の鉱石に対する熱意は、異常だ。
パーティーを組む事になった時、冒険者ギルドの貸倉庫を見せてもらった。そこには、採取地、採取日、そして特徴が記載された箱が幾つも積まれていた。
ジャクダウに、何故これ程まで集めるのかを聞いてみると、『最強のゴーレムを創る』と言っていた。
ゴーレムを創るには、高位の魔法使いが必要だ。僕が昔読んだ書物の中に、ゴーレムの記載があったが、どちらかというと、素材より魔法使いの力量の方が重要であると書いてあった筈。
でも、少年のように輝く笑顔で、ゴーレムに使う鉱石について語る彼を見ると、何も言えなかった。
「ジャクダウ様、それはいつ頃の話なんですか?」
「鉱石の記載は十六年前、俺等が生まれる前だな。それからすぐに病が流行し、廃坑になったった。そして、近くにあったダンジョンも、魔化して閉鎖。なんと、その鉱石も記述だけで、実際には採取されていないんだ。狙い目やと思わんか?」
カリハは、何も言わない。
「未知の鉱石だ。ときめくよな、カリハ。行くだろ」
「ウチは、ジャクダウ様に従うだけやから……」
「なっ、ジャムも良いだろ!」
煮えきらないカリハの言葉に戸惑いながらも、了承の意を伝えた。
◇◇◇
「なぁ、カリハ。ジャクダウはどこに行ったんだ?」
ジャクダウが去った後、僕はカリハに聞いてみた。
「あ……、うん、ギルド。冒険者ギルドにユンシャウ迄の道すがらにできるクエストを探しに行ったんやと思う」
「で、何があった?」
「……ジャム。廃坑な……病が発生したいうてたやんか」
「うん」
「病って、病気やんか。病気って怖いねんで」
「うん」
「ウチのな、オトンとオカンも病気で死んでん……」
「そう」
「病気の元……もう、無くなっとる思う?」
「分からない」
「病気て…………怖いねんで」
「うん」
「もしもや、もしもやで、ジャクダウ様が病気になってしもたら。ウチ、怖いんや」
『僕がついてる』そんな言葉が口から出かかったから、止めた。カリハにとって、ジャクダウは特別だ。
それは、誰にも代えられない。
「ウチな──」
カリハは語り始めた。
昔、炭鉱のある領にいた事。
両親が病気で死んだ事。
領主に拾われた事。
領主の息子の侍女になった事。
領主の息子がジャクダウである事。
その領が帝国の侵略により滅びた事。
ジャクダウと二人で、生きてきた事。
僕は、ただ黙って聞いていた。
マドゥと呼ばれる男の事も知りたかったが、ただ黙って聞いていた。
やがて、語り終わったカリハは、いつもの笑顔で笑った──ら、不意に現れた女性達に攫われていった。
──JKS JKS
──── 危険度Cカリハ排除
そんな言葉が聞こえた気がした……。
【昊ノ燈です】
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