Gランクとデコピン
拍手喝采の中にいた。
ザフスが近寄ってきて、
「でも、少年。ジャムったっけか。これでお前さんも冒険者の仲間入りだ。でもな、切り札は隠してるとおもうが、お前さんは中距離と罠を基本としているんだろう。ソロはやめておけ。早めにパーティーを組むことを勧める」
そう言った。
僕が頷くと、
「に、してもだ。降参したのは久しぶりだ。俺も精進が足りねぇな」
と言って、去って行った。
僅かに右足がヒョコヒョコしてたので、雷気による麻痺が残っているのだろう。
◇◇◇
「で、これが冒険者と示すプレートになります。首に掛けるなど、失くさないようにしてくださいね」
アンナが渡してくれたプレートは、ドッグタグみたいな形で登録番号と名前、性別、そして冒険者ランクが打ち込まれていた。
今のランクは『G』。
「あの〜、確か『ノービス』からスタートでは?」
僕の問に、アンナは、初めに持って来てくれた魔石が常時討伐クエストにあたるので、初回クエスト終了とみなされ、『G』スタートとなったと教えてくれた。
そして、気になるのが、僕の後ろに一列に並んだ冒険者の皆さん。
「あ、あの〜。皆さんは何を…………」
列の先頭に並んだバーントが、布の袋を渡してくれて、その中に銀貨を一枚入れる。そして、
「Gランクになって、冒険者の仲間入りした者への儀式だよ」
そう言って、デコピン一発。
次のヘンリスも、銀貨を僕の手に持った袋に入れて、
「皆からの祝いじゃ。感謝を忘れるなよ」
そう言って、デコピン。
次は、ジャクダウ。
「銅貨で悪い」
そう言って、デコピン。
カリハ。
「何言うてんねん。基本は銅貨や。それよりな、ウチの次からは、知らん人やろ。ちゃんと『ありがとう』って言わなあかんで」
そう言って、デコピン。
「あ、ありがとう」
「ザフス戦見たぞ。カッコ良かったな」
チャリン──ビシッ!「ありがとうございます」
「私のパーティーに入らない?」
チャリン──ビシッ!「ありがとうございます」
「あの魔法教えてくれよ」
チャリン──ビシッ!「ありがとうございます」
「頑張れよ」
チャリン──ビシッ!「ありがとうございます」
あ、頭がクラクラしてきた。
後、何人?
あっ、「ありがとうございます」
いっ、「ありがとうございます」
うっ、「ありがとうございます」
えっ、「ありがとうございます」
おっ、「ありがとうございます」
オデコが熱い。
なんかよくわからないけど、重い。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
布袋が重くて、手から落ちそうになった時、ついに最後の一人となった。
その人は、金貨を一枚、袋に入れると、とびっきりの笑顔を見せた。
「色男になったじゃないか」
ラチェアだ。
「金貨に見合う一撃をおみまいするかね」
ギリギリと音がするまで引き絞った指先が呻る。
ドビシュッ!
最後の一撃は、僕の意識を刈り取った。
◇◇◇◇◇
翌日、目覚めたのは昼過ぎ、見慣れない一室だった。
ギルドの仮眠施設。
激しく痛むオデコを擦ると、触りなれない膨らみがあった。ブニブニとしている。腫れている。
そして、ベッドサイドテーブルの上には、硬貨の詰まった布袋。
普通、Gランクになったばかりの冒険者は、金がない。何とか装備を買うとしても、武器を優先して、防具は二の次。無理なクエストを受けて、死んじゃう人が多かったらしい。
そこで、新しくGランクになった冒険者に、先輩冒険者がお金を出し合って防具を買わせるという流れができた。でも、先輩冒険者と言っても、命をはって稼いだ金をタダでやるのは嫌。だから、デコピン一発。
様子を見に来たアンナの言葉では、オデコの腫れがひくまで二〜三日、この部屋を借りても良いらしい。
水鏡で見たら、これ誰?ってなドス黒く腫れ上がったデコ人間がいた。
三食と間食をちょこちょこ持って来てくれるアンナには、申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけど…………廊下を走る奇妙なステップ音と、僕を見ると、とりあえず涎を垂らすのだけはやめてほしい。
◇◇◇◇◇
腫れが落ち着いた僕は、カリハのオススメの防具屋で、ちょっとコマシな旅装束を買った。
革の胸当てとか考えたけど、服だけにした。
いや〜、だって、防具って重いんだもん。
でも、ブーツは、ちょっと良い物にしたよ。
でも、カリハの値切りスキルは、凄まじかった…………。
【昊ノ燈です】
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