魔法陣アタック始動
僕のステータスを見ながら騒いでいる人たちを横目に、書類を書き上げた。
次は、戦闘能力の確認がある。
アンナさん曰く、戦闘能力が無いと判断されれば、当然、ランクアップもできないし、都市内の雑用くらいの仕事しか受けさせて貰えないらしい。
冒険者ギルド裏の訓練施設。
僕の前に現れたのは、スキンヘッドの男であった。
「あくまでも戦闘能力を測るものだ、無理に俺に勝つ必要はないから安心してくれ。って、お嬢ちゃん、冒険者登録は十二才以上だぞ」
「ザフスさん、その流れはもう終わりました」
アンナが走り寄り、ザフスと打ち合わせをする。
気が付けば、訓練施設の周りには人が集まり、皆一様に肩を小刻みに揺らして、笑いを堪えていた。
流石にここで野次ったり、大笑いするような人はいない──って、いた。
大笑いしている五人組。
ラチェア、いい加減に付け髭取れよ。それより、何故今更お前等が髭を付けてる、ジャクダウとカリハ。
気を取り直し、ザフスに正対する。
「まあ、なんだ、すまんかったな。そろそろ始めようか、お嬢ちゃん」
そう言いながら、両手持ちの木剣を手にすると、空気がピリッとしたものに変わった。
僕は、バーントから貰ったダガーナイフを鞘から出し、右の手に逆手に握る。バーントに教わった通りだ。
敵を倒すのではなく、敵の攻撃を弾き、流し、躱す為の構え。
バーントから、身を護る事だけを考えれば、盾が良いと薦められた。でも、自分の腕力では、盾を持ち続ける事ができなかった。小型のラウンドシールドであっても、重くて使いこなせず、攻撃を流すまでにいたらなかったのだ。
魔法使いらしく杖も考えた。
ヘンリスのような鉄杖は無理としても、木製の物なら軽いのもあるはず。
しかし、そもそも魔法使いの杖は、魔法の発動補助、精度、安定性の向上が目的として持つものである。となれば、魔法が発現しない僕には無用の長物。
魔法が使えなくなる前は使っていたのだから、使いたかったんだけどね。
で、結局、何とか扱えたのが、一番初めに渡されたダガーナイフ。
手にしているのは、片刃のダガーナイフ。
怖かった…………。
叩き込まれた戦闘技術。特に攻撃をいなす捌きを鍛えられた。
振り下ろされる大斧。
射られる矢。
打ち付けられる鉄杖。
薙いでくる剣。
それらを全て小さなナイフで対応する。
怖いよ。
盾が持てない自分が恨めしかった。
でも、それによりついた短剣防御に対する自信。
まだまだだと、ラチェアは言うけど…………いいじゃん。
ザフスに意識を戻す。
好戦的な笑みで僕を見つめている。
いつでも来い。そんな言葉が聞こえてきそうだ。
右手でダガーナイフを構えたまま、腰を落とし、左手の指先で地面を触り、そのまま手の平を上に。
こちらの戦闘準備は、整った。
僕は、左手の手の平の上に創った土の魔法陣に魔力を込める。
『魔法陣アタック』
もとい、『魔法陣パーンチ』。
魔法陣が勢いよく進んでいく。
【昊ノ燈です】
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