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僕は殺される

 僕は、今日死ぬ。

 殺される。

 死因は、おそらく病死という事になるのだろう。


 僕の名前は、ジャリムス・エンファ。

 人族、十五才。色白で黒髪、橄欖石のような金色がかった鮮やかな黄緑色の瞳が印象的な小柄な男の子。

 母親似で、女の子に間違われる事が多いのが、昔からの悩み。

 帝国軍第三魔法師団副団長補佐代理であるエンファ家の身内。と、言っても、現家長である、クルイデル・エンファがトラルト人奴隷である母に産ませた子だ。

 民族主義意識の高い帝国に於いて、普通なら僕も奴隷となり、一生馬車馬の如く使い潰される筈だったのだけど、七才の時に覚醒めた魔法使いとしての才能と、半分だけど帝国貴族の血が入っていることから、特例的に一族の一員として認められた。

 で、僕が小柄なのは、奴隷として育った七才までの間に十分な栄養を得られなかった事。母さんも栄養失調で死んじゃったしね。


 当時の僕は、一般成人の数十倍、魔法師団の人達から見ても数倍の魔力値を子供ながらに持ち、得意な火属性魔法を中心に全属性魔法適正者。正に神童と呼ばれる存在だったんだ。

 純血の人達からは、目一杯嫌がらせを受けたりしたけど、それは仕方が無いかな?

 だって、異民族の血が入った神童なんだから。



 そんな神童たる僕が死ぬ事になった原因は、一年前、十四才の時。

 原因不明の高熱で、意識不明のまま七日程寝付いてしまったんだ。

 幸い、体に障害等はなかったけど、僕は知ってしまった。自分が転生者だったという事。。

 『松田修二』という名の日本人。三十二の時に交通事故で死んでしまった独身男性。真面目にお付き合いしていた女性はいたらしいけど……。


 正直、転生、生まれ変わりって感覚は薄く、何の使命感もなく、知らない世界の中年男性の知識や経験を無理矢理脳味噌に刻みつけられた感じ。

 それだけならまだしも、この転生によって僕の魔力値は、更に数倍に跳ね上がった。おそらく、齢十三にして帝国首席魔法師である第一魔法師団長を超えちゃった。

 ここまでは良いのだけれど……。


 魔法が使えなくなった!

 魔力は増えた。魔法陣もいつも通り創れる。でも、魔法陣から魔法が出ていかない。

 手の平の少し先の空中に浮かんだ魔法陣。感覚から、魔法陣まで魔力が行っているのは分かる。ただ、魔法陣で各精霊の力を借りて、魔法を具現化出来ない。

 得意でない水や風、土、雷の魔法はともかく、得意な火属性の魔法でも、力を込めまくって、力んで力んでやっと魔法陣が仄かに熱くなっていくくらい。


 電気ヒーターか!


 松田時代の記憶にある、家電器具。

 『省電力で温か』なんて、キャッチコピーいらない。

 省エネどころか、以前の魔法発動の時から比べても、数倍の魔力を込めてるからね。


 でも、このまま熱い魔法陣を出したままパンチをして、『ヒートナックル』とか、これで剣を熱くして、『ヒートソード』なんて…………無理か…………。

 万一できたとしても、虚弱体質気味の僕の力じゃ…………。

 おい『松田修二』、せめて空手か剣道くらいしておけよ。サッカー少年だったなんて、使えねぇー。この世界にサッカーなんてね~よ。


 大体が、松田修二は日本って国で生きてたらしいけど、精霊に感謝、火、水、風、雷、大地全てに精霊がいるなんて、考えた事なかったみたいだから、その知識や経験を引き継いだ僕に、精霊が今迄みたいに力を貸してくれる訳ないよな…………。


 後の知識はスマホ?

 どーすんだよ、スマホなんて有るわけね~し。



 とまあ、そういう訳で、魔法の使えなくなった僕の価値は無くなり、十六の成人を迎える前に消してしまおうと、家長のクルイデルが考えるのは当然。


 で、今、ヒナギ山に登らされているところなんです。


【昊ノ燈です】


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