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クルイデル・エンファの憂鬱2

 クルイデル・エンファは、今日も悩んでいた。


 帝国軍第三魔法師団副団長補佐代理という、多数の部下を抱えるにしても微妙な立場である彼。

 先日のジャリムスの一件で、大きく立場を揺るがしていた。

 ジャリムスを餌に、ダンジョンを一層深くすると豪語していた自分が悪いのだが、それはそれ。

 華麗なるスルースキルで厚顔を装い、時間と共に忘れ去られるのを待っていた。なのに、馬鹿な次男が……今更、騒ぎ出したのだ。


「親父殿、あのジャリムスは、生きております。私めが連れ帰って参ります」


 誰の入れ知恵か、チクナルデルは、奴が生きている、自分が連れ帰ってくると言い出したのだ。

 そもそも、片目の視力を失い、自分に汚点を付けた次男であるチクナルデルを処分する気でいたから、そのままジャリムスを探しに家を出てくれれば、楽に厄介払いできると考え、捜索を許可した。

 なのに…………。

 あの馬鹿、他の貴族の次男、三男を募り、捜索隊を組織してしまったのだ。二十人ちょいからなる捜索隊。その人数って、ほぼ一個小隊ではないか。


 勝手に探しに行かせて、連れ帰ればラッキー。野垂れ死んだら、厄介払い成功。ってな事にならないレベル。

 その上、何故か宰相にまで話がいって、国外への通行証まで手配された。気付けば、多額の調査費用と、捜索にかかるが費用の請求書の山。

 ああ、宰相家の三男まで参加するなんて…………。


 胃が痛い。


 大体が、何故国外?

 身分証もないジャリムスが国外に出られる訳がないだろうに。帝都内をチマチマ探しておけば良いものを…………。せめて、帝国内。


 民族浄化を掲げる帝国の貴族に類する者が、国外に出るなんてヤバイ以外にない。

 それも、あてのない捜索。


 ジャリムスは、死んだ。それで良かったのだ。



 窓から下を見ると、豪奢な鎧を身に纏ったバカ者達が見える。

 出発の準備でもしているのか……。


「親父殿。待っていてください。あの馬鹿野郎をこの手に連れ帰ってみせます」


 窓下から、自分に気が付いたチクナルデルが大声で手を振る。

 周りの者達も、希望に満ち溢れた顔で見上げてくる。


 手を振り返し、聞こえない程度の声で呟く。


「馬鹿野郎は、お前たちだ」



 ああ、今日も憂鬱だ。

【昊ノ燈です】


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